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定量モデルから導いた変異原性によって、完全長のCXCR4-CXCL12複合体の機能解剖学を体系的に検討
Functional anatomy of the full-length CXCR4-CXCL12 complex systematically dissected by quantitative model-guided mutagenesis
Sci. Signal. 14 Jul 2020:
Vol. 13, Issue 640, eaay5024
DOI: 10.1126/scisignal.aay5024
Bryan S. Stephens, Tony Ngo, Irina Kufareva*, and Tracy M. Handel*
Skaggs School of Pharmacy and Pharmaceutical Sciences, University of California San Diego, La Jolla, CA 92093, USA.
* Corresponding author. Email: ikufareva@health.ucsd.edu (I.K.); thandel@health.ucsd.edu (T.M.H.)
要約
ケモカイン受容体であるCXCR4とそのリガンドであるCXCL12は、発生、がんおよびHIVにおいて顕著な役割をもつことから、数多くの構造および機能研究の対象となっているが、リガンド結合、選択性およびシグナル伝達の決定要因はまだあまり理解されていない。本稿では、われわれの最新の構造モデルを足掛かりとし、変異原性を用いた体系的戦略により、CXCR4-CXCL12複合体の機能解剖学を検討した。鍵となる電荷交換変異原性試験から、受容体およびケモカイン内では反対に荷電した残基間で一対一の相互作用が生じているというエビデンスが得られ、受容体に対するケモカインの配向の予測の正確性を確認でき、さらにリガンドの選択性に関する洞察が得られている。漸進的にN末端の残基を欠失させることで、予想外であった、ケモカインシグナル伝達に対する受容体N末端の寄与が明らかとなった。この所見は、N末端は結合親和性のみに寄与しているという、受容体‐ケモカイン相互作用の本質的特徴に関して長い間考えられてきた「2つの部位(two-site)」仮説に疑問を呈するものである。われわれの結果は、ケモカインのN末端と受容体結合ポケットとの相互作用がシグナル伝達を誘導する主要な要素であるものの、シグナル伝達の大きさは、受容体のN末端がどの程度ケモカインに結合するかに依存することを示唆している。その他のエピトープの体系的な特性解析と合わせることで、われわれはこれらのデータから、CXCL12がどのようにCXCR4と結合し、受容体膜貫通ドメインを介したシグナル伝達を開始させるかという、実験的に一貫した構造モデルを提案することができる。
Citation: B. S. Stephens, T. Ngo, I. Kufareva, T. M. Handel, Functional anatomy of the full-length CXCR4-CXCL12 complex systematically dissected by quantitative model-guided mutagenesis. Sci. Signal. 13, eaay5024 (2020).