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受容体チロシンキナーゼ活性化の速度論がERKシグナル伝達のダイナミクスを規定する

Kinetics of receptor tyrosine kinase activation define ERK signaling dynamics

Research Article

Sci. Signal. 18 Aug 2020:
Vol. 13, Issue 645, eaaz5267
DOI: 10.1126/scisignal.aaz5267

Anatoly Kiyatkin1,2, Iris K. van Alderwerelt van Rosenburgh1,2, Daryl E. Klein1,2, and Mark A. Lemmon1,2,*

  1. 1 Department of Pharmacology, Yale University School of Medicine, New Haven, CT 06520, USA.
  2. 2 Cancer Biology Institute, Yale University, West Haven, CT 06516, USA.

* Corresponding author. Email: mark.lemmon@yale.edu

要約

受容体チロシンキナーゼ(RTK)の活性化に応答した、重要な細胞運命決定は、ERKシグナル伝達の持続時間とダイナミクスに依存する。PC12細胞において、上皮成長因子(EGF)は一過性ERK活性化を誘導し、細胞増殖を引き起こす一方、神経成長因子(NGF)は持続性ERK活性化と細胞分化を促進する。これらの違いは通常、受容体そのものが単純な上流の入力として作用する、Raf-MEK-ERKシグナル伝達ネットワークにおける異なるフィードバック機構を反映すると考えられている。われわれは、EGF受容体(EGFR)およびNGF受容体(TrkA)の下流の一過性シグナル伝達と持続性シグナル伝達とを比較検討した際に、予想されたようなフィードバックの種類の違いを確認することができなかった。代わりに、受容体シグナル伝達がさまざまな方法で調節されたときに、ERKシグナル伝達がRTKのダイナミクスに忠実に従うことが見出された。EGFR活性化の速度論と、その結果としてのERKシグナル伝達のダイナミクスは、受容体の内部移行が薬剤または変異によって阻害されたとき、または二量体化が障害されている可能性があるキメラ受容体を細胞が発現したときに、一過性から持続性に切り替わった。さらに、化学量論量以下のエルロチニブを添加して、EGFRキナーゼ活性化の持続時間を短縮させると、EGFRおよびERKシグナル伝達の両方がより持続するようになった。われわれの結果からは、RTK活性化の速度論が、MAPキナーゼカスケードシグナル伝達ダイナミクスの決定と細胞運命の決定に重要な役割を果たすことが示されており、特定のRTKをさまざまな方法で活性化することによって、シグナル伝達の結果を変更することが可能であるといえる。

Citation: A. Kiyatkin, I. K. van Alderwerelt van Rosenburgh, D. E. Klein, M. A. Lemmon, Kinetics of receptor tyrosine kinase activation define ERK signaling dynamics. Sci. Signal. 13, eaaz5267 (2020).

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2020年8月18日号

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