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遺伝学とリン酸化プロテオミクスによるシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)のアブシジン酸シグナル伝達経路におけるタンパク質リン酸化ネットワークの解明

Genetics and Phosphoproteomics Reveal a Protein Phosphorylation Network in the Abscisic Acid Signaling Pathway in Arabidopsis thaliana

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Sci. Signal., 9 April 2013
Vol. 6, Issue 270, p. rs8
[DOI: 10.1126/scisignal.2003509]

Taishi Umezawa1*, Naoyuki Sugiyama2,3, Fuminori Takahashi4, Jeffrey C. Anderson5, Yasushi Ishihama2,3, Scott C. Peck5, and Kazuo Shinozaki4*

1 Faculty of Agriculture and Graduate School of Bio-Applications and Systems Engineering, Tokyo University of Agriculture and Technology, 2-24-16 Naka-cho, Koganei, Tokyo 184-8588, Japan.
2 Institute for Advanced Biosciences, Keio University, Tsuruoka, Yamagata 997-0017, Japan.
3 Graduate School of Pharmaceutical Sciences, Kyoto University, Sakyo-ku, Kyoto 606-8501, Japan.
4 Gene Discovery Research Group, RIKEN Center for Sustainable Resource Science, 3-1-1 Kouyadai, Tsukuba, Ibaraki 305-0074, Japan.
5 Department of Biochemistry and Bond Life Sciences Center, University of Missouri, Columbia, MO 65211, USA.

* Corresponding author. E-mail: taishi@cc.tuat.ac.jp (T.U.); kazuo.shinozaki@riken.jp (K.S.)

要約

アブシジン酸(ABA)は、種子の発芽や乾燥への応答など多様な植物プロセスを制御する植物ホルモンである。シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)では、Snf1関連プロテインキナーゼ2(SNF1-related protein kinase 2:SnRK2)ファミリーのプロテインキナーゼが、下流に存在する基質のリン酸化を介して、ABAまたは乾燥誘導性のシグナルを伝達していると考えられている。われわれは質量分析を行い、ABAで処理した、または乾燥ストレスを与えた野生型シロイヌナズナ(Arabidopsis)ではリン酸化されているが、全3種のSnRK2ファミリーを欠損した突然変異体(srk2dei)ではリン酸化されていないタンパク質を同定した。srk2dei植物においてリン酸化が異なるペプチドの数は、乾燥されたものよりもABAで処理された植物で多く、このことは、SnRK2が乾燥よりもABAシグナル伝達に主に関わっていることを示唆している。われわれは、ABAで処理された野生型で差次的にリン酸化されるがsrk2dei植物ではリン酸化されていない、35のペプチドを同定した。SnRK2で制御されるリン酸化タンパク質候補の生化学的および遺伝学的研究から、SnRK2は、マイトジェン活性化プロテインキナーゼであるAtMPK1およびAtMPK2のABA誘導性の活性化を促進したことが明らかとなった。すなわちSnRK2は、bZIP転写因子であるAREB1(ABA-応答性エレメント結合タンパク質1)のSer45のリン酸化を媒介し、ABA応答性の遺伝子発現を促進していた。また、これまで知られていなかったタンパク質SnRK2-基質1(SNS1)が、ABA活性化SnRK2によりin vivoでリン酸化されていた。逆遺伝学的解析から、シロイヌナズナ(Arabidopsis)においてSNS1はABAへの応答を抑制することが明らかとなった。以上のように、われわれは遺伝学をリン酸化プロテオミクスと組み合わせることで、ABA応答のタンパク質リン酸化ネットワークにおける複数の構成要素を同定した。

T. Umezawa, N. Sugiyama, F. Takahashi, J. C. Anderson, Y. Ishihama, S. C. Peck, K. Shinozaki, Genetics and Phosphoproteomics Reveal a Protein Phosphorylation Network in the Abscisic Acid Signaling Pathway in Arabidopsis thaliana. Sci. Signal. 6, rs8 (2013).

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