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代謝
肥満と高血圧を切り離す
Metabolism
Separating Obesity from Hypertension
Sci. Signal., 12 July 2011
Vol. 4, Issue 181, p. ec189
[DOI: 10.1126/scisignal.4181ec189]
John F. Foley
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA
肥満は、心血管疾患の発症リスクを高める高血圧を伴う場合が多い(Humphreysのコメント参照)。Purkayasthaらは、転写因子の核因子κB(NF-κB)およびそのアクチベーターのIKKβ(NF-κB阻害因子キナーゼβ)が肥満に伴う炎症を媒介し、視床下部が肥満の発症に関与することに注目し、肥満と高血圧を結び付ける上で、視床下部のNF-κBシグナル伝達が果たす潜在的役割について検討した。IKKβの恒常的活性化変異体をマウス視床下部内側基底部にレトロウイルスを用いて発現させると(NF-κBシグナル伝達の活性化)、7日後に(体重増加を伴わずに)高血圧が発症した。この現象は対照レトロウイルス感染マウスでは認められなかった。逆に、NF-κB阻害因子IκBαのドミナントネガティブ変異体を高脂肪食を摂取させたマウスの視床下部内側基底部においてレトロウイルスを用いて発現させると(NF-κB活性化の阻害)、高脂肪食を摂取させた対照マウスに比べて、肥満関連高血圧の発症が低下した。これらのマウスはいずれも同様に肥満になった。通常食を与えたマウスを炎症性肥満関連サイトカインの腫瘍壊死因子α(TNF-α)に曝露すると、用量依存的に高血圧が誘発された。免疫組織化学的解析によって、TNF-αは視床下部のプロオピオメラノコルチン(POMC)ニューロンにおけるIKKβとNF-κBの活性化を誘発した。POMCニューロン特異的にIKKβをコードする遺伝子を欠損させたマウスは、TNF-α曝露後にも高脂肪食摂取後にも高血圧を示さなかったが、高脂肪食によってノックアウトマウスも野生型マウスも同様に肥満になった。これらのデータを総合すると、視床下部のPOMCニューロンにおけるNF-κBシグナル伝達は肥満と高血圧誘発の橋渡しをすると考えられ、肥満を管理しなくても高血圧を治療できる有望な治療標的となり得る。
S. Purkayastha, G. Zhang, D. Cai, Uncoupling the mechanisms of obesity and hypertension by targeting hypothalamic IKK-β and NF-B. Nat. Med. 17, 883-887 (2011). [PubMed]
M. H. Humphreys, The brain splits obesity and hypertension. Nat. Med. 17, 782-783 (2011). [PubMed]
J. F. Foley, Separating Obesity from Hypertension. Sci. Signal. 4, ec189 (2011).