- 総説:AAV ベクターの開発と製造の課題
- 商品ラインアップ
- 遺伝子治療研究
- 細胞治療研究
- 関連情報
はじめに
遺伝子治療は、現在最も有望で成長している現代医学分野の一つです。ここ数年での大手製薬企業の参入や新技術の導入の急増により、発展を見せています。このような急成長は、遺伝子治療開発や関連技術への莫大な投資により急速な発展を可能にしますが、規制当局の要件を満たす標準化された安全性評価のための最適なツールや安全かつ効率的な製造プロセスの必要性が増大していくといった課題もあります。
一般的な遺伝子治療研究のアプローチの中で、アデノ随伴ウイルス(AAV)はin vivo 遺伝子導入法として最も有望なベクターの一つです。AAVは病原性の欠如や予測可能な統合パターンに基づいた安全なベクターであると考えられますが、製造時の一般的なダウンストリームおよびアップストリームプロセスには潜在的な安全性への懸念があります。これらのプロセスでは、各血清型(セロタイプ)が有効性や完全性、そして安全性を維持しながら最適な収量を確保できるように、特別な適合化・最適化を必要とします。
ダウンストリームプロセスの課題
現在使用されているAAV 製造プロセスは、AAV 産生に用いる哺乳類細胞やトランスフェクションに用いるプラスミドなどの多くの材料を必要とするだけでなく、残存する宿主細胞物質やプラスミドDNA、空カプシドなどの有害となる不純物を生成するリスクが高くなります。さらに、哺乳類細胞を用いた製造システムは再現性が低いことから、産生するベクターの品質の変動が大きくなってしまいます。増大する需要に対応するためには、製造量のスケールアップだけでなく、これらのプロセスで安全性および有効性に関する最適化が求められます。
もう一つの大きな課題として、遺伝子治療における商業規模でのAAV 製造の標準化が欠如していることが挙げられます。高い有効性と高収量を得ながら、高品質を確保するためには、各ステップを注意深くモニタリングする必要があります。現時点では、継続的なモニタリングが各ラウンドで再現性のある品質を保証する最も効率的な方法だと思われます。
AAVの製造工程の継続的なモニタリングにおいて、総カプシド力価は抽出や製品の完全性だけでなく、会合に関する製造効率を決定する重要な値を示します。これらの値をモニタリングすることで、製造工程全体を通した検証や各モニタリングステップでの早期方針決定が可能となります。カプシドの力価測定に用いられる方法は堅牢性と再現性が高いため、一般的に信頼性が高く、貴重なデータ収集のための決定的な方法と考えられています。
アップストリームプロセスの課題
ダウンストリームプロセスと同様に、アップストリームプロセスでも標準化された方法はまだありません。市販の標準物質がないことから、異なる材料や異なる研究所による同等性の比較が困難なため、遺伝子治療コミュニティや規制当局での有効性および安全性の調和のとれた評価が難しくなっています。そのため、遺伝子治療製品の特性評価や、精製および完全/空の分離、製剤化などのプロセス間での比較データの収集は、有効性および安全性を立証する最も有望な方法であると考えられています。
AAV の総カプシド力価の決定は精製や完全/空の分離効率への識見を与え、製剤化中のAAV 遺伝子治療製品の完全性や安定性の調査に役立ちます。ただし、包括的な特性評価を行うためのサンプル材料の可用性は、商業生産のボトルネックにもなります。試験に使用可能なサンプルの量が限られているため、研究者は入手可能な材料を適切に使用しなければならないという課題にたびたび直面します。現在利用可能な技術の多くは、正確な測定のために線形範囲が制限される一方で、大量なサンプルを必要とします。サンプルの事前評価が可能な迅速な工程内管理(in-process control)がないことから、各アッセイに使用できるサンプル量が非常に限られているため、適切な希釈範囲に到達できないことが多くあります。
Dip'n'Check AAVを用いた迅速なAAVカプシドの力価決定
PROGEN Biotechnik 社AAV ELISA キットは、AAVの総カプシド力価を正確に測定することが可能な最も信頼性のある方法であり、業界標準品を目指して開発が進められました。しかし遺伝子治療研究の分野では、急成長による開発競争により、製品の市場投入までにかかる時間制約が厳しくなってきています。PROGEN Biotechnik社は本課題への取り組みとして、ELISA の原理に基づく半定量的なラテラルフローアッセイのDip'n'Check AAVを開発しました(図1)。Dip'n'Check AAVはAAVセロタイプ1、2、3、6、8、9に使用可能な製品であり、研究者が抱える時間制約の問題を解決します。
