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フルクトースの極性化する性質

The polarizing nature of fructose

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SCIENCE SIGNALING
10 Dec 2024 Vol 17, Issue 866
[DOI: 10.1126/scisignal.adv0957]

Wei Wong

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA.

Corresponding author. Email: wwong@aaas.org

H. Yan, Z. Wang, D. Teng, X. Chen, Z. Zhu, H. Chen, W. Wang, Z. Wei, Z. Wu, Q. Chai, F. Zhang, Y. Wang, K. Shu, S. Li, G. Shi, M. Zhu, H.-L. Piao, X. Shen, P. Bu, Hexokinase 2 senses fructose in tumor-associated macrophages to promote colorectal cancer growth. Cell Metab. 36, 2449-2467.e6 (2024).

食餌性フルクトースは、大腸腫瘍において腫瘍関連マクロファージをがん促進性表現型に偏らせる。

フルクトースは甘味料として普及しており、さまざまながんの進行および転移と関連付けられている。Yanらは、フルクトースが、抗腫瘍性のM1様表現型または腫瘍促進性のM2様表現型をとりうる腫瘍関連マクロファージ(TAM)に及ぼす影響を検討した。大腸がん(CRC)のモデルであるAPCmin/+マウス、または同所性CRCマウスモデルにおいて、肥満を誘発しない用量でフルクトースを投与すると、腫瘍増殖が増強された。これらの腫瘍では、M2様表現型をもつTAMの浸潤がより多かった。フルクトース曝露により、腫瘍培養上清で培養した骨髄由来マクロファージ(BMDM)が、M1様表現型をとることが妨げられたが、M2様マクロファージの数には影響がなかった。トランスポーターGLUT5はBMDMがフルクトースを取り込むことを可能にし、骨髄特異的にGLUT5を欠損したマウスでは、食餌性フルクトースによってCRC腫瘍の増殖は促進されず、これらの腫瘍ではM1様TAMの浸潤の割合が高かった。フルクトースは、酵素のヘキソキナーゼ2(HK2)に結合したが、代謝されなかった。代わりにフルクトースは、HK2と、受容体ITPR3(リガンドのイノシトールリン酸IP3による刺激を受けると小胞体からのCa2+放出を誘導する)との相互作用を増強した。次にこの相互作用により、ITPR3とミトコンドリア外膜チャネルVDAC1の結合が阻止され、続いて小胞体からミトコンドリアに移動するCa2+の量が減少した。さらに、細胞内Ca2+量が減少した。細胞内Ca2+濃度のこれらの変化により、インフラマソーム形成およびインフラマソームを介するサイトカインIL-1β産生における、転写因子NF-κBおよびSTAT1やキナーゼp38の活性化が減少した。患者のCRC進行時には、M1様マクロファージにおけるGLUT5とIL-1βのタンパク質量の間に負の相関、およびマクロファージのGLUT5高発現と生存率との間に負の相関が認められた。これらの結果から、食餌性フルクトースはCa2+の恒常性を撹乱し、それによりCRCにおいてTAMの炎症促進機能を阻害することが示唆される。

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