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ケモカイン受容体CXCR3のバイアスアゴニストは走化性と炎症を差次的に制御する

Biased agonists of the chemokine receptor CXCR3 differentially control chemotaxis and inflammation

Research Article

Sci. Signal. 06 Nov 2018:
Vol. 11, Issue 555, eaaq1075
DOI: 10.1126/scisignal.aaq1075

Jeffrey S. Smith1,2, Lowell T. Nicholson2, Jutamas Suwanpradid3, Rachel A. Glenn1, Nicole M. Knape1, Priya Alagesan1, Jaimee N. Gundry1, Thomas S. Wehrman4, Amber Reck Atwater3, Michael D. Gunn2,5, Amanda S. MacLeod3,5, and Sudarshan Rajagopal1,2,*

1 Department of Biochemistry, Duke University, Durham, NC 27710, USA.
2 Department of Medicine, Duke University, Durham, NC 27710, USA.
3 Department of Dermatology, Duke University, Durham, NC 27710, USA.
4 Primity Bio, Fremont, CA 94538, USA.
5 Department of Immunology, Duke University, Durham, NC 27710, USA.

* Corresponding author. Email: sudarshan.rajagopal@dm.duke.edu

要約

ケモカイン受容体CXCR3は種々の疾患においてエフェクター/メモリーT細胞の遊走を媒介することで、炎症の中心的な役割を果たしている。しかし、CXCR3およびその他のケモカイン受容体を標的とする薬物は、炎症治療にはほとんど無効である。ケモカイン受容体の内因性ペプチドリガンドであるケモカインは、受容体結合後にGタンパク質またはβ-アレスチンを介したシグナル伝達のいずれかを選択的に活性化することで、いわゆる「バイアスのある活性化(biased agonism)」を示すことができる。バイアスアゴニストは、免疫細胞の遊走など生理的反応を差次的に制御するための、より標的化された治療薬として使用できるかもしれない。CXCR3を介した生理的反応が、Gタンパク質およびβ-アレスチンを介したシグナル伝達に分離されうるか否かを検討するため、われわれは受容体の低分子バイアスアゴニストを同定し、特性評価を行った。T細胞を介したアレルギー性接触過敏症(CHS)のマウスモデルにおいて、β-アレスチンバイアスアゴニストは炎症を増強したが、Gタンパク質バイアスアゴニストの局所塗布は増強しなかった。β-アレスチンバイアスアゴニストによってT細胞の動員は亢進し、アレルギー性CHSの患者の生検ではT細胞中にCXCR3およびβ-アレスチンの共発現が認められた。マウスおよびヒトのT細胞において、β-アレスチンバイアスアゴニストは走化性の刺激に最も効率的であった。ヒトリンパ球におけるリン酸化タンパク質の解析から、β-アレスチンバイアスシグナル伝達は、T細胞の遊走を促進するキナーゼAktを活性化することが示された。本研究から、CXCR3のバイアスアゴニストは個々の生理的影響をもつことが実証され、異なる内因性CXCR3リガンドには個々の役割があることが示唆された。またこのことは、バイアス型シグナル伝達がCXCR3およびその他のケモカイン受容体を標的とする薬物の臨床的有用性に影響を与えうる証拠を示している。

Citation: J. S. Smith, L. T. Nicholson, J. Suwanpradid, R. A. Glenn, N. M. Knape, P. Alagesan, J. N. Gundry, T. S. Wehrman, A. R. Atwater, M. D. Gunn, A. S. MacLeod, S. Rajagopal, Biased agonists of the chemokine receptor CXCR3 differentially control chemotaxis and inflammation. Sci. Signal. 11, eaaq1075 (2018).

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