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MEK阻害剤トラメチニブは未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)依存性神経芽腫の増殖を阻害しない

MEK inhibitor trametinib does not prevent the growth of anaplastic lymphoma kinase (ALK)–addicted neuroblastomas

Research Article

Sci. Signal. 28 Nov 2017:
Vol. 10, Issue 507, eaam7550
DOI: 10.1126/scisignal.aam7550

Ganesh Umapathy1, Jikui Guan1, Dan E. Gustafsson1, Niloufar Javanmardi2, Diana Cervantes-Madrid1, Anna Djos2, Tommy Martinsson2, Ruth H. Palmer1, and Bengt Hallberg1,*

1 Department of Medical Biochemistry and Cell Biology, Institute of Biomedicine, Sahlgrenska Academy, University of Gothenburg, SE-405 30 Göteborg, Sweden.
2 Department of Clinical Pathology and Genetics, Institute of Biomedicine, Sahlgrenska Academy, University of Gothenburg, SE-405 30 Göteborg, Sweden.

* Corresponding author. Email: bengt.hallberg@gu.se

要約
RAS-RAF-MEK-ERKシグナル伝達経路の活性化は、さまざまながんの発生および進行の促進に関与している。RAS-MAPK経路を標的とするいくつかの阻害剤が、特定の種類のがん患者に対する単剤療法または多剤併用療法として、臨床的に承認されている。その一例であるMEK阻害剤トラメチニブは、合理的な多剤併用療法として、EML4-ALK陽性、EGFR活性化、あるいはKRAS変異肺がんや、RAS-MAPK経路の活性化変異も有する神経芽腫の治療に組み込まれている。さらに、不均質な疾患である神経芽腫では、再発例において ALKNRASNF1の変異率が高く、それによりRAS-MAPKシグナル伝達活性化の亢進がもたらされる。ALK依存性神経芽腫患者においては、単剤療法がまだ有効な結果をもたらしていないことから、ALKとRAS-MAPK経路の共標的化は魅力的な選択肢である。われわれは、トラメチニブによるMEK-ERK経路阻害に対する神経芽腫細胞株の反応を評価した。RAS-MAPK経路変異神経芽腫細胞株とは対照的に、ALK依存性神経芽腫細胞をトラメチニブで処理すると、キナーゼAKTおよびERK5の活性化の亢進(リン酸化により推測)が認められた。このフィードバック反応は、哺乳類ラパマイシン標的タンパク質複合体2関連タンパク質SIN1によって仲介されており、結果としてAKTシグナル伝達依存性の生存および増殖の増加をもたらした。マウスの異種移植片において、トラメチニブはEML4-ALK陽性非小細胞肺がんおよびRAS変異神経芽腫の増殖を阻害したが、ALK依存性神経芽腫の増殖は阻害しなかった。したがって、われわれの結果からは、ALK依存性神経芽腫の治療にMEK阻害剤を用いるという、一見合理的な選択肢は避けるべきであると忠告される。

Citation: G. Umapathy, J. Guan, D. E. Gustafsson, N. Javanmardi, D. Cervantes-Madrid, A. Djos, T. Martinsson, R. H. Palmer, B. Hallberg, MEK inhibitor trametinib does not prevent the growth of anaplastic lymphoma kinase (ALK)-addicted neuroblastomas. Sci. Signal. 10, eaam7550 (2017).

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