• ホーム
  • ナチュラルキラー細胞受容体の膜上のナノスケール構成およびシグナル伝達に遺伝的多様性が影響

ナチュラルキラー細胞受容体の膜上のナノスケール構成およびシグナル伝達に遺伝的多様性が影響

Genetic diversity affects the nanoscale membrane organization and signaling of natural killer cell receptors

Research Article

Sci. Signal. 17 Dec 2019:
Vol. 12, Issue 612, eaaw9252
DOI: 10.1126/scisignal.aaw9252

Philippa R. Kennedy1, Charlotte Barthen1, David J. Williamson1, William T. E. Pitkeathly1, Khodor S. Hazime1, Joshua Cumming1, Kevin B. Stacey1, Hugo G. Hilton2, Mary Carrington3,4, Peter Parham2, and Daniel M. Davis1,*

1 Manchester Collaborative Centre for Inflammation Research, University of Manchester, 46 Grafton Street, Manchester M13 9NT, UK.
2 Department of Structural Biology, Stanford University School of Medicine, D159, Sherman Fairchild Science Building, 299 Campus Drive West, Stanford, CA 94305, USA.
3 Basic Science Program, Frederick National Laboratory for Cancer Research, Building 560, Room 21-89, Frederick, MD 21702, USA.
4 Ragon Institute of MGH, MIT and Harvard, Cambridge, MA 02139, USA.

* Corresponding author. Email: daniel.davis@manchester.ac.uk

要約

ヒトのナチュラルキラー(NK)細胞受容体の遺伝的多様性は、多くの疾患に対する抵抗性および易罹患性と関連している。今回われわれは、このような多様性がキラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)のナノスケールの構成に及ぼす影響を検討した。超解像顕微鏡を用いることで、多様な遺伝子および対立遺伝子によりコードされる抑制性KIRが、初代ヒトNK細胞の表面上で別々に組織化されていることを見出した。存在量が比較的多いKIRが形成するクラスタに比べて、少ない存在量で認められるKIRは集合して小さめのクラスタを構築した。また量が少ないKIRはクラスタとして存在している割合が高かった。受容体を刺激すると、シグナルの統合を促進してNK細胞応答を制御する「免疫シナプス」と呼ばれる構造化されたインターフェースが集合する。このとき、存在量の少ない受容体を刺激すると、存在量の多い受容体を刺激したときに比べ、下流のホスファターゼであるSHP-1のリン酸化は弱いが、アダプタータンパク質であるCrkは高度にリン酸化された。KIR存在量の多い細胞では、SHP-1がCrkを脱リン酸化し、これが活性化時のNK細胞の進展を増強した。このように、遺伝的多様性は抑制性KIRの存在量とナノスケールの構成の両方を調節する。すなわち、細胞表面にある受容体数が遺伝子型によって異なるだけでなく、それらの受容体が膜内で組織化される方法も、遺伝子型によって異なる。本質的には、細胞表面上のタンパク質の平均的な表面存在量の変化は、局所的なナノスケールのクラスター形成における変化と密接に関連する粗い記述子である。まとめるとわれわれのデータは、抑制性KIRにおける遺伝的多様性は膜近位のシグナル伝達に影響すること、さらに予想外なことに、活性化免疫シナプスの形成にも影響することを示している。

Citation: P. R. Kennedy, C. Barthen, D. J. Williamson, W. T. E. Pitkeathly, K. S. Hazime, J. Cumming, K. B. Stacey, H. G. Hilton, M. Carrington, P. Parham, D. M. Davis, Genetic diversity affects the nanoscale membrane organization and signaling of natural killer cell receptors. Sci. Signal. 12, eaaw9252 (2019).

英文原文をご覧になりたい方はScience Signaling オリジナルサイトをご覧下さい

英語原文を見る

2019年12月17日号

Editor's Choice

味方と敵を区別する

Research Article

mTORからeIF2αへのシグナル伝達が化学療法薬ドキソルビシンに応答した細胞遊走を媒介する

ヘキソキナーゼ2は解糖とTGF-βの線維化促進作用を結びつける

ナチュラルキラー細胞受容体の膜上のナノスケール構成およびシグナル伝達に遺伝的多様性が影響

最新のResearch Article記事

2024年4月9日号

前立腺がんにおいて脂質合成を阻害するとDNA損傷が誘導され、PARP阻害がもたらす細胞死が増加する

A型インフルエンザウイルス感染中にMiz1がI型インターフェロンの産生を抑制してウイルス除去を制限する

2024年4月2日号

フェリチンの重サブユニットは肝星細胞でICAM-1を介してNLRP3インフラマソームを刺激し、肝臓の炎症を促進する

2024年3月26日号

ミクログリア内のグルコシルセラミドの蓄積がマウスにおいてSTING依存性の神経炎症と神経変性を引き起こす

2024年3月19日号

運動によって誘導されるBDNFは運動後回復期に骨格筋脂質代謝のPPARδ依存性リプログラミングを促進する