このアッセイは、確立されたラテラルフロー技術と古典的なサンドイッチELISA の原理を組み合わせて開発されました(図2)。Dip'n'Check AAVはわずか20 分でアッセイが完了し、特別な操作や機器は必要ありません。開発や製造プロセスでいつでもモニタリングでき、容易な工程内管理が可能です。本製品は粗溶解物や精製済AAV の分析に適しています。完全に会合したAAV の検出に基づき、組み立て効率や完全性といったダウンストリームプロセスの初期評価や、製剤化の際の精製効率や完全性といったアップストリームプロセスの評価に使用可能です。さらにDip'n'Check AAVは、AAV ELISAキットのようなより精密なアップストリーム分析に用いるサンプルの最適な希釈率を評価する事前テストに使用可能であり、ELISA などのアッセイの線形範囲内に収めるための条件検討に必要となるサンプル量の削減に貢献します。
本校をご提供いただきましたPROGEN Biotechnik様に心より感謝申し上げます。
メーカー紹介
プロジェンバイオテクニック社 Progen Biotechnik GmbH(メーカー略号:PGN)
PROGEN Biotechnik社は、安全性・信頼性が高い治療法への改善・発展における、ライフサイエンスおよび遺伝子治療の研究を支援します。PROGEN Biotechnik社はライフサイエンスおよびアデノ随伴ウイルス(AAV)のエキスパートで構成されており、世界中の遺伝子治療やライフサイエンス分野の専門家と連携しています。高品質の抗体ならびに独自のAAV製品をご提供することで、アカデミアやバイオテクノロジー、製薬業界の研究課題の解決に貢献します。
Progen Biotechnik 社の使命
新しい治療法の進歩や、既存の研究プロセスを安全・迅速・手頃な価格で開発するのに役立つ高品質な製品をご提供することです。アカデミアや企業のどちらの研究・開発にも役立つツールをご提供します。
Progen Biotechnik 社の歴史
ドイツのハイデルベルクを拠点とし、1983年にドイツがん研究センター(DKFZ)とハイデルベルク大学から独立した会社として設立されました。抗体メーカーのパイオニアとしてスタートし、安全で効率的な遺伝子治療の開発に役立つAAV力価測定用のAAV抗体やAAV解析ツールをご提供するリーディングカンパニーへと成長しました。2012年にR-Biopharm AGの100%子会社となり、以降も製品ポートフォリオを拡大し続けています。

遺伝子治療研究
AAV作製
- 【AAV ヘルパーフリー発現システム】
リコンビナントヒトアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子をヘルパーウイルスなしで作製するシステムです。 - 【SignaGen社 パッケージング済アデノ随伴ウイルス粒子】
改良したhelper-free systemを用いてパッケージングしたpre-madeタイプのAAV粒子製品です。 - 【アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター&ウイルス粒子】
ヒト/マウス/ラット遺伝子を組み込んだプリメイドAAVベクターとパッケージング済みAAV粒子を幅広く取り揃えており、プロモーターおよび蛍光レポーター(ルシフェラーゼ/GFP)をお選びいただけます。 - 【アデノ随伴ウイルス (AAV) 作製受託サービス】
Cis-plasmidの構築から独自技術による高タイターのAAVパッケージングまで、AAVを使用した研究を幅広くサポートします。
AAV精製
- 【OptiPrep™ (オプティプレップ)多用途密度勾配遠心分離媒体】
植物プロトプラスト、エクソソーム等の膜小胞、リボソーム等の細胞小器官、組換えウイルスの分離に利用可能な多用途遠心分離媒体です。 - 【ViraBind™ アデノ随伴ウイルス精製キット】
ViraBind™ アデノ随伴ウイルス精製キットは、時間のかかる超遠心ステップが不要で、ワンステップカラムを用いてわずか3時間で簡単にウイルス上清から高純度のアデノ随伴ウイルスを精製することができるキットです。 - 【アデノ随伴ウイルス粒子精製キット】
ヒト/マウス/ラット遺伝子を組み込んだプリメイドAAVベクターとパッケージング済みAAV粒子を幅広く取り揃えており、プロモーターおよび蛍光レポーター(ルシフェラーゼ/GFP)をお選びいただけます。 - 【アデノ随伴ウイルス (AAV) 作製受託サービス】
細胞ライセートや培地などからアデノ随伴ウイルス(AAV)粒子を分離・精製するキットです。
力価測定
