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PD-1を標的にする
Targeting PD-1
Sci. Signal. 11 Dec 2018:
Vol. 11, Issue 560, eaaw3120
DOI: 10.1126/scisignal.aaw3120
John F. Foley
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA
X. Meng, X. Liu, X. Guo, S. Jiang, T. Chen, Z. Hu, H. Liu, Y. Bai, M. Xue, R. Hu, S. -c. Sun, X. Liu, P. Zhou, X. Huang,L. Wei, W. Yang, C. Xu, FBXO38 mediates PD-1 ubiquitination and regulates anti-tumour immunity of T cells.Nature 564, 130-135 (2018).
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PD-1を分解する標的とするE3ユビキチンリガーゼが欠失すると、T細胞による抗腫瘍応答の効率が低下する。
要約
T細胞上の抑制性受容体であるプログラム細胞死1(programmed cell death 1:PD-1)の量は抗原への慢性的な曝露によって増加し、PD-1量の増加はT細胞の消耗や機能不全を引き起こす。PD-1またはそのリガンドであるPD-L1を阻害する抗体は、一部の患者においてT細胞の抗腫瘍活性を促進する治療法として奏効することが示されている。Mengらは、ヒトおよびマウスT細胞が活性化すると細胞表面のPD-1量が一時的に増加することを見出した。しかし、mRNA量はほとんど変化していなかった。代わりに、T細胞が活性化するとPD-1の内部移行、ユビキチン化、プロテアソーム依存性の分解が促進した。免疫共沈降実験では、E3ユビキチンリガーゼFBXO38がPD-1と物理的に相互作用し、PD-1のLys48結合型ポリユビキチン化と分解を媒介することが示された。マウスT細胞のFbxo38をコンディショナルノックアウトしても(Fbxo38CKOマウス)、T細胞受容体(TCR)を介したT細胞の活性化には影響しなかったが、細胞表面のPD-1量はTCR刺激後に増加した。2つの異なるがんモデルにおいて、Fbxo38CKOマウスのほうが野生型マウスよりも腫瘍の増殖が速く、Fbxo38CKOマウスの腫瘍浸潤性CD8+ T細胞ではPD-1量が増加していた。これらの結果は、Fbxo38をノックダウンしたT細胞(Fbxo38KD細胞)の養子移植実験で再現された。Fbxo38KD細胞の抗腫瘍活性の欠損は、PD-1抑制抗体によって回復した。ヒトがん検体では、末梢血中の腫瘍浸潤性CD8+ T細胞のほうがCD8+ T細胞に比べて、FBXO38の発現量が減少していた。マウスおよびヒトT細胞では、サイトカインであるインターロイキン2(IL-2)によってFbxo38とFBXO38のそれぞれの発現量が用量依存的に増加した。マウスをIL-2で処理すると、腫瘍浸潤性CD8+ T細胞におけるFbxo38の発現量は増加し、細胞表面のPD-1量は減少し、抗腫瘍活性は促進した。まとめると、これらのデータは、活性化されたT細胞において、PD-1分解のためにE3リガーゼFBXO38がPD-1を特異的に標的とすることを示している。このように、この経路を標的にすることで抗腫瘍免疫を調節できる可能性がある。