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タンパク質ホメオスタシスにおける栄養シグナル伝達:質を代償にして量を増やす

Nutrient Signaling in Protein Homeostasis: An Increase in Quantity at the Expense of Quality

Research Article

Sci. Signal., 16 April 2013
Vol. 6, Issue 271, p. ra24
[DOI: 10.1126/scisignal.2003520]

Crystal S. Conn1 and Shu-Bing Qian1,2*

1 Graduate Field of Genetics, Genomics and Development, Cornell University, Ithaca, NY 14853, USA.
2 Division of Nutritional Sciences, Cornell University, Ithaca, NY 14853, USA.

* Corresponding author. E-mail: sq38@cornell.edu

要約

ラパマイシンが多様な生物の寿命を延ばすという発見は、その根底にある分子機構の特定を目指した多数の研究の引き金となった。哺乳類ラパマイシン標的タンパク質複合体1(mTORC1)はmRNAの翻訳を制御することで細胞の増殖を調節し、さらに生物の老化を調節すると考えられる。しかし、mTORC1阻害とタンパク質合成の抑制がどのように寿命を延長できるのかという問題は、未だに解決されていない。われわれは、構成的活性化型mTORC1のシグナル伝達が、一般的なタンパク質合成を増加させる一方で、新規に合成されるポリペプチドの質を予想外に低下させることを明らかにした。構成的活性化型mTORC1は、リボソーム伸長速度を上げることで転写の忠実性を低下させていた。逆に、ラパマイシン処理は、主にリボソーム伸長速度を遅らせることで、新規に合成されるポリペプチドの質を回復していた。また、mTORC1の下流の標的が、タンパク質ホメオスタシスの維持に異なる役割を果たしていることを明らかにした。すなわち、S6キナーゼと4E-BPファミリーのタンパク質はいずれも転写の調節に関わっているが、S6キナーゼの欠損は、新規に転写されるタンパク質の質に対するラパマイシンの影響を減弱したが、4E-BPファミリーの欠損は影響しなかった。今回の研究結果は、mTORC1とタンパク質の質には機構的な関連性があることを示し、成長と老化において栄養シグナル伝達が中心的な役割を果たしていることを明らかにした。

C. S. Conn, S.-B. Qian, Nutrient Signaling in Protein Homeostasis: An Increase in Quantity at the Expense of Quality. Sci. Signal. 6, ra24 (2013).

英文原文をご覧になりたい方はScience Signaling オリジナルサイトをご覧下さい

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