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チューブリンの過剰グルタミル化、ミトコンドリア、神経変性 CYTOSKELETON NEWS 2019年11月号

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CYTOSKELETON NEWS 2019年11月号

チューブリンの過剰グルタミル化、ミトコンドリア、神経変性

微小管(MTs)は、哺乳類細胞の細胞骨格を構成する3つの必須タンパク質の1つで、α/β-チューブリンヘテロ二量体で構成されています。また、細胞の発生、増殖、運動性、機械的シグナル伝達、および細胞内輸送において非常に重要な役割を担っています。MTsの機能制御は少なくとも7種の翻訳後修飾(PTMs)によって行われます。翻訳後修飾は、通常は重合後に(動的に対して)安定なMTsのα/β-チューブリンヘテロ二量体で優先的に行われます。PTMsは高度に動的で、標的タンパク質のアミノ酸残基に化学基またはペプチドを付加することで、タンパク質の機能、結合パートナー、または細胞内局在化を制御する可逆的な過程でもあります1-4)
様々な鎖長のグルタミン酸側鎖をグルタミン酸残基の初期配列に付加するポリグルタミル化PTMは、1990年代初頭に初めて報告されました。α-,β-チューブリンのC末端尾部(CTTs)のグルタミン酸残基が最も一般的な基質です1-6)(図1)。グルタミル化酵素はタンパク質のチューブリンチロシンリガーゼ様(TTLL)ファミリーのメンバーです1-4, 7, 8)。哺乳類細胞において、細胞質カルボキシペプチダーゼ(CCP;またはNna)はCCP1、4、5、および6と共に脱グルタミル化酵素として機能し、グルタミン酸側鎖を除去します。3つの酵素(CCP1、CCP4、およびCCP6)は、ポリグルタミン酸鎖の短縮反応を触媒するのに対し、CCP5は枝分かれ部位のグルタミン酸残基を特異的に除去します1-4, 9-11)(図1)。生理的なポリグルタミル化は、神経細胞の細胞体や神経突起(樹状突起や軸索)内のMTsを修飾し、MTを基盤とした様々な神経細胞機能を制御しています1-4)

双方向的輸送とCCP1活性欠損による過剰グルタミル化の効果

図1:双方向的輸送とCCP1活性欠損による過剰グルタミル化の効果
MTsに沿った輸送を駆動するために、順行性モーターキネシン-1と逆行性モーターダイニン/ダイナクチン複合体がミトコンドリア上でMiltonやMiroと直接相互作用する。脱グルタミル化酵素であるCCP1の機能欠損は、ミトコンドリア動態に負の影響を及ぼす過剰グルタミル化を引き起こし、さらに神経変性を引き起こす。チューブリンのカルボキシル末端のアミノ酸はTTLLs(グルタミル化酵素)やCCP1を始めとするCCPs(脱グルタミル化酵素)に作用を受けることがある。CCP1はポリグルタミン酸側鎖から枝分かれ部位までのグルタミン酸残基を切断する。CCP1の不活性化変異はpcdマウスにおけるプルキンエニューロン変性の原因となる。本図は参考文献9と17を改変した。

神経変性とミトコンドリア

チューブリンの過剰グルタミル化は神経変性の原因となることがあり、pcd(プルキンエ細胞変性)マウスにおいてCCP1の不活性化変異によるプルキンエ細胞死が観察されました9-12)。若いpcdマウス小脳では、チューブリン特異的神経細胞ポリグルタミル化酵素(TTLL1)の下方制御によりプルキンエ細胞死が防がれ、運動協調性が改善されました9)。プルキンエ細胞特異的Ccp1ノックアウトマウスを用いた近年の研究から、CCP1不活性化によるチューブリンの過剰グルタミル化が神経変性を引き起こすだけでなく、MTを基盤とした神経細胞内輸送の破壊も神経変性を引き起こしていることが確認されました13, 14)Ccp1ttll1の両方を欠損するマウスではプルキンエ細胞死が起こりません13, 14)。さらに興味深いものに、pcdマウスにおいてCCP1発現/活性の欠損がどのように神経変性を引き起こすのかを明らかにした機構研究があります14, 15)(図1)。pcdマウスの初代培養小脳神経細胞とCCP1欠損網膜色素上皮細胞(pcdマウスの網膜変性に関与)では、予想通りチューブリンポリグルタミル化が増加しました14, 15)。さらに、Ccp1の欠損は、ミトコンドリア融合や双方向性(たとえば、順行性と逆行性)の運動性を減少させ、ミトコンドリアの断片化を増加させました14, 15)。他の神経変性の臨床前モデルと同様に、ヒト被験者における遺伝学的変異に関する知見は、神経変性疾患についてより深く学ぶだけでなく、治療的介入の考案という視点からも疾患研究の重要性を強めるものです。近年、Shashiら16) は、CCP1酵素活性の欠損(機能欠損型バリアントまたは単一アミノ酸置換によるミスセンスバリアントによる)がこれまで説明されていなかった小児期発症の進行性神経変性の原因であることを示しました。

