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発生
プロテアーゼ非依存性の浸潤

Development
Protease-Independent Invasion

Editor's Choice

Sci. Signal., 8 January 2013
Vol. 6, Issue 257, p. ec5
[DOI: 10.1126/scisignal.2003942]

Annalisa M. VanHook

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

H. Mori, A. T. Lo, J. L. Inman, J. Alcaraz, C. M. Ghajar, J. D. Mott, C. M. Nelson, C. S. Chen, H. Zhang, J. L. Bascom, M. Seiki, M. J. Bissell, Transmembrane/cytoplasmic, rather than catalytic, domains of Mmp14 signal to MAPK activation and mammary branching morphogenesis via binding to integrin β1. Development 140, 343-352 (2013). [Abstract] [Full Text]

マトリックス・メタロプロテイナーゼ(MMP)は、上皮細胞が周囲の間質へ浸潤する際に重要である。これは、そのタンパク質分解活性により、細胞外マトリックス(ECM)を分解し、細胞外領域へシグナル伝達分子を放出することが可能になるためである。Moriらは、Mmp14が、タンパク質分解ドメインと無関係に、乳腺上皮管の分岐形成において機能することを報告する。Mmp2およびMmp3はおもに間質で発現されるが、Mmp14は、in vivoでは発生中のマウス乳腺において間質と上皮分岐の先端で発現された。初代乳腺オルガノイドおよび乳腺細胞株EpH4細胞凝集を、前がん状態の乳腺微小環境を表す高密度(3 mg/ml)三次元コラーゲンマトリックスまたは正常な乳腺微小環境を模倣する低密度(1 mg/ml)三次元コラーゲンマトリックスで培養した。高密度および低密度コラーゲンマトリックスのいずれにおいても、線維芽細胞増殖因子2(FGF2)は、コラーゲンマトリックスへの浸潤と上皮細胞の分岐形成を誘導した。Mmp14を標的とする短鎖ヘアピンRNA(shRNA)で処理すると、FGF2によって誘導される上皮細胞浸潤が抑制された。しかし、MMPのタンパク質分解活性の阻害物質は、高密度ゲルでしか浸潤を抑制しなかった。EpH4細胞をMMP阻害物質で処理しても、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)Erkの活性は影響を受けなかったのに対し、Mmp14のサイレンシングは、リン酸化(活性型)Erkの存在量に加えてインテグリンβ1(Itgb1)およびリン酸化(活性型)Itgb1の存在量も減少させた。shRNAによりItgb1をサイレンシングすると、低密度マトリックスで培養したEpH4細胞において、浸潤が抑制され、Mmp14とリン酸化Erkの存在量がいずれも減少した。Itgb1の存在量は、対照へテロ接合体と比較して、Mmp14ノックアウトマウスに由来する乳腺組織でも減少していた。同様に、MAPK阻害物質で処理すると、低密度マトリックスで培養したEpH4細胞において、浸潤が減少し、Mmp14とItgb1の存在量がいずれも低下した。免疫共沈降および蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)実験から、EpH4細胞においてMmp14とItgb1が互いに会合していることが明らかになった。完全長の膜繋留Mmp14あるいは細胞外触媒ドメインおよびヘモペキシンドメインが欠損した変異型Mmp14を遺伝子導入により発現させると、Mmp14がノックダウンされたEpH4細胞において、浸潤とリン酸化Itgb1の存在量が回復した。FRET分析により、膜貫通ドメインと細胞質ドメインだけから成るこのMmp14変異型が、Itgb1と会合していることが確認された。合わせると、これらのデータから、Mmp14の膜貫通ドメインまたは細胞質ドメイン、あるいは両者が、Itgb1を通してMAPK経路へのシグナル伝達を促進し、正常な乳腺発生中に上皮管の分岐形成を刺激するモデルが示唆される。Mmp14の非触媒活性が腫瘍進行に関連して役割を果たすかどうかは、この報告からは明らかでないが、これらの結果から、がん治療でMMPを標的とする研究においてMMPの非触媒ドメインを見落とすべきでないことが示唆される。

A. M. VanHook, Protease-Independent Invasion. Sci. Signal. 6, ec5 (2013).

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2013年1月8日号

Editor's Choice

発生
プロテアーゼ非依存性の浸潤

Research Article

BSTAはmTORC2を介してAkt1のリン酸化を促進し、FoxC2の発現を抑制して脂肪細胞の分化を刺激する

ユビキチン化と脱ユビキチン化のサイクルが増殖因子を介したAktシグナル伝達の活性化を決定的に調節する

Perspectives

AktはDUBによって不活性化される

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