レトロウイルスは 293T または 293RTV 細胞を使用してパッケージングすることができます。CBL社ではアンフォトロピック、エコトロピック、パントロピックレトロウイルスのパッケージングに使用できる Platinum パッケージング細胞株を取り扱っております。レトロウイルスを作製する際の選択方法は下記の通りです。
- Platinum レトロウイルスパッケージング細胞株(Plat-A(アンフォトロピック)またはPlat-E(エコトロピック)Platinum レトロウイルスパッケージング細胞株)にレトロウイルス発現ベクターを導入します。Plat-A及びPlat-Eは、MMLV Gag-Polとアンフォトロピックまたはエコトロピックなエンベロープタンパク質を安定発現していますので、これらの細胞では、レトロウイルスを産生するために発現ベクターのみ必要となります。
- MMLV Gag-Polのみを安定的に発現するPlat-GPパッケージング細胞株を使用の場合は、pCMV-VSVGと発現ベクターを同時導入することが必要です。この細胞株は、偽型レトロウイルスを産生し、全ての細胞タイプに感染することができます。
- 293T または 293RTV 細胞をご使用の場合は、下記の3つのベクターを同時導入します。
a. pCMV-Gag-Pol ベクター
b. エンベロープベクター : pCMV-VSVG, pCMV-Ampho, pCMV-Ecoのいずれか
c. レトロウイルス発現ベクター
エコトロピック偽型ウイルスは、マウスとラットの細胞のみに感染します。アンフォトロピック偽型ウイルスは、大部分の哺乳類細胞に感染します。パントロピック(VSVG偽型ウイルス) は、どんな種の細胞にも感染します。エコトロピックウイルスはヒト細胞に感染しないのでより安全です。エコトロピックとアンフォトロピックウイルスは、パントロピックウイルスよりも安定性に欠け、超遠心分離や凍結融解を行うことはできません。
トランスフェクションに用いるトータルDNA量は、ご自身で使用するトランスフェクションプロトコルに従って決定して下さい。トランスフェクション試薬の製造元のプロトコルに従い、プレートサイズに基づいたトータルDNA量を使用して下さい。
安定細胞株を維持するために使用するどんな抗生物質も、ウイルスのパッケージングの際には避けるべきです。なぜなら、培地がトランスダクションの際に持ち込まれる場合があり、それがターゲット細胞に毒性を示す可能性があるからです。
CBL社では、トランスフェクションから48時間後にウイルス上清を回収することをお奨めします。回収する際、ウイルスを含む培地を 0.45μm フィルターに通してください。
CBL社ではトランスフェクションから48時間後にウイルス上清を回収することをお奨めします。このとき、良いタイターを得るためにトランスフェクション効率が少なくとも80%以上であるべきです。もしトランスフェクション効率がこれより低いようであれば、条件を最適化する必要があるでしょう。アンフォトロピック及びエコトロピックレトロウイルスは、あまり安定ではありませんので、ウイルス上清を遠心することはお奨めしません。回収する際、ウイルスを含む培地を 0.45μm フィルターに通してください。また、ウイルス上清は、一回凍結融解をするとタイターが最大100倍減少してしまうので、回収した日に使用することをお奨めします。
最適条件下でのレトロウイルスの典型的なタイターは、1×10^6 TU/ml ですが、この値はパッケージング細胞、トラ ンスフェクション効率、インサートサイズ、回収までのインキュベーション時間などの影響で変化します。タイターには 様々な要因が関与し、研究者に依存するところですので、タイターは保証できません。
いくつかの提案がございます。
- レトロウイルスは、LTR繰り返し配列が含まれているので、形質転換後に組換えが起こる可能性があり、結果としてプラスミドのサイズが小さくなります。CBL社では組換えが起こるのを最小限にするために、プラスミドの増幅にはLife technologies 社の Stbl3 コンピテントセルの使用をお奨めします。この細胞株を用いてプラスミドを増幅しない場合は、プラスミドが正しいサイズを維持しているかどうか、制限酵素で消化し、確認すべきです。
- インサートは、発現ベクターのクローニングキャパシティーを超えるべきではありません。ウイルスのパッケージングは大きいサイズのインサートの場合、効率が悪くなります。従って、最大に近いサイズのインサートの場合、タイターは低くなることが予測されます。
- トランスフェクション条件は、少なくともトランスフェクション効率が80%以上になるように最適化される必要があります。80%以下の場合は、低いタイターとなるでしょう。
- SVG偽型ウイルスとは異なり、エコトロピックウイルスとアンフォトロピックウイルスは安定でないため超遠心分離や凍結融解はできません。
- ウイルスのパッケージングには、正常な継代数の少ない293細胞の使用を推奨します。
- アンフォトロピックとエコトロピックレトロウイルスは、きわめて不安定で超遠心分離をすることができません。また、ウイルス上清は、一回凍結融解をするとタイターが最大100倍減少してしので、回収した日に使用することをお奨めします。
- 必要としているより高いタイターが得られない場合は、ウイルスを下記の方法で濃縮することができます。
a. 100,000kDa 分子量カット膜濃縮を行います。最大で 2ml の上清を 200μl に濃縮でき、10倍の濃度にすることができます。
b. VSV-G偽型ウイルスの場合は、超遠心を行う。
c. CBL社の濃縮・精製キットを使用することで、500倍に濃縮できます。