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微生物学
バイオフィルムの心躍る時期

MICROBIOLOGY
Exciting times for biofilms

Editor's Choice

Sci. Signal. 10 Nov 2015:
Vol. 8, Issue 402, pp. ec328
DOI: 10.1126/scisignal.aad8158

Annalisa M. VanHook

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

A. Prindle, J. Liu, M. Asally, S. Ly, J. Garcia-Ojalvo, G. M. Süel, Ion channels enable electrical communication in bacterial communities. Nature 527, 59-63 (2015). [PubMed]

S. D. Beagle, S. W. Lockless, Electrical signalling goes bacterial. Nature 527, 44-45 (2015). [PubMed]

枯草菌(Bacillus subtilis)バイオフィルムの異なる領域は、周期的なサイクルで増殖する。バイオフィルム表層の細胞は、増殖するにつれ、多くのグルタミン酸を消費するため、バイオフィルム内部の細胞はグルタミン酸が欠乏する。グルタミン酸がなければ、内部細胞が産生するアンモニウムイオンが減少する。内部細胞からのアンモニウムイオンがなければ、表層細胞は分裂とグルタミン酸の消費を停止する。内部細胞がグルタミン酸を利用できるようになれば、細胞は増殖とアンモニウムイオンの産生を再開し、表層細胞の増殖停止が解除され、周期が新たに始まる。膜電位は、グルタミンの取り込みとアンモニウムイオンの保持を管理する。マイクロ流体デバイスおよび電位感受性蛍光染色を用いて、Prindleらは、B. subtilisバイオフィルム中の膜電位振動が代謝振動と相関していることを実証した。電位固定実験から、膜電位のこれらの変化がバイオフィルム内の細胞からのカリウムイオン(K+)流出と相関しており、バイオフィルム形成に必要とされるタンパク質であるK+チャネルYugOの存在に依存していることが示された。増殖培地からグルタミン酸を除去すると、野生型細胞のK+放出がもたらされたが、yugO変異体ではそうではなかった。YugOはバイオフィルム中のK+波伝播にも必要とされた。数学的モデリングから、そのようなK+波は、マイクロ流体実験で特徴付けられた膜電位振動を促進しうることが明らかになった。これらの結果から、細菌がバイオフィルム中に伝わる電気的シグナルを生み出し得ることが実証される。また、電気的シグナルがバイオフィルム中の代謝を調節するかもしれないことが示唆される。BeagleおよびLocklessは、電気的シグナル伝達は、細菌の他の社会的行動も管理する可能性があり、細菌コミュニティーと真核生物宿主間のコミュニケーションさえ媒介するかもしれないと述べている。

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2015年11月10日号

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微生物学
バイオフィルムの心躍る時期

Research Article

フィラミンAはコアクチベーターMKL1と相互作用し転写因子SRFの活性および細胞遊走を促進する

骨格筋でのmTORC1活性化がFGF21を介して全身の代謝を調節する

シグナル伝達と機能的能力の決定においてサイトカイン受容体の結合パラメータが担う指令的役割

タンパク質アルギニンメチルトランスフェラーゼPRMT5はD2様ドパミン受容体シグナル伝達を促進する

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