• ホーム
  • バイアスM1受容体ポジティブアロステリックモジュレータがM1依存性げっ歯類皮質可塑性におけるホスホリパーゼDの役割を明らかに

バイアスM1受容体ポジティブアロステリックモジュレータがM1依存性げっ歯類皮質可塑性におけるホスホリパーゼDの役割を明らかに

Biased M1 receptor-positive allosteric modulators reveal role of phospholipase D in M1-dependent rodent cortical plasticity

Research Article

Sci. Signal. 03 Dec 2019:
Vol. 12, Issue 610, eaax2057
DOI: 10.1126/scisignal.aax2057

Sean P. Moran1,2,3, Zixiu Xiang2,3, Catherine A. Doyle3, James Maksymetz2,3, Xiaohui Lv3, Sehr Faltin3, Nicole M. Fisher2,3, Colleen M. Niswender2,3,4, Jerri M. Rook1,2,3, Craig W. Lindsley2,3,5, and P. Jeffrey Conn1,2,3,4,*

1 Vanderbilt Brain Institute, Vanderbilt University, Nashville, TN 37232, USA.
2 Department of Pharmacology, Vanderbilt University, Nashville, TN 37232, USA.
3 Vanderbilt Center for Neuroscience Drug Discovery, Vanderbilt University, Nashville, TN 37232, USA.
4 Vanderbilt Kennedy Center, Vanderbilt University Medical Center, Nashville, TN 37240, USA.
5 Department of Chemistry, Vanderbilt University, Nashville, TN 37232, USA.

* Corresponding author. Email: jeff.conn@vanderbilt.edu

要約

ムスカリン性アセチルコリン受容体M1サブタイプの高選択的ポジティブアロステリックモジュレータ(PAM)は、アルツハイマー病及び統合失調症患者における認知機能改善の新たなアプローチとして期待が高まっている。創薬プログラムの中で、異なる程度のアゴニスト活性や異なるシグナルバイアスなど、特有の薬理学的性質を有する、構造的に多様なM1受容体PAMが生み出されてきた。これには、この受容体のホスホリパーゼC(PLC)活性化への共役は増強するがホスホリパーゼD(PLD)活性化とは共役しないバイアスM1受容体が含まれる。しかし、ネイティブ系でのM1受容体シグナル伝達におけるPLDの役割に関してはほとんど知られておらず、バイアスM1 PAMがネイティブ組織において、M1依存性反応に対して異なる調節作用を示すかどうかは不明である。われわれは、PLD阻害薬およびPLDノックアウトマウスを用いて、前頭前皮質(PFC)におけるM1依存性長期抑圧(LTD)の誘導にPLDが必要であることを明らかにした。さらに、PLDと共役しないバイアスM1 PAMはPFCにおいてオルソステリックアゴニスト誘導性LTDを増強しなかったのみならず、M1依存性LTDを遮断した。一方、PLD非依存性のM1依存性電気生理学的反応に対するバイアスM1 PAMと非バイアスM1の増強作用は同様であった。これらの知見から、PLDは一部の中枢神経系(CNS)機能に対するM1 PAMの調節機能において、重要な役割を果たしており、認知に関与する脳領域におけるバイアスM1 PAMの機能は異なることが明らかになった。

Citation: S. P. Moran, Z. Xiang, C.A. Doyle, J. Maksymetz, X. Lv, S. Faltin, N. M. Fisher, C. M. Niswender, J. M. Rook, C. W. Lindsley, P. J. Conn, Biased M1 receptor-positive allosteric modulators reveal role of phospholipase D in M1-dependent rodent cortical plasticity. Sci. Signal. 12, eaax2057 (2019).

英文原文をご覧になりたい方はScience Signaling オリジナルサイトをご覧下さい

英語原文を見る

2019年12月3日号

Editor's Choice

抗ウイルス活性の要点

Research Article

β細胞におけるハイプシン生合成がポリアミン代謝を条件的な細胞増殖に結び付けてグルコース恒常性を維持する

セラミド-1-リン酸とIVA型細胞質ホスホリパーゼA2の相互作用は急性創傷の治癒と修復を調節する

バイアスM1受容体ポジティブアロステリックモジュレータがM1依存性げっ歯類皮質可塑性におけるホスホリパーゼDの役割を明らかに

最新のResearch Article記事

2024年4月9日号

前立腺がんにおいて脂質合成を阻害するとDNA損傷が誘導され、PARP阻害がもたらす細胞死が増加する

A型インフルエンザウイルス感染中にMiz1がI型インターフェロンの産生を抑制してウイルス除去を制限する

2024年4月2日号

フェリチンの重サブユニットは肝星細胞でICAM-1を介してNLRP3インフラマソームを刺激し、肝臓の炎症を促進する

2024年3月26日号

ミクログリア内のグルコシルセラミドの蓄積がマウスにおいてSTING依存性の神経炎症と神経変性を引き起こす

2024年3月19日号

運動によって誘導されるBDNFは運動後回復期に骨格筋脂質代謝のPPARδ依存性リプログラミングを促進する