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オートクリンWntが胚性幹細胞の生存とゲノム安定性を制御する

Autocrine Wnt regulates the survival and genomic stability of embryonic stem cells

Research Article

Sci. Signal. 10 Jan 2017:
Vol. 10, Issue 461,
DOI: 10.1126/scisignal.aah6829

Iris Augustin1,*,†, Dyah L. Dewi1, Jennifer Hundshammer1, Gerrit Erdmann2, Grainne Kerr1, and Michael Boutros1,*

1 German Cancer Research Center (DKFZ), Division of Signaling and Functional Genomics, and Department of Cell and Molecular Biology, Medical Faculty Mannheim, Heidelberg University, Heidelberg 69120, Germany.
2 NMI TT Naturwissenschaftliches und Medizinisches Institut Technologie Transfer GmbH Pharmaservices, Berlin 13353, Germany.

* Corresponding author. Email: m.boutros@dkfz.de (M.B.); i.augustin@dkfz.de (I.A.)

Present address: Department of Cell Biology, Faculty of Biotechnology and Bioinformatics, University of Applied Science Weihenstephan-Triesdorf, Freising 85354, Germany.

要約

Wntシグナル伝達は幹細胞の自己再生と分化に重要な役割を果たしている。Wntリガンドの分泌にはEvi(別名Wls)が必要である。Eviの遺伝子欠損は、冗長な全Wntタンパク質が枯渇した結果を検討するための実験的アプローチを可能とし、一方でEviの過剰発現は、非特異的にWntシグナル伝達を亢進させる手段である。われわれはEviを欠損および過剰発現したマウス胚性幹細胞(ESC)を作製し、自己再生および分化におけるオートクリンWnt産生の役割を分析した。その結果、Evi欠損ESCでは自己再生が抑制され、Evi過剰発現ESCでは、ESCの自己再生を支持する白血病抑制因子の非存在下において自己再生が亢進した。Eviを過剰発現させたときESCから心筋細胞への分化が亢進し、in vivoにおけるEvi欠損ESCの奇形腫形成および増殖が障害されていた。このことは、ESCの分化および生存にはオートクリンWntリガンドが必要であることを示唆している。オートクリンWntシグナル伝達を欠損しているESCは、有糸分裂が障害され、ゲノム不安定性を示していた。まとめると、われわれの研究は、オートクリンWntの分泌はESCの生存、染色体の安定性、分化および腫瘍形成能に重要であることを示している。

Citation: I.Augustin, D. L. Dewi, J. Hundshammer, G. Erdmann, G. Kerr, M. Boutros, Autocrine Wnt regulates the survival and genomic stability of embryonic stem cells. Sci. Signal. 10, eaah6829 (2017).

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