• ホーム
  • 高親和性免疫グロブリンE受容体の構造様式

高親和性免疫グロブリンE受容体の構造様式

Architecture of the high-affinity immunoglobulin E receptor

Research Article

SCIENCE SIGNALING
10 Dec 2024 Vol 17, Issue 866
[DOI: 10.1126/scisignal.adn1303]

Zhikuan Zhang, Moeko Yui, Umeharu Ohto*, Toshiyuki Shimizu*

Graduate School of Pharmaceutical Sciences, University of Tokyo, 7-3-1 Hongo, Bunkyo-ku, Tokyo 113-0033, Japan.

  1. * Corresponding author. Email: umeji@mol.f.u-tokyo.ac.jp (U.O.); shimizu@mol.f.u-tokyo.ac.jp (T.S.)
  2. These authors contributed equally to this work.

Editor's summary

免疫グロブリンE(IgE)は、マスト細胞および好塩基球の表面にある高親和性受容体FcεRIに結合してアレルギー反応を刺激する。アレルギー治療のための抗体療法の数は限られているが、IgE結合受容体複合体についての理解を深めることで、その数を拡大できる可能性がある(SuttonによるFocusを参照)。Zhangらは、IgE-Fcと結合したヒトおよびマウスFcεRIのクライオ電子顕微鏡(cryo-EM)構造を解析することによって、IgEと受容体FcεRIの細胞外ドメインとの相互作用における種特異的な差異を明らかにした。予想外にも、IgE-FcがマウスFcεRIに結合しても、FcεRIに構造変化は認められなかった。まとめると、これらの知見は、IgE媒介アレルギー反応の改善された阻害薬の開発に役立つ情報となる可能性がある。—John F. Foley

要約

高親和性免疫グロブリンE(IgE)受容体(FcεRI)は、アレルゲン特異的IgEに応答してI型過敏症を駆動する。FcεRIは通常、1つのαサブユニット、1つのβサブユニット、ジスルフィド結合で連結された2つのγサブユニットで構成される多量体複合体である。αサブユニットはIgEのフラグメント結晶化可能(Fc)領域(Fcε)に結合し、βサブユニットとγサブユニットは細胞内の免疫受容体チロシン依存性活性化モチーフ(ITAM)を介してシグナル伝達を調節する。本稿でわれわれは、アポ状態のFcεRIおよびFcεと結合したFcεRIのクライオ電子顕微鏡(cryo-EM)構造を報告する。膜貫通ドメイン(TMD)では、αサブユニットとγサブユニットが広範な疎水性と極性相互作用を介して会合し、疑似3回対称性を有する密集した3ヘリックスバンドル(αγ2バンドル)を形成している。αγ2バンドルはさらにβサブユニットと集合してTMDを完成させており、そこから複数のITAMが細胞質内へと伸びることで下流シグナル伝達がなされる可能性がある。アポ状態のマウスFcεRIは本質的には、Fcεと結合して感作されたFcεRIと同一の構造を形成していることから、FcεがFcεRIに結合しても受容体全体の立体構造は変化しないことが示唆される。さらに、マウスでみられるFcεRIαおよびFcεRIβの細胞外ドメイン(ECD)間の膜近傍相互作用は、ヒトのFcεRIαおよびFcεRIβのECD間ではみられないことから、受容体の安定性および活性化に種特異的な違いがある可能性が示されている。これらの知見は、Fc受容体の構築の基礎をなす一般的な構造原理、I型過敏症の根底にあるシグナル伝達機構、および有効な抗アレルギー治療法のデザインについて理解するための枠組みを与えるものである。

英文原文をご覧になりたい方はScience Signaling オリジナルサイトをご覧下さい

英語原文を見る

2024年12月10日号

Editors' Choice

フルクトースの極性化する性質

Focus

ついに明らかに:すべてのIgE媒介アレルギー性過敏反応に共通する抗体‐受容体複合体の構造

Research Article

高親和性免疫グロブリンE受容体の構造様式

脱アセチル化酵素SIRT6はニューロン内のAPPの安定性を低下させることによりマウスのアミロイド病理を軽減し認知能力を支持する

最新のResearch Article記事

2025年07月15日号

ウイルス性脳炎マウスでは、アストロサイトのRIPK3が転写レベルでセルピンを誘導することにより保護的抗炎症活性を発揮する

2025年07月15日号

骨髄系およびリンパ系細胞における腫瘍性タンパク質TEL-ABLの自己リン酸化はアロステリックABL阻害剤アシミニブに対する抵抗性を与える

2025年07月08日号

MDM2-p53軸がnorrin/frizzled4シグナル伝達と血液-CNSバリア機能を調節する

2025年07月01日号

パーキンソン病に関連するLRRK2変異マウスに対するキナーゼ阻害剤投与による線条体神経保護経路の回復

2025年07月01日号

PKCηのミスセンス変異はゴルジ体に限局したシグナル伝達を増強し、潜性遺伝性の家族性アルツハイマー病に関連する