• ホーム
  • セロトニンシグナル伝達とオピオイドによるシグナル伝達の相乗的な調節がNav1.7ノックアウトマウスにおける疼痛の非感受性に寄与する

セロトニンシグナル伝達とオピオイドによるシグナル伝達の相乗的な調節がNav1.7ノックアウトマウスにおける疼痛の非感受性に寄与する

Synergistic regulation of serotonin and opioid signaling contributes to pain insensitivity in Nav1.7 knockout mice

Research Article

Sci. Signal. 10 Jan 2017:
Vol. 10, Issue 461, 
DOI: 10.1126/scisignal.aah4874

Jörg Isensee1,*, Leonhardt Krahé1, Katharina Moeller1, Vanessa Pereira2, Jane E. Sexton2, Xiaohui Sun2, Edward Emery2, John N. Wood2, and Tim Hucho1,*

1 Department of Anesthesiology and Intensive Care Medicine, Experimental Anesthesiology and Pain Research, University Hospital of Cologne, Robert Koch Str. 10, 50931 Cologne, Germany.
2 Molecular Nociception Group, Wolfson Institute for Biomedical Research, University College London, Gower Street, London WC1E 6BT, UK.

* Corresponding author. Email: joerg.isensee@uk-koeln.de (J.I.); tim.hucho@uk-koeln.de (T.H.)

要約

マウスとヒトにおいて、電位依存性ナトリウムチャネルNav1.7の遺伝子が欠損すると(Nav1.7−/−)、生涯にわたって痛みを感じられなくなる。根底にある原因の1つは、感覚神経における内在性オピオイドの産生量の増加である。われわれは、セロトニン(侵害受容促進性)やオピオイド(抗侵害受容性)に応答するGPCRによって引き起こされるような、侵害受容性ヘテロ三量体グアニンヌクレオチド結合タンパク質共役受容体(GPCR)シグナル伝達が、Nav1.7欠損によって変化するかどうかを解析した。そして、Nav1.7ノックアウト(Nav1.7−/−)マウスでは侵害受容性神経において5-HT4受容体を介した侵害受容促進性のセロトニンシグナル伝達の減弱がみられるが、Nav1.8ノックアウト(Nav1.8−/−)マウスではみられないことを見出した。この5-HT4受容体は、環状アデノシン一リン酸の産生を促進してプロテインキナーゼA(PKA)を活性化させるとともに、PKAのRIIβ調節サブユニットの存在量を減少させるGαs共役GPCRである。また、Nav1.7−/−マウスでは、Gαi共役μオピオイド受容体によって媒介される抗侵害受容性オピオイドシグナル伝達の効力が促進されていた。その結果、オピオイドは、侵害受容性神経において疼痛を引き起こす神経活性に重要なテトロドトキシン抵抗性ナトリウム電流をより効果的に阻害した。このようにNav1.7は、GPCRによって媒介される侵害受容促進性および抗侵害受容性の細胞内シグナル伝達の効力とバランスを調節しており、Nav1.7が欠損するとそのバランスは抗侵害受容性に傾くため、生涯にわたる内因性の痛覚消失が引き起こされる。

Citation: J. Isensee, L. Krahé, K. Moeller, V. Pereira, J. E. Sexton, X. Sun, E. Emery, J. N. Wood, T. Hucho, Synergistic regulation of serotonin and opioid signaling contribute to pain insensitivity in Nav1.7 knockout mice. Sci. Signal. 10, eaah4874 (2017).

英文原文をご覧になりたい方はScience Signaling オリジナルサイトをご覧下さい

英語原文を見る

2017年1月10日号

Editors' Choice

腫瘍はCXCL12で痛みを遮断する

Research Article

E3ユビキチンリガーゼE6APの存在量低下が非小細胞肺がんにおけるINK4/ARF遺伝子座の発現低下に寄与する

オートクリンWntが胚性幹細胞の生存とゲノム安定性を制御する

セロトニンシグナル伝達とオピオイドによるシグナル伝達の相乗的な調節がNav1.7ノックアウトマウスにおける疼痛の非感受性に寄与する

二成分制御系の非系列パートナーによるシグナル伝達は尿路病原性大腸菌(Escherichia coli)におけるポリミキシンBに対する内因的耐性を促進する

最新のResearch Article記事

2025年07月29日号

USP5はFcεRIγを脱ユビキチン化して安定化させ、IgEに誘導されるマスト細胞の活性化とアレルギー性炎症を促進する

2025年07月29日号

プロテオミクス解析により発がん性KRASシグナル伝達の標的、経路および細胞への影響を特定

2025年07月22日号

心筋細胞におけるPTP1Bの欠失は心臓の代謝シグナル伝達を変化させ、高脂肪食によって誘発される心筋症を予防する

2025年07月22日号

レポーターに基づくスクリーニングによってRAS-RAF変異を大腸がんにおける活性型RAS阻害薬耐性のドライバーとして同定

2025年07月15日号

ウイルス性脳炎マウスでは、アストロサイトのRIPK3が転写レベルでセルピンを誘導することにより保護的抗炎症活性を発揮する