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新たなつながり:単純なシグナル伝達系の複雑性

New connections: The complexity of simple signaling systems

Editor's Choice

Sci. Signal. 10 Apr 2018:
Vol. 11, Issue 525, eaat7921
DOI: 10.1126/scisignal.aat7921

Annalisa M. VanHook

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

G. S. A. Wright, A. Saeki, T. Hikima, Y. Nishizono, T. Hisano, M. Kamaya, K. Nukina, H. Nishitani, H. Nakamura, M.Yamamoto, S. V. Antonyuk, S. S. Hasnain, Y. Shiro, H. Sawai, Architecture of the complete oxygen-sensing FixL-FixJ two-component signal transduction system. Sci Signal. 11, eaaq0825 (2018). Abstract/FREE Full TextGoogle Scholar

J. Choi, E. A. Groisman, Activation of master virulence regulator PhoP in acidic pH requires theSalmonella-specific protein UgtL. Sci. Signal. 10, eaan6284 (2017). Abstract/FREE Full TextGoogle Scholar

K. R. Guckes, E. J. Breland, E. W. Zhang, S. C. Hanks, N. K. Gill, H. M. S. Algood, J. E. Schmitz, C. W. Stratton, M.Hadjifrangiskou, Signaling by two-component system noncognate partners promotes intrinsic tolerance to polymyxin B in uropathogenic Escherichia coli. Sci. Signal. 10, eaag1775 (2017). Abstract/FREE Full TextGoogle Scholar

細菌の2成分系は効率的かつ万能であるが単純とは限らない。

要約

2成分系(TCS)は、植物と真菌にも存在するが、細菌できわめて広範にみられ、盛んに研究されている。このシグナル伝達系は、主に特定の環境条件に応答して遺伝子発現を変化させるために用いられ、細菌が該当する宿主内に存在するときに病原性遺伝子の誘導を刺激するために重要であることが多い。TCSは、センサーヒスチジンキナーゼ(HK)が特異的な応答制御因子(RR)と共役する構成になっており、たいていは転写因子がRRとなる。センサーHKは、リガンドとの結合または解離によって活性化されると、保存されたヒスチジン残基の自己リン酸化を起こし、その後、そのリン酸基をRR内のアスパラギン酸残基に転移させる。このリン酸化によってRRの活性化、またはRRと他のタンパク質の相互作用が引き起こされる。ほとんどのHKは、誘導条件の非存在下でホスファターゼ活性を示し、RRが他の刺激によって活性化するのを防ぐ。根粒菌であるブラディリゾビウム・ジャポニクム(Bradyrhizobium japonicum)のFixL-FixJ TCSは、低酸素条件下でのみ、窒素固定に必要な遺伝子の発現を刺激する。今週号のScience Signalingで、Wrightらは構造解析、モデリング、機能性試験を組み合わせることで、HK FixLが酸素の解離に刺激されて自己リン酸化したあと、RR FixJにリン酸基を転移させる仕組みを決定した。

FixLは酸素のみに感受性を示すが、複数の刺激に感受性を示すHKもある。数種の細菌において、HK PhoQは酸性pH、抗菌ペプチド、低マグネシウム状態によって活性化されうる。Science Signalingアーカイブスの論文でChoiとGroismanは、サルモネラ菌(Salmonella)特異的タンパク質UgtLが、宿主細胞のファゴソーム内などの酸性条件下では、PhoQの自己リン酸化を促進し、RR PhoPを最大活性化するために必要であるが、低マグネシウム状態や抗菌ペプチドの存在に応答してPhoQがPhoPを最大活性化させる際には必要でないことを見出した。TCSのHKとRRは、UgtLの場合のように、付加的なタンパク質と相互作用してシステムの応答性を微調整する場合もあるが、典型的には、HKとRRが決まった相手以外と相互作用することはほとんどない。HKとRRは系列ペアで作用するのが通常であり、HKの内在性ホスファターゼ活性が系列RRの非系列HKによる活性化を防いでいる。しかし、非系列RRと共役可能なHKの例もいくつか存在する。アーカイブスの論文でも、Guckesらは、大腸菌(Escherichia coli)のHK PmrBが、鉄の存在下で系列RR PmrAと共役するだけでなく、HK QseCの系列RRであるQseBとも共役することを見出した。このようにTCSは、表面上は著しく単純にみえるかもしれないが、万能であり、複合調節の対象となりえる。

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2018年4月10日号

Editor's Choice

新たなつながり:単純なシグナル伝達系の複雑性

Research Article

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