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研究用

Ras及びRhoのプレニル化による翻訳後修飾:癌創薬における役割 CYTOSKELETON NEWS 2013年8月号

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CYTOSKELETON NEWS 2013年8月号 Ras及びRhoのプレニル化による翻訳後修飾:癌創薬における役割

Ras及びRhoのプレニル化による翻訳後修飾:癌創薬における役割

Ras及びRhoは、GTP結合活性型とGDP結合非活性型を循環する低分子G-タンパク質です。細胞増殖における役割で知られるRasタンパク質と、細胞形態との関連で知られているRhoタンパク質は、共通の翻訳後修飾(PTM;post-translational modifications)を受け、それにより発癌が誘因されることが確認されています1,2。Ras及びRhoのPTMの研究は、長年創薬分野において興味を持たれてきました。最近の研究により、RasとRhoのプレニル化及び/又はパルミチル化のPTMに媒介されるシグナル経路が、癌治療薬剤のターゲットとして期待されています1,2

Rasの脂質修飾:癌におけるPTMの役割
Rasアイソフォーム(H、N、K)の突然変異による異常活性化は、膵癌、子宮頸癌、肺癌、甲状腺癌、膀胱癌、乳癌、皮膚癌、白血病などのヒトの癌で共通して起こっています1,3,4。活性化したRasのアイソフォームが高頻度で癌に関連しているにも関わらず、効果的なRasシグナルの阻害剤は開発されていません。3種類のアイソフォームは全て薬剤のターゲットに値しますが、最近の研究はK-Rasに集中しています5(図1)。

K-Rasは、ファルネシル化(プレニル化の一種)のPTMを受け、C-末端にイソプレニル基を付加されます6,7。ファルネシル又はゲラニルゲラニル脂質は、Rasタンパク質のC-末端のシステイン残基(CAAX テトラペプチドモチーフ)に共有結合し、続いてRce-1が-AAXのアミノ酸切断を媒介し、Icmtがプレニル化システインのメチル化を媒介します6,7。K-Rasのファルネシル尾部は、タンパク質を細胞膜につなぎとめ、K-Rasが細胞質全体に自由に拡散するのを制限します6-8。このファルネシル尾部は、細胞シグナリングイベントのために、Rasを適切な細胞内区画へ輸送するのにも重要な役割を果たしています。PDEδ(別名PDE6δ)は、ピレニル結合タンパク質で、Ras様膜結合タンパク質のサイトゾル範囲内での細胞内局在化に関係しています9,10。PDEδのβサンドイッチフォールドは、K-Rasのファルネシル尾部が結合する疎水性のポケットを構成し、複合体をサイトゾル内で可溶化することで、アクセプターである膜への輸送を可能にします6-10。アクセプター膜で、GTP結合Arl2/3がPDEδに結合することで、K-Rasが放出されます6-9(図1)。

K-RasとPDEδの相互作用を阻害
図1 
Deltarasin(ベンゾイミダゾール系化合物)は、PDEδのポケットに結合することで、K-RasとPDEδの相互作用を阻害する。K-Rasは、ファルネシル化PTMによりPDEδとC-末端で結合する5,6,8

 

ハイスループットスクリーニングにより、ベンゾイミダゾール系化合物であるDeltarasinが、PDEδとK-Rasの相互作用を遮断する物質として同定されました5。Deltarasinは、ファルネシル結合ポケットを占有し、Rasタンパク質の脂質尾部とPDEδとの結合を妨げます。これにより、K-Rasの細胞内局在化を変化させます。生存をK-Rasシグナリングに依存している癌細胞は、deltarasin処理により細胞死が増加します。更に、deltarasin処理は、マウスの腫瘍細胞異種移植片において、腫瘍の成長を効果的に抑制させました5。これらの発見は、癌の発達において、Ras/PDEδ相互作用が重要であることを示唆しています5。興味深いことに、Rasタンパク質の機能はPDEδがなくても完全に残っており、これはおそらくPDEδがない状態で余剰のサイトゾルシャペロンが機能していることによると考えられます6,7

Rhoの脂質修飾:癌におけるPTMの役割
Ras GTPaseと同様に、Rho GTPaseアイソフォーム(A、B、C)は癌の形態形成及び移動に密接に関連しています2,12,13。更に、プレニル化及び/又はパルミチル化PTMは、Rho GTPaseの輸送及び活性を調節しています2。Rasと同様に、Rhoタンパク質は、CAAX テトラペプチドモチーフへの、ファルネシル、ゲラニルゲラニル脂質及び/又はパルミチル脂質の共有結合付加により修飾されます14。この修飾により、通常の生理活性に不可欠な、Rhoタンパク質の膜への輸送が可能になります2。Ras及びRhoシグナル経路における脂質ベースのPTMの重要性から、それらの阻害剤が癌治療の有望なターゲットと考えられています14。Robertsら14は、ファルネシルトランスフェラーゼ、Rce1、Icmtの様々な薬理学的抑制剤を用いて、CAAXモチーフがRhoの適切な局在化及び活性に関係していることを証明しました。この結果は、Rce1及びIcmtのCAAX-プロセシング酵素が、治療上の癌阻害の重要なターゲットであることを示唆しています14

Ras及びRhoの更なる調節メカニズムが明らかになるにつれ、これらのタンパク質の活性化レベルの測定法の重要性が増しています。癌治療薬の同定及び特徴付けを手助けするため、サイトスケルトン社では、低分子Gタンパク質の活性化レベルを測定するため、プルダウン及びG-LISA活性アッセイなど、広範囲で使用される低分子Gタンパク質ツールを多数提供しています。プルダウン法は、アガロースビーズと結合したエフェクタータンパク質のドメインを利用し、タンパク質の活性化レベルを、ウェスタンブロットで測定します。G-LISA活性アッセイは、従来のプルダウン技術より、迅速でより感度の高い手法です。サンプル量が少なくてすみ、サンプル間の比較をしやすい数値データとして結果が得られます。低分子Gタンパク質抗体、活性化剤、阻害剤もご利用いただけます。Ras及びRho活性化経路の研究にお役立てください。

