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Akt経路における低域通過フィルター特性による受容体と下流シグナル伝達の脱共役

Decoupling of Receptor and Downstream Signals in the Akt Pathway by Its Low-Pass Filter Characteristics

Research Article

Sci. Signal., 27 July 2010
Vol. 3, Issue 132, p. ra56
[DOI: 10.1126/scisignal.2000810]

Kazuhiro A. Fujita1, Yu Toyoshima2, Shinsuke Uda2, Yu-ichi Ozaki2, Hiroyuki Kubota2, and Shinya Kuroda1,2*

1 Department of Computational Biology, Graduate School of Frontier Sciences, University of Tokyo, Kshiwanoha 5-1-5, Kashiwa, Chiba 277-8568, Japan.
2 Department of Biophysics and Biochemistry, Graduate School of Science, CREST, Japan Science and Technology Agency, University of Tokyo, Hongo 7-3-1, Bunkyo-ku,Tokyo 113-0033, Japan.

* To whom correspondence should be addressed. E-mail: skuroda@bi.s.u-tokyo.ac.jp

要約:細胞のシグナル伝達では、外部刺激の情報はシグナル伝達分子の活性の時間パターンにコードされている。た とえば、刺激のパルスはシグナル伝達分子の応答を増大させたり、脈動性応答を生じさせたりすることがある。本稿では、細胞増殖に関与するAkt経路が上流 シグナルに含まれる時間的情報を下流のエフェクターに特異的に伝達する仕組みについて示す。われわれは、PC12細胞における上皮増殖因子(EGF)依存 性のAkt経路を実験結果に基づいてモデル化した。ところがわれわれの直観に反して、受容体のピーク振幅の大きさと下流エフェクターのリン酸化が脱共役さ れていること、すなわち、強い一過性のリン酸化ではなく、むしろ弱い持続性のEGF受容体(EGFR)リン酸化のほうが、Aktの下流分子であるリボソー ムタンパク質S6のリン酸化を強力に誘発することを示す結果を得た。また、周波数応答解析を用いて、3つの要素で構成されるAkt経路が低域通過フィル ターの特性を示すことと、この特性によって受容体のリン酸化のピーク振幅と下流エフェクターのピーク振幅の脱共役を説明しうることを見出した。さらには、 抗がん剤として用いられるEGFR阻害薬のラパチニブが強い一過性のAktリン酸化を弱い持続性のAktリン酸化へと変換し、そこにAkt経路の低域通過 フィルター特性が働くことによって、阻害薬の非存在下で起こるよりも強いS6リン酸化が引き起こされることを見出した。このように、EGFR阻害薬は一部 のエフェクターの下流活性化因子として作用する可能性がある。

K. A. Fujita, Y. Toyoshima, S. Uda, Y.-i. Ozaki, H. Kubota, S. Kuroda, Decoupling of Receptor and Downstream Signals in the Akt Pathway by Its Low-Pass Filter Characteristics. Sci. Signal. 3, ra56 (2010).

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