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生理学
心臓の再生スイッチの探索

Physiology
Finding the Heart’s Regenerative Switch

Editor's Choice

Sci. Signal., 6 May 2014
Vol. 7, Issue 324, p. ec119
[DOI: 10.1126/scisignal.2005448]

Leslie K. Ferrarelli

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

B. N. Puente, W. Kimura, S. A. Muralidhar, J. Moon, J. F. Amatruda, K. L. Phelps, D. Grinsfelder, B. A. Rothermel, R. Chen, J. A. Garcia, C. X. Santos, S. Thet, E. Mori, M. T. Kinter, P. M. Rindler, S. Zacchigna, S. Mukherjee, D. J. Chen, A. I. Mahmoud, M. Giacca, P. S. Rabinovitch, A. Aroumougame, A. M. Shah, L. I. Szweda, H. A. Sadek. The oxygen-rich postnatal environment induces cardiomyocyte cell-cycle arrest through DNA damage response. Cell 157, 565–579 (2014). [PubMed]

ある種の脊椎動物の心臓には顕著な再生能力がある一方で、哺乳類の心臓は、出生後の最初の一週間のみ再生可能である。Puenteらは、酸素を豊富に含む出生後環境への移行によって、心筋細胞において増殖を停止させるDNA損傷が誘発されることを見出した。出生後7日(P7)のマウスに由来する心臓のミトコンドリアでは、DNA量、クリステの密度、好気性呼吸酵素量(すべてミトコンドリア機能の測定値)が、新生仔マウス由来の心臓のミトコンドリアに比べて増加していた。好気性呼吸は活性酸素種(ROS)の生成を介して酸化ストレスを生むが、P7マウス由来の心臓では新生仔由来の心臓よりもROS生成が増加していた。酸化的DNA損傷である8-オキソ-7,8-ジヒドログアニン(8-oxoG)の核染色、8-oxoGフォーカスの数、ATMキナーゼなどのDNA損傷応答(DDR)タンパク質の存在量または活性化もP7マウスの心臓では新生仔の心臓に比べて増加しており、ROSに誘発されるDNA損傷が出生後に増加することを示している。出生の直前から高酸素環境に曝露されると、出生後の酸化的DNA損傷とDDRタンパク質活性化の増加は加速され、心筋細胞の増殖は低下した。軽度の高酸素環境で生まれたマウスでは、酸化的DNA損傷とDDRタンパク質活性化は減少し、心臓の重量と心筋細胞の増殖は増加するが、心筋細胞の大きさは減少する。さらに、過酸化水素を注入された心臓またはROS誘導物質を注入されたマウスに由来する心筋細胞では、対照細胞に比べて、DNA損傷とDDR活性化が増加し、有糸分裂が減少し、細胞が大きくなっており、ROSが心筋細胞の増殖を阻害することを示唆した。ROSスカベンジャー(NAC)で処置されたマウスまたはミトコンドリア特異的カタラーゼを心筋細胞のみで発現するマウスでは、ROS生成、酸化的DNA損傷、DDRの活性化、心筋細胞の大きさは減少し、心筋細胞の増殖は亢進された。さらに、出生時からNAC注入を受けたマウスは、受けていないマウスに比べて、出生後21日の虚血傷害後に心筋細胞の増殖と心臓機能が増加し、線維性瘢痕形成が減少した。この知見は、新生仔の心臓の主要な予防機序が細胞増殖を代償としてエネルギー代謝を促進する機序であることを示すものであり、成体の心臓において再生を誘導するための治療戦略の可能性を示している。

L. K. Ferrarelli, Finding the Heart’s Regenerative Switch. Sci. Signal. 7, ec119 (2014).

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2014年5月6日号

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