参考文献

1. Castellano E. and Santos E. 2011. Functional specificity of Ras isoforms: So similar but so different. Genes Cancer. 2: 216-231.
2. Ridley A.J. 2013. RhoA, RhoB and RhoC have different roles in cancer cell migration. J. Microsc. doi: 10.1111/jmi.12025.
3. Schubbert S., et al. 2007. Hyperactive Ras in developmental disorders and cancer. Nat. Rev. Cancer. 7: 295-308.
4. Bos J.L. 1989. ras oncogenes in human cancer: A review. Cancer Res. 49: 4682-4689.
5. Zimmermann G., et al. 2013. Small molecule inhibition of the KRAS-PDEδ interaction impairs oncogenic KRAS signalling. Nature. 497: 638-642.
6. Philips M.R. 2012. Ras hitchhikes on PDE6δ. Nat. Cell Biol. 14: 128-129.
7. Chandra A., et al. 2012. The GDI-like solubilizing factor PDEδ sustains the spatial organization and signalling of Ras family proteins. Nat. Cell Biol. 14: 148-158.
8. Iwig J.S. and Kuriyan J. 2013. Fixing a hole where the Ras gets in. Cell. 153: 1191-1193.
9. Hanzal-Bayer M., et al. 2002. The complex of Arl2-GTP and PDEδ: From structure to function. EMBO J. 21: 2095-2106.
10. Nancy V., et al. 2002. The delta subunit of retinal rod cGMP phosphodiesterase regulates the membrane association of Ras and Rap GTPases. J. Biol. Chem. 277:15076–15084.
11. Zhang H., et al. 2007. Deletion of PrBP/δ impedes transport of GRK1 and PDE6 catalytic subunits to photoreceptor outer segments. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 104: 8857-8862.
12. Hakem A., et al. 2005. RhoC is dispensable for embryogenesis and tumor initiation but essential for metastasis. Genes Dev. 19: 1974-1979.
13. Huang M. and Prendergast G.C. 2006. RhoB in cancer suppression. Histol. Histopathol. 21: 213-218.
14. Roberts P.J., et al. 2008. Rho Family GTPase modification and dependence on CAAX motif-signaled posttranslational modification. J. Biol. Chem. 283: 25150-25163.

Ras及びRho研究ツール タンパク質

品名 メーカー 品番 包装 希望販売価格
Ras: H-Ras His Protein: Wild type詳細データ CYT RS01-A 1*100 UG
¥127,000
H-Ras-His Protein wild type詳細データ CYT RS01-C 3*100 UG
¥226,000
Rho A His Protein: wild type, Human詳細データ CYT RH01-A 1*100 UG
¥127,000
RhoA His Protein: wild type, Human詳細データ CYT RH01-C 3*100 UG
¥226,000
RhoC His Protein: Wild type詳細データ CYT RH03-A 1*100 UG
¥127,000
RhoC His Protein: Wild type詳細データ CYT RH03-C 3*100 UG
販売終了
Rhotekin-RBD, Human詳細データ CYT RT01-A 1*500 UG
¥142,000
Rhotekin-RBD, Human詳細データ CYT RT01-B 3*500 UG
販売終了
Rhotekin-RBD on agarose beads詳細データ CYT RT02-A 2*2 MG
¥199,000
Rhotekin-RBD on agarose beads詳細データ CYT RT02-B 6*2 MG
お問い合わせ
Raf protein ras binding domain on GST beads, Mouse詳細データ CYT RF02-A 1*2 MG
¥149,000
Raf protein ras binding domain on GST beads, Mouse詳細データ CYT RF02-B 4*2 MG
お問い合わせ

Ras及びRho研究ツール Gタンパク質モジュレーター

品名 メーカー 品番 包装 希望販売価格
Rho Activator II詳細データ CYT CN03-A 3*20 UG
¥65,000
Rho Activator II詳細データ CYT CN03-B 9*20 UG
¥181,000
Cell Permeable Rho Inhibitor (C3 Trans based) Clostridium botulinum , Unlabeled詳細データ CYT CT04-A 1*20 UG
¥63,000
Cell Permeable Rho Inhibitor (C3 Trans based) Clostridium botulinum , Unlabeled詳細データ CYT CT04-B 5*20 UG
¥205,000
Cell Permeable Rho Inhibitor (C3 Trans based) Clostridium botulinum , Unlabeled詳細データ CYT CT04-C 20*20 UG
お問い合わせ

Ras及びRho研究ツール キット

品名 メーカー 品番 包装 希望販売価格
Ras G-LISA(R) Activation Assay Kit詳細データ CYT BK131 1 KIT
[96 assays]
¥280,000
RhoA G-LISA(R) Activation Assay (absorbance)詳細データ CYT BK124 96 ASSAY
¥280,000
RhoA G-LISA(R) Activation Assay (luminescence)詳細データ CYT BK121 96 ASSAY
¥280,000
RhoA ELISA Kit詳細データ CYT BK150 1 KIT
[96 assays]
¥153,000
Rho GAP Assay Kit (non-radioactive)詳細データ CYT BK105 1 KIT
[80-160 assays]
¥208,000
RhoGEF Exchange Assay詳細データ CYT BK100 1 KIT
[60-300 assays]
¥209,000

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