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レドックスシグナル伝達
H2O2を必要とする場所ではH2O2を保持する

Redox Signaling
Keeping H2O2 Where You Need It

Editor's Choice

Sci. Signal., 2 March 2010
Vol. 3, Issue 111, p. ec65
[DOI: 10.1126/scisignal.3111ec65]

Wei Wong

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

ペルオキシレドキシン(Prx)は、過酸化水素(H2O2)を中和し、それによって酸化ストレスを制限する酵素である。PrxIとPrxIIは、サイトゾルに局在化し、豊富に存在する。しかし、H2O2は細胞内シグナル伝達分子としての役割も果たす。たとえば、細胞が血小板由来増殖因子(PDGF)または上皮増殖因子(EGF)などの増殖因子によって刺激されると、NADPH酸化酵素(Nox)によってH2O2が産生され、プロテインチロシンホスファターゼを酸化して不活性化するように作用する(Toledanoらの文献参照)。Prxの活性を制限してH2O2シ グナル伝達を可能にする方法としては、触媒に必要なCys残基の酸化(過酸化と呼ばれる過程)によるPrx酵素の不活性化が提唱されている。しかし、 PDGFによる刺激を受けた細胞内で、過酸化されたPrxIやPrxIIが検出されたことはない。そこでWooらは、Prxを不活性化する別の機構につい て調べた。in vitroでのアッセイでは、Tyr194(PrxIIでもリン酸化される残基)がリン酸化されたPrxIは、リン酸化されていないPrxIに比べて活性が低いことがわかった。PrxIやPrxIIのTyr194の リン酸化は、ラットの平滑筋細胞などのさまざまな種類の細胞においてPDGFまたはEGFによる刺激を受けたあとに起こったが、Nox1欠損細胞では低下 した。SrcファミリーチロシンキナーゼのRNA干渉および薬理学的阻害物質は、PDGF受容体(PDGFR)、EGF受容体(EGFR)、またはB細胞 受容体(BCR)が刺激を受けたあとのPrxIのリン酸化が、c-Srcによって部分的に仲介され、c-Srcも存在する膜結合性で界面活性剤耐性の画分 で起こることを示した。増殖因子シグナル伝達は創傷治癒を促す。皮膚の創傷修復モデルでは、PrxIのリン酸化は再生領域よりも創傷の縁部で多く認められ た。PDGFとH2O2の両方で処置された細胞では、PrxIはリン酸化され、PrxIIは過酸化された。 Prxが過酸化されるとオリゴマーが形成され、この構造変化によってシャペロン機能が付与されるが、リン酸化されたPrxIのオリゴマー形成は検出されな かった。著者らは、リン酸化によるPrxIの不活性化が増殖因子受容体または免疫受容体の近傍で起こり、それがH2O2を介する局所的なシグナル伝達を可能にすること、および過酸化されたPrxIIのオリゴマー形成は酸化ストレス下で起こる特徴的な現象であることを提唱している。

H. A. Woo, S. H. Yim, D. H. Shin, D. Kang, D.-Y. Yu, S. G. Rhee, Inactivation of peroxiredoxin I by phosphorylation allows localized H2O2 accumulation for cell signaling. Cell 140, 517-528 (2010). [PubMed]

M. B. Toledano, A.-G. Planson, A. Delaunay-Moisan, Reining in H2O2 for safe signaling. Cell 140, 454-456 (2010). [PubMed]

W. Wong, Keeping H2O2 Where You Need It. Sci. Signal. 3, ec65 (2010).

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2010年3月2日号

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