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骨格筋でのmTORC1活性化がFGF21を介して全身の代謝を調節する
Activation of mTORC1 in skeletal muscle regulates whole-body metabolism through FGF21
Sci. Signal. 10 Nov 2015:
Vol. 8, Issue 402, pp. ra113
DOI: 10.1126/scisignal.aab3715
Maitea Guridi1, Lionel A. Tintignac1,2, Shuo Lin1, Barbara Kupr1, Perrine Castets1,3, and Markus A. Rüegg1,*
1 Biozentrum, University of Basel, CH-4056 Basel, Switzerland.
2 INRA, UMR866, Université Montpellier 1, Université Montpellier 2, 34090 Montpellier, France.
3 Neuromuscular Research Center, Departments of Neurology and Biomedicine, Pharmazentrum, Basel University Hospital, 4056 Basel, Switzerland.
* Corresponding author. E-mail: markus-a.ruegg@unibas.ch
要約 骨格筋は、全身除脂肪量の40%を占める最大の器官であり、さまざまな形で全身の代謝に影響を及ぼす。われわれは、TSC1(結節性硬化症複合体1)を骨格筋特異的に欠失したTSCmKOマウスを用いて、この過程に関与するシグナル伝達経路を検討した。この欠損により、哺乳類ラパマイシン標的タンパク質複合体1(mTORC1)が恒常的に活性化され、タンパク質合成の促進によって細胞増殖が増強される。TSCmKOマウスは痩せており、インスリン感受性の亢進と、白色・褐色脂肪組織および肝臓において脂肪酸酸化の増加を示す変化を伴った。これらの差異は、グルコースの取り込みと脂肪酸酸化を刺激するホルモンである、線維芽細胞増殖因子21(FGF21)の血漿濃度の上昇に起因した。TSCmKOマウスの骨格筋は、mTORC1誘発性の小胞体(ER)ストレスと、PERK(プロテインキナーゼRNA様ERキナーゼ)、eIF2α(真核生物翻訳開始因子2α)、ATF4(活性化転写因子4)が関与する経路の活性化により、FGF21を放出した。ERストレスを軽減する化学シャペロンをTSCmKOマウスに投与すると、筋肉でのFGF21産生が低下し、体重が増加した。さらに、FGF21に対する機能阻害抗体を注射すると、マウスの代謝表現型が大幅に正常化した。このように、骨格筋におけるmTORC1シグナル伝達の持続的活性化が、FGF21の誘導を介して全身の代謝を調節し、長期的には重度のリポジストロフィーを引き起こした。
Citation: M. Guridi, L. A. Tintignac, S. Lin, B. Kupr, P. Castets, M. A. Rüegg, Activation of mTORC1 in skeletal muscle regulates whole-body metabolism through FGF21. Sci. Signal. 8, ra113 (2015).