
近年、S. Peykov らによって、神経細胞の興奮性シナプスに存在するシナプス後肥厚部タンパク質と、統合失調症との関連について検討した結果が報告されました。統合失調症の原因には、遺伝的な素因のほかに、複数の要因が関係しています。遺伝学的研究では、足場タンパク質(scaffolding proteins)であるSHANKファミリー(SHANK13)などのタンパク質の、興奮性シナプスの構造・機能・可塑性への関与が注目されています。今回、S. Peykov らは、統合失調症患者の集団で発現が確認された、SHANK2遺伝子のA1731S変異に注目しました。A1731SなどのSHANK2変異体を、HEK293細胞および初代培養海馬神経細胞に過剰発現させ、形態変化に着目して機能解析を行いました。細胞骨格タンパク質であるアクチンは、海馬の興奮性シナプスを構成する、シナプス前構造およびシナプス後構造の主要な構成要素です。HEK293 細胞を用いて、アクチン重合への影響を検討した結果、A1731S変異のみ、F/Gアクチン比を減少させました。また、A1731Sの誘導するFアクチンの減少に関して補足実験が行われ、SHANK2変異体を過剰発現する海馬ニューロンでは、シナプス前部のマーカータンパク質が減少しており、シナプスの構成および密度に機能障害が起きている可能性があることを報告しています。
本研究では、SHANK2変異の誘導するアクチン重合の変化や、海馬のシナプス結合およびタンパク質発現への影響を検討するために、Cytoskeleton(サイトスケルトン)社の G/Fアクチン in vivo アッセイキット(品番: BK037)が使用されています。