- 【01】 遺伝子デリバリーのためのウイルスベクターをどのように決定すれば良いですか?
- 【02】 ウイルスの力価測定は、非常に複雑で長い時間がかかりますが...。
- 【03】 ウイルスの力価の単位には、VP/mL、TU/mL、ifu/mL、pfu/mL など様々なものがありますが、これらの違いは何ですか?
- 【04】 精製されたウイルス上清と精製されていないウイルス上清との違いは何ですか?
上清を低タンパク質結合フィルターに通すことによって精製されたと考えられるのではないですか? - 【05】 ViraBind™ AAV 精製キットは、AAV-2、AAV-5、AAV-8 といった様々な AAV セロタイプの精製に使用できますか?
- 【06】 リコンビナント AAV を回収する際、培養培地を除き、細胞を溶解し、ウイルスを回収します。しかし、レンチウイルスの場合は、細胞を除き、培養培地を濃縮します。AAV の場合も培地を遠心し濃縮すれば、細胞中の AAV の追加分として利用できますか?
- 【07】 なぜ、CBL社の ViraSafe™ レンチウイルス発現システムは、他のシステムより安全性が高いのですか?
- 【08】 Platinum Retroviral Packaging Cell Lines を遺伝子導入済みのレンチウイルス発現ベクターに使用できますか?
一番適したウイルスベクターを選択するのには、様々な条件を考慮する必要があります。
- 一過性 or 安定性の発現か?
- 分裂細胞 or 非分裂細胞への感染か?
- ターゲット細胞への免疫応答が重要か?
- In vivo or in vitro か?
※セレクションガイドをご参照下さい。
アデノウイルス | アデノ随伴ウイルス | レンチウイルス | レトロウイルス | |
---|---|---|---|---|
遺伝子発現 | 一過性 | 一過性 | 一過性または安定性 | 安定性 |
分裂細胞への感染 | Yes | Yes | Yes | Yes |
非分裂細胞への感染 | Yes | Yes | Yes | No |
ターゲット細胞ゲノムへのインテグレート | No | No* | Yes | Yes |
ターゲット細胞内の免疫応答 | High | Very Low | Low | Moderate |
相対的なウイルス力価 | XXXX | XXX | XXX | XX |
相対的なトランスダクション効率 | XXXX | XXX | XXX | XX |
*ネイティブ AAV は、インテグレートが起きますが、リコンビナント AAV ではほとんど起こりません。
リコンビナントウイルスは、宿主細胞に遺伝子を導入する優れたツールです。それぞれのウイルスは、細胞への感染、複製メカニズムが異なります。
各ウイルスの特徴は次の通りです。
- アデノウイルス
哺乳類の様々な細胞タイプに高効率で感染します。細胞に感染すると epichromosomal に残るため、一過性の発現に適しています。 - アデノ随伴ウイルス(AAV)
宿主細胞の特異的な部位(ヒト染色体の一部分)のゲノムにインテグレートされ、ランダムに挿入が起こることは稀です。アデノウイルスやレトロウイルスに比べ、ターゲット細胞内の免疫応答が非常に低いことが特徴です。 - レトロウイルス
宿主細胞のゲノムに、導入された遺伝子がインテグレートされます。長期の安定発現が可能です。レトロウイルスの力価はアデノウイルスに比べ一般的に低いです。 - レンチウイルス
レトロウイルスのサブクラスで、宿主細胞のゲノムに、導入された遺伝子がインテグレートされます。分裂細胞と非分裂細胞どちらにも感染可能です。
遺伝子の効果的なデリバリーはターゲット細胞に至適化された MOI(multiplicity of infection: 感染の多様性)に依存します。また、正しい MOI を用いるために、ウイルスの力価を知ることが必須です。ウイルスの遺伝子デリバリーは複雑で、複数のステップがあり、予測通りの遺伝子発現が得られないこともあります。ウイルス力価を知ることは、どこ(ウイルスパッケージング、精製、トランスダクション)で問題が起きたのかを知る手助けになります。従来のウイルス力価測定方法は、時間と手間がかかりましたが、CBL社の方法は、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルス、レトロウイルスの力価を測定する使いやすく便利な方法です。
