• ホーム
  • LIMK1を薬理学的に阻害するとβアミロイドに対する樹状突起棘の回復力が高まる

LIMK1を薬理学的に阻害するとβアミロイドに対する樹状突起棘の回復力が高まる

Pharmacologic inhibition of LIMK1 provides dendritic spine resilience against β-amyloid

Research Article

Sci. Signal. 25 Jun 2019:
Vol. 12, Issue 587, eaaw9318
DOI: 10.1126/scisignal.aaw9318

Benjamin W. Henderson1,2, Kelsey M. Greathouse1,2, Raksha Ramdas1,2, Courtney K. Walker1,2, Tejeshwar C. Rao3, Svitlana V. Bach4, Kendall A. Curtis1,2, Jeremy J. Day4, Alexa L. Mattheyses3, and Jeremy H. Herskowitz1,2,*

1 Center for Neurodegeneration and Experimental Therapeutics, University of Alabama at Birmingham School of Medicine, Birmingham, AL 35294, USA.
2 Department of Neurology, University of Alabama at Birmingham School of Medicine, Birmingham, AL 35294, USA.
3 Department of Cell, Developmental and Integrative Biology, University of Alabama at Birmingham School of Medicine, Birmingham, AL 35294, USA.
4 Department of Neurobiology, University of Alabama at Birmingham School of Medicine, Birmingham, AL 35294, USA.

* Corresponding author. Email: jhersko@uab.edu

要約

アルツハイマー病(AD)の治療では、もっぱらβアミロイド(Aβ)に重点が置かれるが、Aβの影響は臨床症状が現れる前に最大になる可能性がある。Aβの下流では、樹状突起棘の縮退がADの認知機能低下に最も強く関連する。Rho結合キナーゼ(ROCK1およびROCK2)はアクチン細胞骨格を調節し、ROCK1およびROCK2のタンパク質量は早期ADで増加している。本稿でわれわれは、初代培養ラット海馬ニューロンでROCK1量が増加するとミオシン経路を介して樹状突起棘の長さが短縮され、ROCK2量が増加するとセリン・スレオニンキナーゼLIMK1を介して樹状突起棘の縮退が誘導されることを明らかにした。Aβ42オリゴマーはROCKを活性化させうる。そこで、われわれは静的画像解析と多電極アレイ解析を組み合わせて用いることで、ROCK2-LIMK1経路がAβ42に誘発される樹状突起棘の縮退とニューロンの興奮性亢進を調節していることを見出した。生細胞の顕微鏡観察では、LIMK1を薬理学的に阻害するとAβ42オリゴマーに対する樹状突起棘の回復力が高まることが明らかになった。hAPPマウスをLIMK1阻害薬で処理すると、Aβによって誘発された海馬の樹状突起棘の縮退と形態異常からの回復がみられた。これらのデータは、LIMK1を治療標的にすれば、Aβに対する樹状突起棘の回復力を高められる可能性があり、そのため、認知機能は正常だが認知症を発症するリスクの高い患者に有益をもたらす可能性があることを示唆している。

Citation: B. W. Henderson, K. M. Greathouse, R. Ramdas, C. K. Walker, T. C. Rao, S. V. Bach, K. A. Curtis, J. J. Day, A. L. Mattheyses, J. H. Herskowitz, Pharmacologic inhibition of LIMK1 provides dendritic spine resilience against β-amyloid. Sci. Signal. 12, eaaw9318 (2019).

英文原文をご覧になりたい方はScience Signaling オリジナルサイトをご覧下さい

英語原文を見る

2019年6月25日号

Editors' Choice

TAMはMLKLを標的にする

Research Article

LIMK1を薬理学的に阻害するとβアミロイドに対する樹状突起棘の回復力が高まる

低用量メチル水銀曝露により誘発されるDrp1の脱ポリスルフィド化は血行動態的過負荷に対する心臓の脆弱性を増加させる

アリル炭化水素受容体を介したキヌレニンのシグナル伝達が、ヒト胚性幹細胞の未分化状態を維持する

最新のResearch Article記事

2025年08月19日号

Hox-C12はβ2-アドレノセプターのcAMP/カルシウムフィードフォワードループとの共役を調整してトリプルネガティブ乳がんの浸潤を促進する

2025年08月19日号

アミリン受容体サブユニットの相互作用はアゴニストによって調節されシグナル伝達を決定する

2025年08月12日号

lncRNA EPIC1は、二本鎖RNAに誘導されるI型IFNシグナル伝達を抑制し、PD-1阻害に対するTNBC反応を促進するための治療標的となる

2025年08月05日号

腫瘍浸潤性の侵害受容ニューロンが免疫抑制を促進する

2025年07月29日号

USP5はFcεRIγを脱ユビキチン化して安定化させ、IgEに誘導されるマスト細胞の活性化とアレルギー性炎症を促進する