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がん
転移性乳がんの治療の望み

Cancer
Therapeutic Hope for Metastatic Breast Cancer

Editor's Choice

Sci. Signal., 30 September 2014
Vol. 7, Issue 345, p. ec264
DOI: 10.1126/scisignal.2005962

Leslie K. Ferrarelli

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

X. Wu, W. Zhang, J. Font-Burgada, T. Palmer, A. S. Hamil, S. K. Biswas, M. Poidinger, N. Borcherding, Q. Xie, L. G. Ellies, N. K. Lytle, L.-W. Wu, R. G. Fox, J. Yang, S. F. Dowdy, T. Reya, M. Karin, Ubiquitin-conjugating enzyme Ubc13 controls breast cancer metastasis through a TAK1-p38 MAP kinase cascade. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 111, 13870-13875 (2014). [Abstract] [Full text]

要約 乳がんは、女性によくみられる侵襲性の高いがんである。死亡の原因は転移性疾患であることが多いが、転移治療の選択肢は限られている。トランスフォーミング増殖因子β(TGF-β)およびマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)経路によって媒介されるシグナル伝達は、一般的に、転移進行と関連しており、転移性乳がんでは、ユビキチン結合酵素Ubc13の存在量が増加している。Wuらは、乳がんにおけるUbc13の役割とTGF-βおよびMAPK経路との関連性を探索した。複数の異種移植または同種移植モデルにおいて、マウス乳腺脂肪体に細胞を注入する前にUbc13をノックダウンすると、原発腫瘍の成長に影響はみられなかったが、肺転移の大きさと数が阻害または軽減された。Ubc13 mRNAに対する誘導性蛍光標識shRNAレンチウイルスをトランスフェクトした乳がん細胞の生物発光イメージングから、Ubc13は肺における転移成長に必要であるが、二次腫瘍部位の血管外遊走または定着には必要でないことが示された。対照shRNAをトランスフェクトした転移細胞と比較して、Ubc13標的shRNAをトランスフェクトした細胞により形成された肺結節は、Ki-67(増殖マーカー)の存在量が低下しており、切断型カスパーゼ3(アポトーシスのマーカー)の存在量が増加していた。TGF-βシグナル伝達は、いくつかの経路によって媒介され、それらの一部はSMADSとして知られる転写制御因子によって媒介される。TGF-βと培養した細胞ならびにLM2異種移植およびLM2異種移植に由来する肺転移では、Ubc13のノックダウンはSMADのリン酸化(活性化の指標)に影響を与えなかったが、p38α(MAPK14)およびTGF-β活性化キナーゼ1(TAK1)のリン酸化を阻害した。尾静脈への注入前に細胞のp38αまたはTAK1をサイレンシングすると、形成された肺結節の数が減少し、循環血中にp38αの薬理学的阻害薬を注入すると、定着した転移を有するマウスにおいて肺結節数が減少した。TAK1下流でp38αの活性化を媒介する恒常的活性化型MAPKキナーゼ3(MKK3)の過剰発現は、原発腫瘍の大きさに影響を与えることなく、Ubc13欠損細胞の肺転移をもたらした。ヒト乳がん細胞株におけるマイクロアレイ分析から、これまでに報告された転移遺伝子シグネチャーが、MKK3とp38αを通してUbc13によって促進されることが示され、ヒト組織のバイオインフォマティクス解析から、Ubc13またはp38αの増加と患者の生存不良が関連付けられた。この結果から、Ubc13が、SMADとは独立したTGF-βシグナル伝達を通して転移疾患を促進すること、そして、p38α阻害薬は転移患者に対する治療選択肢かもしれないことが示唆される。

L. K. Ferrarelli, Therapeutic Hope for Metastatic Breast Cancer. Sci. Signal. 7, ec264 (2014).

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2014年9月30日号

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がん
転移性乳がんの治療の望み

Editorial Guides

特集:生理機能と疾患におけるTGF-βと間葉転換

Research Article

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