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マトリックスプロテオグリカンのデコリンによるシグナル伝達はPDCD4およびmicroRNA-21を介して炎症およびがんを制御する

Signaling by the Matrix Proteoglycan Decorin Controls Inflammation and Cancer Through PDCD4 and MicroRNA-21

Research Article

Sci. Signal., 15 November 2011
Vol. 4, Issue 199, p. ra75
[DOI: 10.1126/scisignal.2001868]

Rosetta Merline1, Kristin Moreth1, Janet Beckmann1, Madalina V. Nastase1, Jinyang Zeng-Brouwers1, José Guilherme Tralhão2, Patricia Lemarchand3, Josef Pfeilschifter1, Roland M. Schaefer4, Renato V. Iozzo5*, and Liliana Schaefer1*†

1 Pharmazentrum Frankfurt, Institut für Allgemeine Pharmakologie und Toxikologie, Klinikum der Goethe-Universität Frankfurt am Main, Theodor-Stern-Kai 7, 60590 Frankfurt am Main, Germany.
2 Department of Surgery, Surgery 3, Coimbra University Hospital, 3000-075 Coimbra, Portugal.
3 Inserm, UMR915, Université de Nantes, CHU de Nantes, l'Institut du thorax, 44000 Nantes, France.
4 Department of Medicine D, University Hospital of Muenster, 48149 Muenster, Germany.
5 Department of Pathology, Anatomy and Cell Biology, and the Cancer Cell Biology and Signaling Program, Kimmel Cancer Center, Thomas Jefferson University, Philadelphia, PA 19107 USA.

* These authors contributed equally to this work.

† To whom correspondence should be addressed. E-mail: schaefer@med.uni-frankfurt.de

要約:免疫応答と炎症を腫瘍発生と結び付ける機構についてはよくわかっていない。本稿でわれわれは、可溶性細胞外マトリックスプロテオグリカンであるデコリンが、2つの機構によってPDCD4(programmed cell death 4)とmiR-21(microRNA-21)を介して炎症と腫瘍増殖を制御することを示す。まず、デコリンはマクロファージにおいてToll様受容体2および4の内因性リガンドとして作用し、PDCD4などの炎症性分子の産生を刺激した。次に、デコリンはトランスフォーミング増殖因子β1の活性とPDCD4の翻訳阻害因子である発がん性miR-21の存在量を減少させることによって、PDCD4の翻訳抑制を妨げた。さらに、PDCD4存在量の増大によって、抗炎症性サイトカインであるインターロイキン10の放出が低下し、その結果、サイトカインの炎症誘発性が亢進した。この経路は、今回敗血症に関して示された病原体媒介炎症でも、確立された腫瘍異種移植片の増殖遅延として示された無菌炎症でも作動する。Decorinは敗血症性炎症によって惹起される初期応答遺伝子であり、デコリンのタンパク質濃度が敗血症の患者とマウスの血漿中で上昇していた。がんにおいて、デコリンは抗炎症性分子の存在量を減少させ、炎症誘発性分子の存在量を増大させることによって、免疫応答を腫瘍増殖が抑制される炎症誘発状態に移行させた。このように、デコリンのシグナル伝達は、炎症誘発性のPDCD4を刺激し、miR-21の存在量を減少させることによって、敗血症における炎症活性を亢進させ、腫瘍増殖を抑制する。

R. Merline, K. Moreth, J. Beckmann, M. V. Nastase, J. Zeng-Brouwers, J. G. Tralhão, P. Lemarchand, J. Pfeilschifter, R. M. Schaefer, R. V. Iozzo, L. Schaefer, Signaling by the Matrix Proteoglycan Decorin Controls Inflammation and Cancer Through PDCD4 and MicroRNA-21. Sci. Signal. 4, ra75 (2011).

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2011年11月15日号

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