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薬理学
抗てんかん薬を多発性硬化症の治療に再活用

Pharmacology
Repurposing Antiepileptic Drugs for Multiple Sclerosis

Editor's Choice

Sci. Signal., 28 August 2012
Vol. 5, Issue 239, p. ec223
[DOI: 10.1126/scisignal.2003538]

Nancy R. Gough

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

J. Lv, C. Du, W. Wei, Z. Wu, G. Zhao, Z. Li, X. Xie, The antiepileptic drug valproic acid restores T cell homeostasis and ameloriates pathogenesis of experimental autoimmune encephalomyelitis. J. Biol. Chem. 287, 28656-28665 (2012). [Abstract] [Full Text]

バルプロ酸は、てんかんの治療のために臨床的に使用されるヒストンデアセチラーゼ阻害薬である。Lvらは、この薬物が多発性硬化症の治療にも有効である可能性を示唆している。実験的自己免疫性脳脊髄炎(experimental autoimmune encephalomyelitis:EAE)と呼ばれる多発性硬化症のマウスモデルでは、発症する前または後のいずれかにバルプロ酸を投与した場合(腹腔内投与または経口投与のいずれか)に、疾患の重症度が低下した。この処置を受けたマウスから採取された脊髄では、炎症性T細胞、とくにTH17細胞とTH1細胞が少なかった。EAEマウスの脾臓は対照マウスに比べて有意に大きいが、EAEマウスにバルプロ酸を投与すると、そのような脾臓サイズの増大と活性T細胞集団におけるTH17細胞とTH1細胞の割合の増加が減少した。単離されたT細胞のin vitro解析では、バルプロ酸によって、抗原によって刺激されたT細胞の増殖が低下し、T細胞からTH17細胞とTH1細胞への分化が抑制された。また、培養下で分化したTH17細胞とTH1細胞のアポトーシスをバルプロ酸が促進した。バルプロ酸で処置されたEAEマウスの脾臓から採取されたT細胞では、アポトーシスに関与するカスパーゼ(カスパーゼ3、8、9)をコードする転写産物の量が増大しており、バルプロ酸で処置されたEAE群では、切断された(活性化された)カスパーゼ3がより豊富に存在した。EAEマウスの脾臓から単離されたT細胞を培養液中で活性化させると、野生型マウスから単離されたT細胞よりもアポトーシス細胞の割合が低く、EAEマウスへのバルプロ酸投与によりアポトーシス細胞の割合が増加した。多発性硬化症の患者3人から採取されたT細胞をバルプロ酸に曝露すると、同様にアポトーシス細胞の割合の増加がみられたことから、この抗てんかん薬を多発性硬化症の治療に再活用できる可能性が示唆される。

N. R. Gough, Repurposing Antiepileptic Drugs for Multiple Sclerosis. Sci. Signal. 5, ec223 (2012).

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2012年8月28日号

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薬理学
抗てんかん薬を多発性硬化症の治療に再活用

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