• ホーム
  • 肝星細胞は肝細胞増殖を誘導するパラクリンニューロトロフィン3シグナル伝達を介して肝恒常性を維持する

肝星細胞は肝細胞増殖を誘導するパラクリンニューロトロフィン3シグナル伝達を介して肝恒常性を維持する

Hepatic stellate cells maintain liver homeostasis through paracrine neurotrophin-3 signaling that induces hepatocyte proliferation

Research Article

SCIENCE SIGNALING
30 May 2023 Vol 16, Issue 787
[DOI: 10.1126/scisignal.adf6696]

Vincent Quoc-Huy Trinh1, †, Ting-Fang Lee1, †, Sara Lemoinne2, Kevin C. Ray1, Maria D. Ybanez2, Takuma Tsuchida2, James K. Carter2, Judith Agudo3, Brian D. Brown4, 5, Kemal M. Akat6, Scott L. Friedman2, Youngmin A. Lee1, *

  1. 1 Department of Surgery, Vanderbilt University Medical Center, Nashville, TN, USA.
  2. 2 Division of Liver Diseases, Icahn School of Medicine at Mount Sinai, New York, NY, USA.
  3. 3 Cancer Immunology and Virology, Dana-Farber Cancer Institute, Harvard Medical School, Boston, MA, USA.
  4. 4 Icahn Genomics Institute, Icahn School of Medicine at Mount Sinai, New York, NY, USA.
  5. 5 Precision Immunology Institute, Icahn School of Medicine at Mount Sinai, New York, NY, USA.
  6. 6 Division of Cardiology, Department of Medicine, Vanderbilt University Medical Center, Nashville, TN, USA.

* Corresponding author. Email: youngmin.lee@vumc.org

† These authors contributed equally to this work

Editor's summary

肝星細胞は、肝損傷によって活性化されると、修復と再生を促進するだけでなく、線維化やがんも駆動する。Trinhらは、未損傷の肝臓で静止状態にある肝星細胞の役割を調べた(SchönbergerとTchorzによるFocusも参照)。遺伝子改変T細胞を用いて成体マウスの肝星細胞を消失させると、肝星細胞の増殖が停止し、肝細胞が通常の寿命を迎えても交換されずに徐々に組織が失われることによって、経時的な肝臓の収縮が引き起こされた。肝星細胞は、in vitroでも肝星細胞枯渇マウスでも受容体TRKBを刺激することによって肝細胞増殖を駆動したニューロトロフィン3(NTF-3)の供給源であった。これらの知見は、肝星細胞が肝恒常性にとって重要であることと、NTF-3が肝細胞マイトジェンであることを示している。—Annalisa M. VanHook

要約

器官の大きさは、別個の細胞集団の調節された増殖によって維持される。マウス肝臓では、サイクリンD1(CCND1)陽性である小葉中間帯の肝細胞が実質を定速で再配置して肝臓の質量を保つ。本稿でわれわれは、肝細胞の増殖が、肝細胞に近接する周皮細胞である肝星細胞(HSC)によって支援される仕組みを調べた。HSC機能について先入観のない特徴づけを可能にするために、T細胞を用いてマウス肝臓内のほぼすべてのHSCを消失させた。正常な肝臓では、HSCの完全消失が最長10週間持続し、肝臓質量とCCND1+肝細胞数が徐々に減少した。われわれは、HSCによって産生され、トロポミオシン受容体キナーゼB(TrkB)の活性化によって小葉中間帯の肝細胞の増殖を誘導する因子として、ニューロトロフィン3(Ntf-3)を同定した。HSC枯渇マウスをNtf-3で処置すると、小葉中間領域のCCND1+肝細胞が回復し、肝臓質量が増加した。これらの知見は、HSCが小葉中間帯の肝細胞のために分裂促進的な微小環境を形成することを確立し、肝細胞増殖因子としてNtf-3を同定するものである。

英文原文をご覧になりたい方はScience Signaling オリジナルサイトをご覧下さい

英語原文を見る

2023年5月30日号

Editors' Choice

コウモリのシグナルスイッチを切る

Focus

肝星細胞:悪評から一転、肝恒常性のメディエータへ

Research Article

ユビキチンリガーゼUhrf2はコレステロール生合成のマスター調節因子であり肝臓の再生に不可欠である

肝星細胞は肝細胞増殖を誘導するパラクリンニューロトロフィン3シグナル伝達を介して肝恒常性を維持する

最新のResearch Article記事

2025年03月04日号

アセチルトランスフェラーゼGCN5はミクログリア細胞でNF-κBサブユニットp65をアセチル化して活性化することによりマウスの神経炎症に寄与する

2025年02月25日号

グルタミン酸作動性のアルゴノート2がマウスにおいて神経血管ユニットの形成を促進する

2025年02月18日号

バソプレシン2型受容体が媒介する持続的Gαsシグナル伝達はリガンド依存性だがエンドサイトーシスとβ-アレスチンには依存しない

2025年02月18日号

持続的な染色体パッセンジャー複合体活性がヒト胚性がん細胞の多能性を保持する

2025年02月11日号

キナーゼLZKの阻害または分解を介するc-MYCおよび機能獲得型p53の標的化によりHNSCC腫瘍の増殖が抑制される