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骨転移に関連する疼痛の根底には感覚ニューロンに存在する二孔ドメインカリウムチャネルTRESK量の減少がある

Decreased abundance of TRESK two-pore domain potassium channels in sensory neurons underlies the pain associated with bone metastasis

Research Article

Sci. Signal. 16 Oct 2018:
Vol. 11, Issue 552, eaao5150
DOI: 10.1126/scisignal.aao5150

Yue Yang1,2,*, Song Li1,2,*, Zi-Run Jin1,2,*, Hong-Bo Jing1,2,*, Hong-Yan Zhao1,2, Bo-Heng Liu1,2, Ya-Jing Liang3, Ling-Yu Liu1,2, Jie Cai1,2, You Wan1,2, and Guo-Gang Xing1,2,4,†

1 Department of Neurobiology, School of Basic Medical Sciences and Neuroscience Research Institute, Peking University, Beijing 100083, China.
2 Key Laboratory for Neuroscience, Ministry of Education of China and National Committee of Health and Family Planning of China, Peking University, Beijing 100083, China.
3 Department of Oral and Maxillofacial Radiology, Peking University School and Hospital of Stomatology, Beijing 100081, China.
4 Second Affiliated Hospital of Xinxiang Medical University, Henan, China.

† Corresponding author. Email: ggxing@bjmu.edu.cn

* These authors contributed equally to this work.

要約

がん関連痛は患者を衰弱させる。がん関連痛を引き起こす機構が解明されれば、患者の生活の質(QOL)の改善につながる医薬品の開発に有用な情報となりうる。本稿でわれわれは、後根神経節(DRG)ニューロンに存在するカリウムチャネルTRESKの量が減少すると侵害受容性感覚ニューロンの感受性が強化され、がん関連痛が増強されることを見出した。骨転移モデルラットにおいてDRGニューロンでTRESKを過剰発現させると、腫瘍によって誘導されるニューロンの過剰興奮と疼痛過敏は抑制されたが、正常ラットにおいてTRESKをノックダウンさせると、ニューロンの過剰興奮と疼痛過敏は増強された。機構的には、腫瘍に関連して血管内皮増殖因子(VEGF)が産生されると、VEGFがDRG上の受容体VEGFR2を活性化し、それによってカルシニューリン阻害因子DSCR1の存在量が増加し、ひいては、カルシニューリンに媒介される転写因子NFATの活性化が抑制されたため、TRESKをコードする遺伝子の転写量が減少した。担がんラットに外因性カルシニューリンを髄腔内投与するとTRESKの存在量は回復し、DRGの過剰興奮も疼痛過敏も抑制されたが、正常ラットのカルシニューリンを阻害する、あるいはノックダウンさせると、TRESKの存在量は減少し、DRGの興奮は促進され、疼痛感受性は増強された。これらの知見は、がん患者において骨転移関連痛を引き起こしている可能性がある、治療標的になりうる機構を同定するものである。

Citation: Y. Yang, S. Li, Z.-R. Jin, H.-B. Jing, H.-Y. Zhao, B.-H. Liu, Y.-J. Liang, L.-Y. Liu, J. Cai, Y. Wan, G.-G. Xing, Decreased abundance of TRESK two-pore domain potassium channels in sensory neurons underlies the pain associated with bone metastasis. Sci. Signal. 11, eaao5150 (2018).

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