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神経科学
不安の制御
Neuroscience
Anxiety Control
Sci. Signal., 24 May 2011
Vol. 4, Issue 174, p. ec145
[DOI: 10.1126/scisignal.4174ec145]
John F. Foley
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA
恐怖は人々に危険ついて記憶し、危険に反応するよう条件付けるが、ストレスやトラウマが全般性不安を誘発する場合がある。ストレスに応答してニューロンの再構築が起きるが、これには細胞外プロテアーゼによって促進されるニューロンと細胞外マトリックスの相互作用が関わる。Attwoodらは、Ephファミリー受容体チロシンキナーゼがニューロン可塑性を調節し、細胞外プロテアーゼによる切断を受けることに注目し、ストレス応答におけるEphの役割について検討した。マウス脳の免疫組織化学的解析によって、EphB2およびセリンプロテアーゼであるニューロプシンが、記憶および感情の処理にかかわる扁桃体に豊富に存在して共局在化することが示された。神経芽腫細胞株を用いた実験によって、EphのうちでEphB2だけがニューロプシンによって切断され、同受容体の細胞外フラグメントとなって放出されることが示された。EphB2はNMDA受容体と結合する。免疫共沈降アッセイによって、拘束ストレスがNMDA受容体のNR1サブユニットと共局在するEphB2の量を野生型マウスの扁桃体において減少させるが、ニューロプシン欠損マウスの扁桃体では減少させないことが示された。EphB2とNR1の相互作用を遮断すると、グルココルチコイド受容体シグナル伝達を促進するタンパク質Fkbp51の存在量が増大した。基底扁桃体から伸びるニューロンの細胞全体について計測したところ、NMDA電流はニューロプシン欠損マウスの方が野生型マウスに比べて低いことがわかった。さらに、ニューロプシン欠損マウスでは初期の長期増強が障害された。ストレスは、野生型マウスにおいて、迷路学習テストにおける反応によって測定される不安状態を亢進させたが、ニューロプシン欠損マウスはニューロプシンを注射するまで不安を示さなかった。これらのデータをまとめると、ストレスがニューロプシンによるEphB2切断を誘発し、結果的にNMDA受容体電流が増大し、Fkbp51が産生され、不安が発生する機構が示唆される。
B. K. Attwood, J.-M. Bourgognon, S. Patel, M. Mucha, E. Schiavon, A. E. Skrzypiec, K. W. Young, S. Shiosaka, M. Korostynski, M. Piechota, R. Przewlocki, R. Pawlak, Neuropsin cleaves EphB2 in the amygdala to control anxiety. Nature 473, 372-375 (2011). [PubMed]
J. F. Foley, Anxiety Control. Sci. Signal. 4, ec145 (2011).