力価測定キットの詳細は下記のページからご参照頂けます。
ウイルス力価には主に二つのタイプに分けられます。
- 物理的な力価は、厳密にどれくらいウイルスが存在するのかを測定し、1mL あたりのウイルス粒子の数で表します(VP/mL)。
- 機能的な力価は、感染力価と同義で、どれぐらいのウイルスが実際にターゲット細胞に感染するのかを測定します。機能的な力価は、トランスダクションユニット(TU/mL)、プラーク形成ユニット(pfu/mL)、感染ユニット(ifu/mL)で表され、ウイルスベクターに依存します。機能的な力価は、実際にどれくらいウイルスがターゲット細胞に感染するかですので、正確な測定であると言えます。しかし、機能的な力価は、粒子を測定するよりも時間を必要とします。物理的な力価を測定する場合、機能的な力価は物理的な力価を基に計算します。機能的な力価は、物理的な力価よりも通常 10-100 倍低いものになります。
精製された上清は、血清タンパク質及びコンタミネーションフリーを意味します。精製は、カラムクロマトグラフィーまたは超遠心を含みます。上清をタンパク質結合フィルターに通すと、単純に細胞残渣と大きな不溶粒子が除かれます。その場合、それは、精製されたと言えず、特に in vivo での使用には適しておりません。
【05】 ViraBind™ AAV 精製キットは、AAV-2、AAV-5、AAV-8 といった様々な AAV セロタイプの精製に使用できますか?
ViraBind™ AAV 精製キットは、AAV-2 と、CBL社で開発された AAV-DJ のみ使用できます。AAV-DJ/8 やその他の AAV セロタイプには使用できません。
【06】 リコンビナント AAV を回収する際、培養培地を除き、細胞を溶解し、ウイルスを回収します。しかし、レンチウイルスの場合は、細胞を除き、培養培地を濃縮します。AAV の場合も培地を遠心し濃縮すれば、細胞中の AAV の追加分として利用できますか?
レトロウイルス,レンチウイルスの成熟は、アデノウイルスや AAV とは異なります。レトロウイルス及びレンチウイルスは、膜出芽メカニズムで成熟します。従って条件培地から回収します。アデノウイルスや AAV は、細胞内でパッケージおよび成熟するので、細胞を溶解し、凍結融解を繰り返し、ウイルスを放出させます。ごくわずかなアデノウイルス及び AAV しか培地中に存在しません。それ故に、そのようなわずかな量を回収する必要はありません。しかし、培地を捨てる前に、細胞が溶解していないことを顕微鏡で確認することは有効です。
【07】 なぜ、CBL社の ViraSafe™ レンチウイルス発現システムは、他のシステムより安全性が高いのですか?
ViraSafe™ レンチウイルス発現システムは2つの安全対策を取り入れています。
- ViraSafe™ レンチウイルス発現システムは、複製可能なレンチウイルス(RCL)ができる可能性を最小限にしました。ViraSafe™ システムは、第3世代のレンチウイルスパッケージング技術を使用しており、4つの別々のプラスミドを同時にトランスフェクションします。配列の相同性を、80-85% に低下させることによって、RCL が作られてしまう可能性を軽減しています。
- スタンダードの VSV-G 偽型ウイルス(種に関係なくいろいろな細胞に感染する)に加え、Virasafe™ Ecotropic 発現、またはパッケージングシステムを選択することで、ecotropic レンチウイルスを作製することができます。ウイルスは ecotropic システムで作製することにより、異なるエンベロープタンパク質でパッケージングされ、マウス及びラット細胞に特異的に感染します。
【08】 Platinum Retroviral Packaging Cell Lines を遺伝子導入済みのレンチウイルス発現ベクターに使用できますか?
レンチウイルスは、レトロウイルスのサブクラスではありますが、HIV と MMLV の構造遺伝子は、互換性がなく異なります。したがって、生存可能なウイルス粒子は生産されません。