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神経科学
アミロイドからATF4まで、軸索がニューロン消失を介する

Neuroscience
From Amyloid to ATF4, Axons Mediate Neuron Loss

Editor's Choice

Sci. Signal., 16 September 2014
Vol. 7, Issue 343, p. ec250
DOI: 10.1126/scisignal.2005898

Leslie K. Ferrarelli

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

J. Baleriola, C. A. Walker, Y. Y. Jean, J. F. Crary, C. M. Troy, P. L. Nagy, U. Hengst, Axonally synthesized ATF4 transmits a neurodegenerative signal across brain regions. Cell 158, 1159-1172 (2014). [PubMed]

アルツハイマー病はβ-アミロイド(Aβ)斑を伴う神経変性疾患である。Baleriolaらは、軸索と細胞体を異なる培地に曝露させることができる3区画チャンバーで培養したラット胚の海馬ニューロンを用い、Aβ誘導性の軸索投射の病的変化がニューロンの細胞死を引き起こす機構を検討した。軸索側チャンバーへのオリゴマーAβ1-42の添加は、特に軸索中の全般的なタンパク質合成の亢進に依存する、ニューロンのアポトーシスを誘発した。Aβ1-42は、細胞体ではなく軸索中において特定の一連のmRNAの発現を刺激し、特に刺激したものは活性化転写因子4(ATF4)の転写であった。ATF4は、細胞ストレスにより誘導される経路である小胞体ストレス応答(UPR)の一部として、記憶関連遺伝子の転写を抑制し、アポトーシス関連遺伝子の発現を活性化する。ATF4の翻訳は、翻訳開始因子eIF2αを介する。Aβ1-42を軸索に曝露させることで、まず、軸索中のeIF2αの存在量が増加し、その後軸索中のATF4が増加し、最後に細胞体中のATF4の存在量が増加するという、経時的な応答が生じる。逆行輸送の阻害は細胞体におけるAβ1-42への応答を遮断したが、軸索中のATF4の増加は遮断しなかった。さらに、軸索をAβ1-42で処理したとき、逆行輸送を遮断することで、細胞体内のATF4を介したCHOP(UPRメディエーター)の転写誘導をAβ1-42が刺激することも阻止し、ニューロン死を阻止していた。ATF4のノックダウンによっても、Aβ1-42誘導性のニューロン死が妨げられた。マウスの海馬内へのAβ1-42の注射も、海馬に軸索を投射している前脳基底核コリン作動性ニューロン(BFCN)の細胞死を誘導した。Aβ1-42が注射された海馬のBFCNの軸索では、Atf4mRNAの存在量が増加していた。また、BFCNの軸索と細胞体でATF4タンパク質が増加していた。ATF4 siRNAを同時に注射したとき、Aβ1-42誘導性のBFCNの細胞死を抑制したが、海馬内の細胞死を増悪させた。アルツハイマー病患者の死後脳組織では、Aβ斑の近くにATF4陽性軸索が認められた。このように、軸索から細胞体へのATF4輸送を遮断することで、アルツハイマー病に伴うニューロン消失を防ぐことができるかもしれない。

L.-K. Ferrarelli, From Amyloid to ATF4, Axons Mediate Neuron Loss. Sci. Signal. 7, ec250 (2014).

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2014年9月16日号

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