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新たなつながり:抗ウイルス薬としてのキナーゼ阻害剤

New connections: Kinase inhibitors as antivirals

Editor's Choice

Sci. Signal. 02 Oct 2018:
Vol. 11, Issue 550, eaau2211
DOI: 10.1126/scisignal.aau2211

Erin R. Williams

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

E. Yángüez, A. Hunziker, M. P. Dobay, S. Yildiz, S. Schading, E. Elshina, U. Karakus, P. Gehrig, J. Grossmann, R.Dijkman, M. Schmolke, S. Stertz, Phosphoproteomic-based kinase profiling early in influenza virus infection identifies GRK2 as antiviral drug target. Nat. Commun. 9, 3679 (2018). Google Scholar

J. Ye, H. Zhang, W. He, B. Zhu, D. Zhou, Z. Chen, U. Ashraf, Y. Wei, Z. Liu, Z. F. Fu, H. Chen, S. Cao, Quantitative phosphoproteomic analysis identifies the critical role of JNK1 in neuroinflammation induced by Japanese encephalitis virus. Sci. Signal. 9, ra98 (2016). Abstract/FREE Full TextGoogle Scholar

プロテオミクスアプローチにより抗ウイルス治療標的候補としての多様な宿主キナーゼが同定される

要約

ウイルス感染は細胞を著しく変化させ、mRNA翻訳を停止して、代謝を変化させる。これに関与する経路の理解を深めるため、Yángüezらはインフルエンザウイルス(IAV)感染後のヒト肺上皮細胞を分析し、その結果、感染後数分以内にリン酸化タンパク質の存在量が顕著に変化することを見出した。遺伝子オントロジー解析(Gene ontology analysis)および計算的キナーゼ予測から、IAV感染は、ウイルス感染の促進における役割が広く記述されているマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)経路およびアクチン再編成を活性化することが示唆された。さらに著者らは、IAV感染がその他のキナーゼ、すなわちサイクリン依存性キナーゼ1(CDK1)、CDK5、Polo様キナーゼ2(PLK2)、unc-51-様キナーゼ3(ULK3)およびGタンパク質共役受容体キナーゼ2(GRK2)も活性化したことを明らかにした。阻害剤を用いた試験から、IAVの増殖性感染のためにはGRK2の活性が必要であることが確認された。しかし、たとえ高濃度のGRK2阻害剤であっても、細胞をこれで前処理または感染と同時に処理したときにのみ有効であった。このことは、GRK2が感染の初期段階に必要であるらしいことを示唆していた。複数の細胞株および培養ヒト気道上皮細胞において、GRK2の欠損により個々のIAV分離株の複製は低下した。マウスに抗うつ薬およびGRK2阻害剤パロキセチンを投与したとき、感染マウス肺のウイルス価は低下したが、致死的なIAV曝露からは防御しなかった。したがって、広く利用できる治療薬を用いてこのGPCR関連キナーゼを阻害することは、高齢者などIAVに感染しやすい集団における疾病負荷を軽減するための、新たなアプローチと考えられる。
もう1つの、本誌ArchivesでYeらが発表している研究では、ホスホプロテオミクスおよびキナーゼ予測を用いて日本脳炎ウイルス(JEV)感染がプロテインキナーゼA(PKA)、AKTキナーゼ、p53およびc-Jun N末端キナーゼ1(JNK1)を活性化することが確認された。JNK1の阻害または欠損は、感染細胞における炎症性サイトカインの産生およびマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)の存在量を低下させた。マウスでは、JNK1阻害剤によりウイルス感染の確立および脳内の炎症性サイトカインの存在量が低下し、これにより致死的疾患からマウスが防御された。まとめるとこれらの研究は、感染する間にウイルスが宿主細胞のキナーゼを利用する方法には、予想外の複数の方法があることを明らかに、またアンメットニーズが存在する多数のウイルス性疾患には、治療薬としてのキナーゼ阻害剤の再活用が有効かもしれないことを示唆している。

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2018年10月2日号

Editor's Choice

新たなつながり:抗ウイルス薬としてのキナーゼ阻害剤

Research Article

LKB1-AMPK-α1シグナル伝達経路はミトコンドリアの下流で低酸素性肺血管収縮を引き起こす

受容体チロシンキナーゼHIR-1は低酸素と細胞外マトリックス傷害に対するHIF非依存性応答を調整する

細菌のRas/Rap1部位特異的エンドペプチダーゼRRSPは非定型機構によりRasを切断しRas-ERKシグナル伝達を阻害する

可溶性gp130はインターロイキン-6およびインターロイキン-11クラスターシグナル伝達を阻害するが、細胞内自己分泌応答は阻害しない

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