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Wntシグナル伝達は肝臓での代謝を調節する

Wnt Signaling Regulates Hepatic Metabolism

Research Article

Sci. Signal., 1 February 2011
Vol. 4, Issue 158, p. ra6
[DOI: 10.1126/scisignal.2001249]

Hongjun Liu1*, Maria M. Fergusson1, J. Julie Wu1, Ilsa I. Rovira1, Jie Liu1, Oksana Gavrilova2, Teng Lu1,3, Jianjun Bao1, Donghe Han4, Michael N. Sack1, and Toren Finkel1†

1 Center for Molecular Medicine, National Heart, Lung, and Blood Institute, National Institutes of Health, Bethesda, MD 20892, USA.
2 Mouse Metabolism Core, National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Disease, National Institutes of Health, Bethesda, MD 20892, USA.
3 Emory University School of Medicine, Atlanta, GA 30322, USA.
4 Department of Microbiology and Molecular Genetics, University of Pittsburgh School of Medicine, Pittsburgh, PA 15219, USA.

* Present address: Department of Microbiology and Molecular Genetics, University of Pittsburgh School of Medicine, Pittsburgh, PA 15219, USA.

† To whom correspondence should be addressed. E-mail: finkelt@nih.gov

要約:Wnt経路の役割は、胚発生、分化、および幹細胞生物学において広く解析されているが、哺乳類の代謝においては解析されていない。今回われわれは、in vivoの機能獲得モデルおよび機能喪失モデルを用いて、肝臓代謝におけるWntシグナル伝達の重要な役割を実証した。特に、標準的なWntシグナル伝達の下流メディエーターであるβ-カテニンは、血清グルコース濃度を変化させ、肝臓のグルコース産生を調節した。β-カテニンはまた、肝臓のインスリンシグナル伝達を調節した。さらに、β-カテニンは、絶食条件下のマウスの肝臓において転写因子FoxO1と相互作用した。FoxO1のβ-カテニンとの相互作用は、肝臓の糖新生における2つの律速酵素であるグルコース-6-ホスファターゼ(G6Pase)とホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(PEPCK)をコードする遺伝子の転写活性化を調節した。その上、絶食によって、異なるWntアイソフォームをコードするmRNAの肝臓での発現が誘導された。さらに、栄養欠乏は、転写アクチベーターのT細胞因子のメンバーではなく、FoxOファミリーのメンバーとβ-カテニンの会合を促進するようであった。特筆すべきことに、食餌誘発性肥満モデルでは、β-カテニンを肝臓特異的に欠失させると、全体的な代謝の恒常性が改善した。これらの観察結果は、Wntシグナル伝達を肝臓代謝の調節と関連付けるものであり、Wntシグナル伝達が他の組織の代謝調節においても同様の役割を果たす可能性を提起する。

H. Liu, M. M. Fergusson, J. J. Wu, I. I. Rovira, J. Liu, O. Gavrilova, T. Lu, J. Bao, D. Han, M. N. Sack, T. Finkel, Wnt Signaling Regulates Hepatic Metabolism. Sci. Signal. 4, ra6 (2011).

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2011年2月1日号

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