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神経科学
TNF-αによる認知障害

NEUROSCIENCE
Impairing cognition with TNF-α

Editor's Choice

Sci. Signal. 05 Jan 2016:
Vol. 9, Issue 409, pp. ec1
DOI: 10.1126/scisignal.aaf1771

Nancy R. Gough

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

S. Habbas, M. Santello, D. Becker, H. Stubbe, G. Zappia, N. Liaudet, F. R. Klaus, G. Kollias, A. Fontana, C. R. Pryce, T. Suter, A. Volterra, Neuroinflammatory TNFα impairs memory via astrocyte signaling. Cell 163, 1730-1741 (2015). [PubMed]

L. A. Osso, J. R. Chan, Astrocytes underlie neuroinflammatory memory impairment. Cell 163, 1574-1576 (2015). [PubMed]

感染症と、多発性硬化症などの神経変性疾患は、認知障害と関連があり、いずれも腫瘍壊死因子α(TNF-α)などの炎症性サイトカインの脳内での増加と関連する。記憶と認知には海馬のシナプス可塑性が重要であるため、Habbasらは、マウス海馬の切片標本を用いて、海馬のグルタミン酸作動性シナプスに対するTNF-αの作用を調べた。600 pMのTNF-αで処理すると、微小シナプス後電流(mEPSC)の周波数で測定されるシナプスの活性は高まったが、低濃度(60 pM)処理では活性は高まらなかった。600 pMのTNF-αによって誘発されるmEPSC周波数の上昇は、NMDA型グルタミン酸受容体拮抗薬とプレインキュベーションした野生型海馬切片や、TNF受容体欠損マウス(tnfr1-/-)由来の海馬切片では認められなかった。tnfr1-/-マウスのアストロサイトにTNFR1を選択的に再導入すると、海馬切片に対するTNF-αのシナプス可塑性誘発作用が回復したことから、TNF-αがアストロサイトで作用し、その後、アストロサイトからニューロンへシグナルが伝達されてシナプス前活性が高まったことが示唆される。AT-EAEマウスは多発性硬化症モデルであり、対照マウスに比べると恐怖の学習と記憶に障害がみられ、これらの障害は海馬の関連領域におけるTNF-αの増加、ミクログリア・白血球の蓄積と相関した。AT-EAEマウス由来の海馬切片では、mEPSC周波数の上昇がみられ、この上昇はNDMA受容体拮抗薬で処理すると阻害された。tnfr1-/-対照マウスとアストロサイトにTNFRを選択的に再導入したマウスを比較したAT-EAEモデルにおける恐怖記憶の解析では、TNF-αに対するアストロサイトの応答が恐怖の条件付けと記憶に寄与することが確認された。炎症反応はニューロンの損傷修復に必要であるが、ニューロンの長期的な機能障害にも寄与していることから、今回の研究は、神経変性疾患において、炎症反応の有益な作用(OssoとChan参照)を阻害することなく、認知障害などの病理学的作用を選択的に標的することが可能であるかもしれないことを示唆している。

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