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Ras 依存性の癌で注目される YAP1 CYTOSKELETON NEWS 2015年4月号

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CYTOSKELETON NEWS 2015年4月号 Ras 依存性の癌で注目される YAP1

Ras 依存性の癌で注目される YAP1

YAP1 と Hippo 経路

シグナル伝達経路の一つである Hippo 経路は、細胞運命の協調的な調節を介して、器官のサイズの制御に重要な役割を果たしています1。Hippo 経路のコアコンポーネントを形成する2種類のセリン/スレオニンキナーゼ(MST1/2 および LATS1/2)は、転写共役因子 YAP および TAZ をリン酸化することで「不活性化」し、細胞増殖のシグナル伝達を連続的にシャットダウンします2,3(図1)。YAP および TAZ はパラロガスな関係にあるタンパク質(重複しているが同一ではない)で、細胞増殖、分化、アポトーシスを調節します4。本稿では特に YAP1 に注目しますが、YAP1 に関する考察の大部分は TAZ にも当てはまることが示されています。MST1/2 — LATS1/2 — YAP1 シグナル伝達系は、細胞外環境(細胞接着、細胞外マトリックスの硬さなど)の物理的な変化に対する細胞応答の結果として活性化されます5。数種類のシグナル伝達経路が Hippo 経路と交差しており、最終的に YAP1 活性を制御します6。Hippo 経路が活性化されると、LATS1/2 によって YAP1 の複数のセリン残基(S61、S109、S127、S164、S381)がリン酸化され、リン酸化された S127 に 14-3-3 が結合することによって YAP1 を細胞質に保持します3。また、S381 のリン酸化により CK1δ/εが結合し、さらにセリンがリン酸化(S384、S387)されることで、YAP1 と SCFbTRCP ユビキチンリガーゼ複合体との相互作用が促進されます。この一連のシグナル伝達により、YAP1 がユビキチン化され、プロテアソーム依存的な分解が起こります7。Hippo 経路が不活性化されると、YAP1 は核へ移行し、主に転写因子 TEAD と結合します4。重要なことに、TEAD 以外にも数種類の転写因子が、YAP1 と結合することが示されています(例: SMADs、ß-catenin、Fos、E2F など)4,8,9(図1)。

 

図1 YAP1 の活性化は、発癌に関わる RAS シグナル伝達経路の重要な構成要素である

図1 YAP1 の活性化は、発癌に関わる RAS シグナル伝達経路の重要な構成要素である

癌における YAP1 の役割は複雑である

非形質転換細胞に YAP1 を過剰発現させると核に蓄積し、接着非依存性細胞増殖、上皮間葉転換(EMT: epithelial-to-mesenchymal transition)、アポトーシスの抑制、成長因子非依存性増殖などの、腫瘍細胞の全ての特徴を示します2,10。YAP1 と癌の発生との直接的な因果関係は、まだはっきりと証明されていませんが、ほとんどの場合、YAP1 活性の上昇により明らかな腫瘍性の挙動を示します。in vitro において YAP1 の過剰発現を行った報告と一致して、数種類の癌で YAP1 の発現が増加することが示されています2,11。また、YAP1 の活性上昇は、数種類の癌で予後不良に相関することが報告されています12,13。YAP1 の活性化が癌の発生に関与するメカニズムは様々ですが、多くの場合、Hippo 経路の調節不全や、YAP1 遺伝子を含む 11q22 遺伝子座の増幅が原因となります10,14,15。YAP1 は、癌の進行に関与する一方で、腫瘍抑制因子として作用する場合もあります(例: 乳癌や数種類の大腸癌)16,17。この矛盾を解く手がかりの一つが、発癌に関わるシグナル伝達経路において、キナーゼによる YAP1 の2つのチロシン残基(Y357 と Y391)のリン酸化を検討した報告に示されています。チロシンキナーゼ YES1 は、YAP1 の Y357 をリン酸化することでβ-カテニンとの相互作用を促進し、既知の発癌シグナル伝達経路である Wnt シグナル伝達経路を活性化します18, 19。反対に、チロシンキナーゼ c-Abl は、DNA損傷に応答して YAP1 の Y391 をリン酸化することで p73 との結合を促進し、p300 をリクルートしてアポトーシス誘導遺伝子の転写を刺激します(つまり、明らかに腫瘍抑制活性を示します)20。どちらの場合も、YAP1 は核で活性化されますが、YAP1 と結合するパートナーがそれぞれ異なることから、シグナル依存的な相互作用によって、正反対の転写プログラムが決定されます。

YAP は癌細胞の Ras 依存性を抑える

近年の報告により、Ras 依存性の癌において YAP1 の重要性が注目されています8,9,21,22。Ras(H-、K-、N-Ras)の機能獲得型変異は、ヒト癌の 33% で認められます23,24。これらの変異型 Ras アイソフォームは、発癌を促進する主要な因子であり、発生した癌は、変異型 Ras シグナルに非常に強く依存して生存しています25,26。YAP1 は、発癌に関わる Ras シグナル伝達において重要な因子として同定されており、細胞の強い Ras 依存性を抑えることが報告されています8,9,22。Ras シグナル伝達は、LATS キナーゼの不活性化や27、ユビキチンリガーゼ複合体(Hippo経路で用いられる SCFßTRCP 複合体とは異なる)による YAP1 ターンオーバーの調節を介して22、様々なレベルで YAP1 活性を調節します(図1)。後者の場合、 Ras シグナル伝達により、Elongin B/C ユビキチンリガーゼ複合体の YAP1 基質認識部位である SOCS6 の発現が減少します22。その結果、YAP1の発現量が増加して核に蓄積し、結合パートナーである Fos および TEAD2/E2F を介した転写が活性化され、発癌が促進されます8,9,22(図1)。

まとめ

YAP1 が癌細胞の Ras 依存性を制御し、数種類の癌で活性が上昇するという報告から、Ras のみをターゲットとする治療では、YAP1 を介した部分的な抵抗性が示されることが示唆されます。また、YAP1 は細胞の状況により、 発癌促進または抑制のどちらかに作用することから、発癌性 Ras をターゲットとする治療薬の開発において、YAP1 の抗腫瘍活性を利用できる可能性があります。YAP1 活性は、数種類の翻訳後修飾(PTM)により調節されることが報告されています(例: セリンとチロシンのリン酸化、およびユビキチン化)。Cytoskeleton(サイトスケルトン)社では、Ras 活性アッセイPTM 抗体GEF アッセイなど、本分野の研究にご使用いただける製品をご提供しております。

参考文献
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