以上をまとめると、上記の研究は、ミトコンドリアの神経細胞内輸送とミトコンドリアの機能、および形態維持がチューブリンの過剰グルタミル化により損なわれることを示しています。細胞内での双方向性輸送とイオン濃度勾配維持は、シナプス性神経伝達やシナプス小胞リサイクリングなどの基本的な神経機能に必要ですが、重要なことは、ミトコンドリアがこれらに必要なエネルギーを供給しているということです。ミトコンドリアは、その形態と数だけでなく、ミトコンドリアの機能と位置を制御するプロセスである、連続的な融合、核分裂、および輸送を受ける非常に動的なオルガネラです。ミトコンドリア自身は、特定の細胞内部位へ局在化する際には、MTsに沿った迅速な双方向性細胞内輸送に依存しています17)(図1)。モーターアダプター複合体は、主に順行性 モーターキネシン-1(または、キネシン重鎖 [KHC] または KIF5)、逆行性モーターダイニン(ダイナクチンとの複合体で)、Miro1と2、およびMilton1と2です17)。Miltonのアイソフォームは、はMT介在性輸送のために分子モーターをミトコンドリアに運搬するミトコンドリアアダプタータンパク質であり、Miroのアイソフォームは、はミトコンドリアRho GTPasesです。順行性 モーターキネシン-1と逆行性モーターダイニン/ダイナクチン複合体は、ミトコンドリア上でMiltonsやMirosと直接相互作用し、MTsに沿った双方向性移動を駆動します18, 19)

ところで、これらの知見を他の神経変性疾患に拡張できるのか、という重要な疑問があります。MAPs(微小管関連タンパク質)の結合に影響するものをはじめとして、病的なチューブリンPTMsはパーキンソン病(PD)や様々なタウオパチーにおいて主要な役割を担うことが既によく知られています12, 20)。他の神経変性疾患におけるMTポリグルタミル化の役割は未だよくわかっていないものの、ミトコンドリア機能障害はPD、アルツハイマー病(AD)、ハンチントン病(HD)、および筋萎縮性側索硬化症(ALS)においても認められています17)。ミトコンドリアの融合や分裂に重要な制御因子(例えば、Drp1、OPA1、マイトフュージンなど)が同定され、神経変性疾患におけるミトコンドリア動態の役割を理解することの重要性がより強まっています。さらに、チューブリンPTMs、ミトコンドリア機能障害、および神経変性疾患のの間にある潜在的な相互作用を検討する必要性があることは明らかです。

まとめ

近年、チューブリンのポリ修飾に関する理解が進んでいるにも関わらず、グルタミル化/脱グルタミル化の非酵素的制御因子(例えば、CSAP [cilia and spindle-associated protein])21) やチューブリン脱グルタミラーゼの網羅的な同定、グルタミル化(および他のPTMs)がMAPs(例えば、タウ、分子モーターなど)への結合やMT切断酵素活性21) にどのような影響を及ぼすのかを完全に理解するためには、多くの研究課題が残っています9-11, 21)。グルタミル化酵素、脱グルタミル化酵素と関連する制御因子を全て同定することで、病態生理学的な特徴として細胞内輸送の機能障害を有する神経変性疾患に新たな治療標的を見出すことができるでしょう。研究者の方々をお手伝いするため、Cytoskeleton社では、内在性PTMsレベルが測定できるSignal-Seeker Detection Kits、チューブリン活性キットや結合アッセイキット、微小管用の生細胞イメージング用プローブ、および精製チューブリンタンパク質などをご提供しています。

参考文献
  1. Hammond J. et al. 2008. Tubulin modifications and their cellular functions. Curr. Opin. Cell Biol. 20, 71-76.
  2. Janke C. and Kneussel M. 2010. Tubulin post-translational modifications: encoding functions on the neuronal microtubule cytoskeleton. Trends Neurosci. 33, 362-372.
  3. Wloga D. and Gaertig J. 2010. Post-translational modifications of microtubules. J. Cell Sci. 123, 3447-3455.
  4. Wloga D. et al. 2017. Tubulin post-translational modifications and microtubule dynamics. Int. J. Mol. Sci. 18, 2207.
  5. Edde B. et al. 1990. Posttranslational glutamylation of alpha-tubulin. Science. 247, 83-85.
  6. Nogales E. 2000. Structural insights into microtubule function. Annu. Rev. Biochem. 69, 277-302.
  7. Janke C. et al. 2005. Tubulin polyglutamylase enzymes are members of the TTL domain protein family. Science. 308, 1758-1762.
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  9. Rogowski K. et al. 2010. A family of protein-deglutamylating enzymes associated with neurodegeneration. Cell. 143, 564-578.
  10. Kimura Y. et al. 2010. Identification of tubulin deglutamylase among Caenorhabditis elegans and mammalian cytosolic carboxypeptidases (CCPs). J. Biol. Chem. 285, 22936-22941.
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  12. Baird F.J. and Bennett C.L. 2013. Microtubule defects and neurodegeneration. J. Genet. Syndr. Gene Ther. 4, 11.
  13. Magiera M.M. et al. 2018. Excessive tubulin polyglutamylation causes neurodegeneration and perturbs neuronal transport. EMBO J. 37, e100440.
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  15. Gilmore-Hall S. et al. 2018. CCP1 promotes mitochondrial fusion and motility to prevent Purkinje cell neuron loss in pcd mice. J. Cell Biol. 218, 206-219.
  16. Shashi V. et al. 2018. Loss of tubulin deglutamylase CCP1 causes infantile-onset neurodegeneration. EMBO J. 37, e100540.
  17. Gao J. et al. 2017. Abnormalities of mitochondrial dynamics in neurodegenerative diseases. Antioxidants. 6, 25.
  18. Guo X. et al. 2005. The GTPase dmiro is required for axonal transport of mitochondria to drosophila synapses. Neuron. 47, 379?393.
  19. Glater E.E. et al. 2006. Axonal transport of mitochondria requires milton to recruit kinesin heavy chain and is light chain independent. J. Cell Biol. 173, 545?557.
  20. Pellegrini L. et al. 2017. Back to the tubule: microtubule dynamics in Parkinson’s disease. Cell. Mol. Life Sci. 74, 409-434.
  21. van der Laan S. et al. 2019. Tubulin glutamylation: a skeleton key for neurodegenerative diseases. Neural Regen. Res. 14, 1899-1900.

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