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血管拡張薬は血管内皮細胞においてアニオンチャネルTMEM16Aを活性化して血圧を低下させる
Vasodilators activate the anion channel TMEM16A in endothelial cells to reduce blood pressure
SCIENCE SIGNALING
14 Nov 2023 Vol 16, Issue 811
[DOI: 10.1126/scisignal.adh9399]
Alejandro Mata-Daboin1, Tessa A. C. Garrud1, Carlos Fernandez-Pena1, Dieniffer Peixoto-Neves1, M. Dennis Leo1, Angelica K. Bernardelli1, Purnima Singh2, Kafait U. Malik2, Jonathan H. Jaggar1, *
- 1 Department of Physiology, University of Tennessee Health Science Center, Memphis, TN 38163, USA.
- 2 Department of Pharmacology, University of Tennessee Health Science Center, Memphis, TN 38163, USA.
* Corresponding author. Email: jjaggar@uthsc.edu
Editor's summary
血管の内腔面を覆う内皮細胞のイオンチャネルの活性化は、内皮細胞を取り巻く血管平滑筋細胞の収縮力を変化させることによって血圧を変化させ得る。Mata-Daboinらは、血管内皮細胞のCa2+活性型Cl-チャネルTMEM16Aが動脈の弛緩を誘導することを明らかにした。複数の血管拡張薬が血管内皮細胞のCa2+チャネルTRPV4の活性を促進し、それによって引き起こされたCa2+流入がTMEM16Aを活性化した。これらの作用は血管内皮細胞特異的にTMEM16Aを欠損させたマウスでは消失し、また、このマウスでは対照マウスよりも全身の血圧が高った。このように、血管内皮細胞においてTMEM16Aは血管拡張を誘導し、平滑筋細胞におけるTMEM16Aの血管収縮作用とは対照的であった(TammaroによるFocusを参照)。—Wei Wong
要約
全身の血圧は、小動脈および細動脈の直径によって定量される総末梢血管抵抗によって急性的に調節され、小動脈および細動脈の収縮力は血管の内腔面を覆う内皮細胞によって調節されている。われわれは、血管内皮細胞の塩素イオン(Cl−)チャネルTMEM16Aの生理学的機能を調べた。TMEM16Aチャネルは、対照(TMEM16Afl/fl)マウス由来の血管内皮細胞でカルシウム(Ca2+)活性化Cl−流を生成したが、タモキシフェン誘導型の血管内皮細胞特異的TMEM16Aノックアウト(TMEM16A ecKO)マウス由来の血管内皮細胞ではCa2+活性化Cl−流は存在しなかった。血管内皮細胞のTMEM16A流は、ムスカリン受容体刺激薬アセチルコリンと、血管内皮細胞の単一分子局在化イメージングによる評価でTMEM16Aとナノスケールで近接して局在していたCa2+チャネルTRPV4の刺激薬によって活性化された。アセチルコリンは、TMEM16AおよびTRPV4の表面クラスターのナノスケール特性と共局在性を変化させることなく、表面TRPV4チャネルを介したCa2+流入を活性化させることによって、TMEM16A流を促進した。加圧された動脈では、アセチルコリン;TRPV4チャネル刺激によって誘導された血管内皮細胞のTMEM16Aチャネルの活性化、または、もう一つの血管拡張因子である腔内ATPによって過分極と拡張が引き起こされた。さらに、血管内皮細胞のTMEM16Aチャネルを欠損させると、意識のあるマウスの全身の血圧が上昇した。これらのデータは、血管拡張薬がTRPV4チャネルを刺激し、それによってCa2+に依存して血管内皮細胞の近隣のTMEM16Aチャネルが活性化されて動脈の過分極、血管拡張、血圧低下が引き起こされることを示している。このようにTMEM16Aは、動脈の収縮力と血圧を調節する血管内皮細胞のアニオンチャネルである。