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AblとArgがシステインカテプシンの分泌を調節してメラノーマの浸潤と転移を促進する

Abl and Arg mediate cysteine cathepsin secretion to facilitate melanoma invasion and metastasis

Research Article

Sci. Signal. 20 Feb 2018:
Vol. 11, Issue 518, eaao0422
DOI: 10.1126/scisignal.aao0422

Rakshamani Tripathi1, Leann S. Fiore1, Dana L. Richards2, Yuchen Yang3, Jinpeng Liu4, Chi Wang4, and Rina Plattner1,*

1 Department of Pharmacology and Nutritional Sciences, College of Medicine, University of Kentucky, Lexington, KY 40536, USA.
2 Department of Pathology, College of Medicine, University of Kentucky, Lexington, KY 40536, USA.
3 Department of Statistics, University of Kentucky, Lexington, KY 40536, USA.
4 Department of Biostatistics and Markey Cancer Center, University of Kentucky, Lexington, KY 40536, USA.

* Corresponding author. Email: rplat2@uky.edu

要約

メラノーマ(黒色腫)は、とくに若年女性で発生率が上昇しており、浸潤性・転移性の高さ、従来の標的型の免疫学的薬剤に対する抵抗性率の高さが原因で、多くの人にとって依然として不治の病である。カテプシンは、メラノーマの増悪と治療抵抗性を決定付ける重要なプロテアーゼである。細胞内カテプシンは、がんの増悪を制限するタンパク質を切断し分解する。一方、細胞外カテプシンは、腫瘍微小環境において、細胞外マトリックスを直接切断し、浸潤促進性のプロテアーゼを活性化する。カテプシンの分泌は、がん細胞で顕著に亢進される。われわれは、メラノーマ細胞においてカテプシン分泌の亢進をもたらすシグナル伝達経路を調べた。そして、非受容体型チロシンキナーゼであるAblとArg(Abl/Arg)が、上皮間葉転換(EMT)、浸潤、治療抵抗性において重要な役割を果たす転写因子(すなわちEts1、Sp1、NF-κB/p65)を活性化することによってカテプシンBとカテプシンLの分泌を亢進することを見出した。一部のメラノーマ細胞株では、Abl/Argはキナーゼとは独立した形で、Ets1/p65誘導性のカテプシンBとカテプシンLの分泌を亢進したが、他のメラノーマ細胞株では、Abl/Argはキナーゼに依存した形で、Sp1/Ets1/p65に媒介されるカテプシンL分泌の誘導とSp1/p65に媒介されるカテプシンB分泌の誘導を促進した。臨床的妥当性の指標として、Abl/Arg、Sp1、Ets1、カテプシンをコードするmRNAの量は、原発性メラノーマで正の相関を示し、培養下でのAbl/Argに駆動される浸潤とin vivoでの転移にはカテプシンの分泌が必須であった。これらのデータは、Ablキナーゼを標的とする薬剤(その多くはFDAに承認されている)が、一部のメラノーマ、および活性化されたAblキナーゼを擁する他の浸潤性がんで、カテプシンの分泌を阻害する可能性を示唆している。

Citation: R. Tripathi, L. S. Fiore, D. L. Richards, Y. Yang, J. Liu, C. Wang, R. Plattner, Abl and Arg mediate cysteine cathepsin secretion to facilitate melanoma invasion and metastasis. Sci. Signal. 11, eaao0422 (2018)

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