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ORAIイオンチャネル間で異なるレドックス調節:細胞カルシウムシグナル伝達の調節機構

Differential Redox Regulation of ORAI Ion Channels: A Mechanism to Tune Cellular Calcium Signaling

Research Article

Sci. Signal., 30 March 2010
Vol. 3, Issue 115, p. ra24
[DOI: 10.1126/scisignal.2000672]

Ivan Bogeski1*, Carsten Kummerow1†, Dalia Al-Ansary1†, Eva C. Schwarz1, Richard Koehler1, Daisuke Kozai2, Nobuaki Takahashi2, Christine Peinelt1, Desiree Griesemer1‡, Monika Bozem1, Yasuo Mori2, Markus Hoth1, and Barbara A. Niemeyer1*

1 Department of Biophysics, Saarland University, 66421 Homburg, Germany.
2 Department of Synthetic Chemistry and Biological Chemistry, Kyoto University, Kyoto 615-8510, Japan.

† These authors contributed equally to this work.

‡ Present address: Department of Biology, Technische Universitat Kaiserslautern, 67663 Kaiserslautern, Germany.

* To whom correspondence should be addressed. E-mail: ivan.bogeski@uks.eu (I.B.); barbara.niemeyer@uks.eu (B.A.N.)

要約:活性酸素種(ROS)は多くの生理学的および病態生理学的な細胞過程に関与する。われわれは、炎症の際に高度酸化環境に曝露されるリンパ球を用いて、細胞機能に対するROSの影響について検討した。ORAIファミリータンパク質で構成されるCa2+放出活性化Ca2+(CRAC)チャネルを介するカルシウムイオン(Ca2+)の流入はTリンパ球の活性化、増殖および分化に必須であるが、ROSがORAIチャネル機能に影響を及ぼすか否か、またどのように及ぼすのかについては不明であった。本研究では、Ca2+イメージング、パッチクランプ計測および細胞増殖およびサイトカイン分泌の測定を組み合わせて、ORAIチャネル活性およびヒトヘルパーTリンパ球(TH細胞)の機能に対する過酸化水素(H2O2)の影響について検討した。ORAI1チャネルはH2O2による酸化によって阻害されたが、ORAI3チャネルは阻害されなかった。ORAI1チャネルとORAI3チャネルのレドックス感受性の違いは、主にORAI3には存在しない細胞外に位置する反応性システインに依存していた。TH細胞のレドックス感受性はエフェクター細胞への分化後に徐々に低下したが、この感受性低下によって、酸化環境下での増殖、分化、サイトカイン分泌が可能になったと考えられる。エフェクターTH細胞のレドックス感受性の低下は、Orai3発現の亢進およびサイトゾルに存在するいくつかの抗酸化物質の量の増大と相関していた。低分子干渉RNAによるORAI3ノックダウンの結果、エフェクターTH細胞のレドックス感受性が亢進した。ナイーブTH細胞とエフェクターTH細胞のOraiアイソフォーム発現の違いが酸化ストレス下の細胞応答を調節するのかもしれない。

I. Bogeski, C. Kummerow, D. Al-Ansary, E. C. Schwarz, R. Koehler, D. Kozai, N. Takahashi, C. Peinelt, D. Griesemer, M. Bozem, Y. Mori, M. Hoth, B. A. Niemeyer, Differential Redox Regulation of ORAI Ion Channels: A Mechanism to Tune Cellular Calcium Signaling. Sci. Signal. 3, ra24 (2010).

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英語原文を見る

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