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新たなつながり:血管系を超えたVEGF

New connections: VEGF beyond the vasculature

Editor's Choice

Sci. Signal. 16 Oct 2018:
Vol. 11, Issue 552, eaav7125
DOI: 10.1126/scisignal.aav7125

Leslie K. Ferrarelli

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

Y. Yang, S. Li, Z.-R. Jin, H.-B. Jing, H.-Y. Zhao, B.-H. Liu, Y.-J. Liang, L.-Y. Liu, J. Cai, Y. Wan, G.-G. Xing, Decreased abundance of TRESK two-pore domain potassium channels in sensory neurons underlies the pain associated with bone metastasis. Sci. Signal. 11, eaao5150 (2018).
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A. L. Elaimy, S. Guru, C. Chang, J. Ou, J. J. Amante, L. J. Zhu, H. L. Goel, A. M. Mercurio, VEGF-neuropilin-2 signaling promotes stem-like traits in breast cancer cells by TAZ-mediated repression of the Rac GAP β2-chimaerin. Sci. Signal. 11, eaao6897 (2018).
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A. L. Elaimy, A. M. Mercurio, Convergence of VEGF and YAP/TAZ signaling: Implications for angiogenesis and cancer biology. Sci. Signal. 11, eaau1165 (2018).
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C. Thomas, W. Henry, B. G. Cuiffo, A. Y. Collmann, E. Marangoni, V. Benhamo, M. K. Bhasin, C. Fan, L. Fuhrmann,A. S. Baldwin, C. Perou, A. Vincent-Salomon, A. Toker, A. E. Karnoub, Pentraxin-3 is a PI3K signaling target that promotes stem cell-like traits in basal-like breast cancers. Sci. Signal. 10, eaah4674 (2017).
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増殖因子VEGFは、血管新生だけでなく、がんに関連する幹細胞の生物学と疼痛を促進する。

要約

血管内皮増殖因子(VEGF)は、新たな血管の成長(血管新生)と血管統合性の維持の両方に不可欠である。腫瘍細胞は栄養素と酸素の豊富な供給を必要とし、VEGFを分泌する。そのため、VEGFシグナル伝達の血管系に関連した役割が、がんの進行を支えることはよく知られている。しかし、がんにおけるVEGFの血管外の役割を示す研究が、新たに出現している。Science Signaling今週号では、Yangらが、VEGFはがん関連疼痛を直接的に促進することを示した。骨転移性乳がんのラットモデルにおいて、分泌されたVEGFが感覚ニューロンのカルシウムを介する負のフィードバック経路を活性化し、それによって、カリウムチャネルTRESKの発現が抑制されることが明らかになった。TRESKを介したカリウム電流が消失すると、ニューロンの興奮性が高まり、ラットは、骨病変がある肢の足への熱と接触に対してより敏感になった。この経路を遮断するとチャネル活性が回復し、ラットの疼痛が軽減された。これらの結果から、VEGF阻害剤は、きわめて強い痛みを伴う状態である骨転移を有する患者において、疼痛を軽減し、QOLを向上させる可能性があることが示唆される。

血管新生に役割を果たすことから、当然のことながら、VEGFはがん患者の予後不良に関連する。しかし、Science Signaling Archivesでは、Elaimyらが(ElaimyとMercurioによるReviewも参照)、腫瘍固有の作用がこの関連にさらに寄与する可能性を示した。著者らは、さまざまな乳がん細胞株を用いて、VEGFが、がん幹細胞様細胞(CSC)の発生と増殖を促進することを見出した。外因性および腫瘍から分泌されるVEGFが、腫瘍細胞の非古典的受容体NRP2に結合し、続いて、マイトジェン関連キナーゼFAKとGTPase Rac1を活性化した。これによって、VEGFと同様に種々のがんの予後不良に関連する、Hippo経路の転写補因子TAZが活性化された。TAZは、Rac1を効果的に遮断する酵素β2-キメリンの発現を抑制した。このように、自己永続的なループにおいて、β2-キメリンの欠損により持続的なRac1活性が促進された。この機構を介して、VEGFは乳がん細胞においてCSC様の挙動を促し、患者腫瘍における幹細胞様および転移マーカーと相関を示した。CSCは、一部の腫瘍において、薬剤耐性と進行を促進する。

乳がんにおけるこのようなVEGFとCSCの関連は、Science Signaling Archives内のもう1件の研究によって裏付けられると考えられる:Thomasらは、キナーゼPI3Kによるシグナル伝達が、基底細胞様乳がんにおいて幹細胞様形質を促進する、興味深い機構を明らかにした。注目すべき点として、PI3KはVEGFシグナル伝達によって活性化される。これらの知見から、VEGF阻害剤は、CSCを抑制することにより、患者におけるさまざまな抗がん治療の有効性を高める可能性があることが示唆される。その可能性をさらに検討することや、CSCに関連するその他の腫瘍型においてこの経路が活性を示すかどうかを調べることは興味深い。総合すると、これらの報告(さらに、経路間クロストークに関するわれわれの知識は進歩しているため、おそらくその他多数の報告)は、VEGFシグナル伝達の展望を広げ、VEGFの生物学とがん治療への応用に関する、どちらかといえば全体論的なシステムレベルの分析を促している。

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2018年10月16日号

Editor's Choice

新たなつながり:血管系を超えたVEGF

Research Article

骨転移に関連する疼痛の根底には感覚ニューロンに存在する二孔ドメインカリウムチャネルTRESK量の減少がある

一連のCCR5ケモカインアナログにおけるGタンパク質サブタイプ特異的なシグナル伝達バイアス

CXCR4の偏った拮抗作用はアンタゴニスト耐性を回避する

Reviews

VEGFとYAP/TAZシグナル伝達の収束:血管新生およびがんの生物学との関連

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