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SrcファミリーのキナーゼFgrはSH3-SH2ドメインによる調節とは独立して機能する形質転換誘発性の腫瘍性タンパク質である

The Src family kinase Fgr is a transforming oncoprotein that functions independently of SH3-SH2 domain regulation

Research Article

Sci. Signal. 23 Oct 2018:
Vol. 11, Issue 553, eaat5916
DOI: 10.1126/scisignal.aat5916

Kexin Shen1,2, Jamie A. Moroco3, Ravi K. Patel1, Haibin Shi1, John R. Engen3, Heather R. Dorman1, and Thomas E. Smithgall1,*

1 Department of Microbiology and Molecular Genetics, University of Pittsburgh School of Medicine, Pittsburgh, PA 15219, USA.
2 Tsinghua University School of Medicine, Beijing 100084, China.
3 Department of Chemistry and Chemical Biology, Northeastern University, Boston, MA 02115, USA.

* Corresponding author. Email: tsmithga@pitt.edu

要約

Fgrは、多くのヒトがんで過剰発現されている構成的活性型の非受容体チロシンキナーゼからなるSrcファミリーのメンバーである。Fgrの発現は骨髄系造血細胞に限られており、急性骨髄性白血病(AML)患者から採取された骨髄検体のサブセットで顕著に促進されている。本稿でわれわれは、キナーゼFgrを発現しないRat-2線維芽細胞を用いてFgrの発がん能を調べた。野生型または調節性尾部変異型のFgrを発現させると、細胞の形質転換(軟寒天培地でのコロニー形成から推測)が促進され、これにはFgr活性化ループのリン酸化が伴っていたことから、FgrのキナーゼドメインはFgrの非触媒性SH3-SH2領域による調節とは独立して機能することが示唆された。同ファミリーの他のメンバーとは異なり、組換え型FgrはSH3-SH2ドメインのリガンドによって活性化されなかった。しかし、水素重水素交換質量分析データからは、調節性のSH3およびSH2ドメインがSrcの場合と同様にキナーゼドメインと背中合わせでパッキングされていることが示された。配列アラインメントでは、Fgrの活性化ループはSrcファミリーの他のどのメンバーの活性化ループとも異なり、活性化ループのチロシンから2つ進んだ位置にあるのがアラニンではなくプロリンであることが示された。Fgrの活性化ループをSrcのものと置換すると、キナーゼ活性が部分的に阻害され、コロニー形成が抑制された。最後に、Fgrを発現させると、サイトカインGM-CSFに対するヒト骨髄系前駆細胞の感受性が高まった。FgrのキナーゼドメインはSH3-SH2を介した調節に対して感受性を示さないので、変異を伴わないFgrの単純な過剰発現がAMLや他の血液がんにおける発がん性の形質転換に寄与している可能性がある。

Citation: K. Shen, J. A. Moroco, R. K. Patel, H. Shi, J. R. Engen, H. R. Dorman, T. E. Smithgall, The Src family kinase Fgr is a transforming oncoprotein that functions independently of SH3-SH2 domain regulation. Sci. Signal. 11, eaat5916 (2018).

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