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mTORからeIF2αへのシグナル伝達が化学療法薬ドキソルビシンに応答した細胞遊走を媒介する
Signaling from mTOR to eIF2α mediates cell migration in response to the chemotherapeutic doxorubicin
Sci. Signal. 17 Dec 2019:
Vol. 12, Issue 612, eaaw6763
DOI: 10.1126/scisignal.aaw6763
Robert F. Harvey, Tuija A. A. Pöyry, Mark Stoneley, and Anne E. Willis*
Medical Research Council Toxicology Unit, University of Cambridge, Lancaster Rd., Leicester LE1 9HN, UK.
* Corresponding author. Email: aew80@mrc-tox.cam.ac.uk
要約
腫瘍細胞は、細胞傷害性化学療法薬への曝露後に、真核生物翻訳開始因子4F(eIF4F)と三者複合体の調節を介して自身のトランスレイトームを変化させ、細胞生存プログラムを亢進する。ラパマイシンやそのアナログなど、mTORシグナル伝達とeIF4F複合体形成を阻害する化合物は、細胞の死滅を促進する併用療法で使用されているが、その成功は限られている。これは、遺伝毒性薬物療法による治療後にeIF4F調節と三者複合体形成を協調させるシグナル伝達経路間のクロストークがまだ完全には探索されていないことが原因である可能性がある。本稿でわれわれは、p53下流の調節経路において、DNA損傷後にmTORが阻害されるとクロストークシグナル伝達が促進され、eIF2αのリン酸化が引き起こされることを記述した。また、eIF2αのリン酸化はタンパク質合成を阻害しないが、かわりに細胞遊走に必要であることと、ISRIBまたはトラゾドンのいずれかでこの経路を薬理学的に遮断すると細胞遊走が制限されることも明らかにした。これらの結果は、eIF2αシグナル伝達を治療標的とすることによって腫瘍細胞の転移と浸潤を制限することができ、がん患者のサブセットにとって恩恵となりうるという考えを支持するものである。
Citation: R. F. Harvey, T. A. A. Pöyry, M. Stoneley, A. E. Willis, Signaling from mTOR to eIF2α mediates cell migration in response to the chemotherapeutic doxorubicin. Sci. Signal. 12, eaaw6763 (2019).