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進化
チャネルがチャネルでなくなるとき

Evolution
When a Channel Is Not a Channel

Editor's Choice

Sci. Signal., 30 March 2010
Vol. 3, Issue 115, p. ec92
[DOI: 10.1126/scisignal.3115ec92]

Nancy R. Gough

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

興奮収縮(EC)連関とは、電気的な信号が筋収縮を引き起こす過程である。脱分極が電位依存性Ca2+チャネル(Cav)を活性化し、これが細胞内カルシウムチャネル(RyR)を活性化して、筋収縮を引き起こすのに十分な量のカルシウムが放出される。哺乳類の心筋ではCav1.2チャネルがCa2+を運び、これによりCa2+濃度の増大がRyRの活性化に寄与する。一方、哺乳類の骨格筋では、Cav1.1 チャネルはほんの僅かで遅い活性化電流もたらすのみであり、RyRは直接的なチャネル間結合機構によって活性化される。Schredelsekerらは、 硬骨魚における興奮収縮連関について検討した。ホールセルパッチクランプ解析を行ったところ、ゼブラフィッシュ幼魚の筋管には電位依存性の内向きCa2+電流は存在しないが、Cav1.1チャネルに特異的なゲート電流を示すことが明らかなった(ゲート電流は、電位感受性のアミノ酸残基の動きを表し、チャネルのコンホメーション変化を示唆する)。脱分極は、RyRによるCa2+放出およびEC連関に一致して、細胞内Ca2+濃度の増大を促進した。ゼブラフィッシュのゲノムを調べることによって、著者らはCav1.1チャネルのαサブユニットをコードする2つの遺伝子を発見したが、これらのいずれもが、Ca2+伝導を遮断すると予測される突然変異を有していた。αサブユニットを欠損するマウスの筋管(細胞株由来)でzf-α1S-aまたはzf-α1S-bを発現させることによって、これらのチャネルはCa2+を伝達できないが、EC連関を担うことができることが示された。これらの突然変異をウサギCav1.1α1Sに導入すると、チャネルはCa2+を伝導できなくなった。これら2つの遺伝子のそれぞれは、ゼブラフィッシュ成体の特定の筋線維で選択的に発現していた。zf-α1S-aの転写物は、RyR1aとともに持続的な遊泳にかかわる遅筋線維内に豊富であった。一方、zf-α1S-bの転写物は、RyR1bとともに瞬発的な遊泳にかかわる速筋線維内に豊富であった。32種(17目)の硬骨魚のCav1.1チャネル配列を解析したところ、そのすべてが伝導遮断性の突然変異をもっていた。著者らは、EC連関の最初の形はCa2+伝導性Ca2+チャネルが関わるもので、次に構造的な連関があらわれ、その後にRyR活性化の機構が加わって、一部の生物種(硬骨魚)ではカルシウム伝導が完全に損なわれるにいたる突然変異を備えるようになったと提案している。

J. Schredelseker, M. Shrivastav, A. Dayal, M. Grabner, Non-Ca2+-conducting Ca2+ channels in fish skeletal muscle excitation-contraction coupling. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 107, 5658-5663 (2010).

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2010年3月30日号

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