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新たなつながり:脂肪肝と闘うための新たな標的

New connections: New targets for fighting hepatic steatosis

Editor's Choice

Sci. Signal. 21 Feb 2017:
Vol. 10, Issue 467,
DOI: 10.1126/scisignal.aam9988

Wei Wong

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

J. A. Viscarra, Y. Wang, I.-H. Hong, H. S. Sul, Transcriptional activation of lipogenesis by insulin requires phosphorylation of MED17 by CK2. Sci. Signal. 10, eaai8596 (2017).
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F. Xiao, J. Deng, Y. Guo, Y. Niu, F. Yuan, J. Yu, S. Chen, F. Guo, BTG1 ameliorates liver steatosis by decreasing stearoyl-CoA desaturase 1 (SCD1) abundance and altering hepatic lipid metabolism. Sci. Signal. 9, ra50 (2016).doi:10.1126/scisignal.aad8581
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K. Shimizu, H. Fukushima, K. Ogura, E. C. Lien, N. T. Nihira, J. Zhang, B. J. North, A. Guo, K. Nagashima, T.Nakagawa, S. Hoshikawa, A. Watahiki, K. Okabe, A. Yamada, A. Toker, J. M. Asara, S. Fukumoto, K. I.Nakayama, K. Nakayama, H. Inuzuka, W. Wei, The SCFβ-TRCP E3 ubiquitin ligase complex targets Lipin1 for ubiquitination and degradation to promote hepatic lipogenesis. Sci. Signal. 10, eaah4117 (2017).
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de novo脂肪合成を調節するシグナル伝達経路に関する知見が、脂肪肝の新たな治療につながる可能性がある。

要約

非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は、肝臓への過剰な脂質の蓄積を特徴とし、肥満などのメタボリックシンドロームに関連する、よくある肝疾患である。NAFLDには単純性脂肪肝と非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)があり、NASHは肝線維化、肝硬変、肝機能障害を引き起こし、肝細胞がんに至ることもある。脂肪肝に寄与する過程であるde novo脂肪合成では、脂肪合成酵素をコードする遺伝子が、USF1やSREBPファミリーなどの転写因子によって誘導される必要がある。インスリンで刺激した肝細胞または摂食マウスにおいて、Viscarraらは、転写コアクチベーターMED17のリン酸化が増加し、USF1が脂肪合成酵素をコードする遺伝子を活性化できるようになっていることを見出した。キナーゼCK2によって仲介されるこのリン酸化事象は、MED17が、絶食によって活性化されるキナーゼp38によるリン酸化を、それまでに受けていなかった場合にのみ発生した。CK2のノックダウンまたはCK2阻害剤の投与により、マウスの肝臓における脂肪合成とトリグリセリド含量が減少した。したがって、薬理学的なCK2阻害を、脂肪肝の治療戦略として開発することが可能と考えられる。
関連する研究において、XiaoらとShimizuらは、de novo脂肪合成の阻害またはこの過程に対する阻害剤の調節を検討した。肝細胞がんでは転写補因子BTG1が減少していることに注目して、Xiaoらは、肥満の遺伝的モデルであるdb/dbマウスでも、BTG1の存在量が低下していることを示した。BTG1は、脂肪酸合成に関与する酵素であるステアロイル補酵素A(CoA)不飽和酵素1(SCD1)をコードする遺伝子の転写を抑制した。BTG1を肝臓に過剰発現させると、db/dbマウスでは脂肪肝が抑制され、野生型マウスは食餌誘発性脂肪肝から保護された。Lipin1はSREBPファミリーの転写因子の活性を抑制するが、Shimizuらは、Lipin1がキナーゼ複合体mTORC1およびCKIによるリン酸化後に、SCFβ-TRCP E3ユビキチンリガーゼ複合体によって分解されることを明らかにした。β-TRCP1をノックダウンした肝細胞では、対照肝細胞と比べて、Lipin1が増加し、SREBP標的遺伝子の発現が低下し、トリグリセリド含量が減少した。さらに、肝臓にBTG1を過剰発現させたマウスと同様に、β-TRCP1を遺伝的に欠損させたマウスは、食餌誘発性脂肪肝から保護された。これらの結果を総合すると、de novo脂肪合成を調節するシグナル伝達経路の解明が、脂肪肝に対する新たな治療につながる可能性があることが示唆される。

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2017年2月21日号

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