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皮膚炎症での血管透過性亢進と補体活性化におけるタンパク質分解のシステムレベルでの解析

Systems-Level Analysis of Proteolytic Events in Increased Vascular Permeability and Complement Activation in Skin Inflammation

Research Resources

Sci. Signal., 15 January 2013
Vol. 6, Issue 258, p. rs2
[DOI: 10.1126/scisignal.2003512]

Ulrich auf dem Keller1,2,3*†, Anna Prudova1,2,3†, Ulrich Eckhard1,2,3, Barbara Fingleton4, and Christopher M. Overall1,2,3‡

1 Department of Oral Biological and Medical Sciences, 4.401 Life Sciences Institute, University of British Columbia, 2350 Health Sciences Mall, Vancouver, British Columbia V6T 1Z3, Canada.
2 Department of Biochemistry and Molecular Biology, 4.401 Life Sciences Institute, University of British Columbia, Vancouver, British Columbia V6T 1Z3, Canada.
3 Centre for Blood Research, 4.401 Life Sciences Institute, University of British Columbia, Vancouver, British Columbia V6T 1Z3, Canada.
4 Department of Cancer Biology, Vanderbilt University School of Medicine, 734 PRB 2220 Pierce Avenue, Nashville, TN 37232, USA.

* Present address: Institute of Molecular Health Sciences, ETH Zurich, Schafmattstrasse 22, CH-8093 Zurich, Switzerland.

† These authors contributed equally to this work.

‡ To whom correspondence should be addressed. E-mail: chris.overall@ubc.ca

要約:炎症の際には、ブラジキニン産生などの様々なタンパク質分解イベントによって、血管透過性が亢進する。その結果、補体や急性期タンパク質などの血清タンパク質の組織浸透が可能となり、局所的な組織応答が亢進する。プロテアーゼはまた、細胞外マトリックスタンパク質や可溶性生理活性メディエーターをプロセッシングすることによって、炎症応答を制御する。われわれは、皮膚炎症の際のプロテオームの変化およびタンパク質アミノ末端(N-terminome)の性質の変化、マウスのプロテアーゼと阻害因子の存在量の変化を定量化した。iTRAQ-TAILSによるN-terminomeの解析を通して、炎症の際の翻訳時および翻訳後のαN-アセチル化モチーフ、タンパク質存在量の定量的増加、タンパク質分解シグネチャー(proteolytic signature)の質的変化が同定された。正常な皮膚で同定されるタンパク質のうち、約半数が切断されており、ホルボールエステルが誘導する炎症によって、これまでにわかっていなかった部位でプロッセッシングを受けたケモカインや補体タンパク質などの切断タンパク質の割合が増加した。マトリックスメタロプロテイナーゼ2(MMP2)欠損マウスでは、ホルボールエステルが誘導する炎症に応答して、皮膚における血清タンパク質の蓄積が減少し、野生型マウスとは異なるタンパク質分解ネットワークを示した。われわれは、補体1(C1)阻害因子が炎症皮膚における血清タンパク質の蓄積を軽減させることを見出した。MMP2がC1阻害因子を切断して不活性化すると、野生型マウスにおいて補体活性化およびブラジキニン産生が増大し、それによって炎症時の血管透過性が亢進した。しかし、この血管透過性亢進はMmp2-/-マウスでは低下した。このように、タンパク質分解に関するわれわれのシステムレベルでの解析によって、皮膚炎症に関連する切断イベントが詳細に分析され、単一のプロテアーゼの欠損によってタンパク質分解シグナル伝達ネットワークが混乱し、炎症が亢進する可能性が実証された。

U. auf dem Keller, A. Prudova, U. Eckhard, B. Fingleton, C. M. Overall, Systems-Level Analysis of Proteolytic Events in Increased Vascular Permeability and Complement Activation in Skin Inflammation. Sci. Signal. 6, rs2 (2013).

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