- 【Dip'n'Check AAVラテラルフローテスト】
インタクトなAAVカプシド(キャプシド)をセロタイプごとに20分で迅速に検出する半定量的なイムノフローサンドイッチアッセイです。 - 【リコンビナントAAV2 カプシドタンパク質】
AAV2 カプシドを構成するVP1、VP2、VP3の3種のリコンビナントタンパク質です。カプシドタンパク質の同定、VP1〜3の比率、純度、定量化の決定に用いることが可能です。 - 【qPCR アデノ随伴ウイルス(AAV)タイター測定キット】
アデノ随伴ウイルス(AAV)のタイターを簡便かつ迅速に測定できるキットです。DNA抽出からqPCRによるタイター測定まで約2時間で完了します。
定量・検出
- 【Adeno-associated Virus (AAV) Titration ELISAキット】
アデノ随伴ウイルス粒子(Adeno-associated Virus、AAV)、ならびに、ゲノムDNAを含まない会合したカプシド(assembled empty capsid)を定量するELISAキットです。キャプチャー抗体は会合したカプシドに存在するエピトープを検出し、野生型AAVやリコンビナントAAV、会合した空のAAVカプシドの定量に適しています。 - 【アデノ随伴ウイルス(AAV)認識用抗体(カプシドタンパク質・ウイルス粒子・レプリカーゼ)】
AAV感染の異なるステージの同定とAAVのアセンブリプロセスの効果的な解析に有用な3種類の抗体を提供しています。
導入
- 【AAV空カプシド】
AAV1、AAV2、AAV5、AAV6、AAV9の空カプシド(キャプシド)製品です。5.0E+12 viral particles/ml(vp/ml)の力価を持つ添加剤、安定剤フリーの溶液品でご提供します。ELISA、ドットブロットやウエスタンブロットなどの様々なアプリケーションにてリファレンスとしてご使用いただけます。 - 【ViraDuctin™ AAV 遺伝子導入キット】
ViraDuctin™ AAV遺伝子導入試薬では、分裂細胞、非分裂細胞ともにAAVベクターの導入効率を著しく増加させることができます。非分裂細胞への導入率が最も優れていますが、S期にも顕著な導入率の上昇がみられます。 - 【AAV Serotype Blast™Kit】
アデノ随伴ウイルス(AAV)による遺伝子導入の際に、最適となる血清型(セロタイプ)をセロタイプ1〜9の中から同定するキットです。
細胞治療研究
細胞
- 【Mononuclear Cells(MNC/単核細胞)】
グラジエント遠心分離法によって分離した単核球を販売しています。
培地
- 【CryoStor® 凍結保存培地】
凍結融解時の温度誘発性の分子細胞的ストレス応答を軽減します。CryoStor® は、-80℃〜-196℃で生体試料を凍結保存可能な、HypoThermosol® ベースの独自の培地です。 - 【4Cell® Nutri-T Medium】
ヒトリンパ球培養用のゼノフリー、血清フリー培地です。腫瘍浸潤リンパ球 (tumor infiltrating lymphocyte; TIL)、CAR-T細胞、末梢血単核細胞 (Peripheral Blood Mononuclear Cell ; PBMC) 等の培養に最適です。 - 【MSC NutriStem® XF ヒト間葉系幹細胞用ゼノフリー培地】
MSC NutriStem® XF 培地は骨髄や脂肪、Wharton's jelly 等の様々な組織由来のヒト間葉系幹細胞 (MSC) 用のゼノフリー培地です。 - 【ヒトiPS 細胞/ES細胞用培地 NutriStem® hPSC XF】
ヒトiPS 細胞/ES細胞用のフィーダーフリー培養、シングルセルクローニングが可能なゼノフリー培地です。
保存液
- 【NutriFreez® D5 細胞凍結保存液】
成分既知の細胞凍結保存液です。DMSO を5%含有し、抗生物質、抗真菌剤、ホルモン、成長因子、血清、タンパク質は含有していません。hPSC、PBMC、NK 細胞、Vero 細胞等の幅広い細胞でご使用いただけることを確認しています。
タンパク質
- 【Humankine® ヒューマンカイン】
HEK293(ヒト胎児腎細胞293)細胞発現のリコンビナントタンパク質(組換えタンパク質)です。ヒト細胞を用いて発現されたタンパク質であり、翻訳後修飾や糖鎖付加が適切に行われ、優れた活性と安定性を示します。
商品は「研究用試薬」です。人や動物の医療用・臨床診断用・食品用としては使用しないように、十分ご注意ください。
※ 表示価格について






















このページを印刷する













