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GTPase 活性化アッセイ: アイソフォームの検出 CYTOSKELETON NEWS 2014年11月/12月号

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CYTOSKELETON NEWS 2014年11月/12月号 GTPase 活性化アッセイ: アイソフォームの検出

GTPase 活性化アッセイ: アイソフォームの検出

Ras/Rho ファミリー GTPase は、発生、増殖、運動、細胞内輸送などの多様なアクチン依存的細胞プロセスの調節に重要な役割を果たしている低分子量Gタンパク質です1,2。さらに、Ras/Rho ファミリー GTPase の機能不全は、ヒトの疾患(例: 癌、神経変性)に関連しており、これらの GTPase は多くの病原性細菌の標的となっています3-5。GTPase ファミリーは多数のアイソフォームから構成されており、Rho ファミリーには Cdc42、RhoJ、RhoA、RhoB、RhoC、Rac1、Rac2、Rac3 が、Ras ファミリーには N-Ras、K-Ras、H-Ras が含まれます。これらの GTPase は、生理学的および病理学的プロセスにおいて主要な役割を担っていることから、特定の Rho/Ras アイソフォーム活性を測定する技術は非常に有用であると考えられます(表1、2)。

Rho/Ras ファミリー GTPase は、不活性な GDP 結合型と、活性を有する GTP 結合型のサイクルをくり返しています。従来の低分子量 GTPase 活性化アッセイは、アガロースビーズに結合したエフェクタータンパク質を利用して活性化 GTPase を単離(プルダウン)した後、ウエスタンブロットで定量化します。G-LISA は、プルダウンアッセイの代替として使用できる、より定量的で迅速、高感度な ELISA 法に基づく活性化アッセイです。Cytoskeleton(サイトスケルトン/CYT)社では、プルダウンと G-LISA の両方のキットを提供しており、どちらのキットも特定の Ras/Rho ファミリーアイソフォーム活性を測定するために、アッセイ条件の変更が可能です(表1、2)。重要なのは、アイソフォーム(例: H-Ras と K-Ras/N-Ras、RhoC と RhoA)によっては、他の関連するアイソフォームよりかなり低いレベルで発現する場合があることです6,7。発現量に大きな差があるため、低発現のアイソフォームの検出は困難です。ライセート濃度、溶解バッファー、抗体濃度/希釈率、といったアッセイ条件を変更し、至適条件を検討しますが、下記の例では、主にライセートの用量設定やアイソフォーム特異的な抗体について変更を行っています。

RhoA G-LISA キットを使用した RhoB/RhoC 活性の測定

Rho GTPase は、様々な生理学的および病理学的な細胞機能を仲介しています。Cytoskeleton 社の RhoA G-LISA キットは、血管新生(既存の血管系から新しい血管が形成される現象)における RhoB 活性の研究に使用されました。血管新生には成長因子による内皮細胞の活性化が必要となり、RhoB は成長因子の輸送および機能を調節することがわかっていることから8,9、内皮細胞の成長因子を介した血管新生において RhoB の果たす役割が検討されました10。血管内皮細胞増殖因子(VEGF)で刺激した後、RhoB の発現および活性が測定されました。活性の測定には、キットに標準で付属する RhoA 抗体を RhoB 抗体に変更した RhoA G-LISA キットが使用されました。得られた結果から、VEGF が介する内皮細胞の形態形成は、RhoB による(および RhoB が介する)RhoA 活性の阻害に依存する、と報告されています10

表1 GTPase アッセイで変更できる試薬
アッセイする GTPase キット 参考文献 抗体(サプライヤー) 抗体の希釈率
RhoB BK124 10 SC-8048, Clone C-5
(Santa Cruz/SCB 社)
-
RhoC BK124 10 SC-130339, Clone 37
(Santa Cruz/SCB 社)
-
RhoC BK124 14 - 1:50
RhoC BK124 15, 16 - -
RhoJ BK127 18 H00057381-M01, Clone 1E4
(Abnova/ABV 社)
-
RhoJ (HA-tag) PAK02 または BK034 19 Clone 3F10 for HA
(Roche 社)
-
N-Ras BK008 17 - -

RhoA G-LISA キットは、RhoB 活性の他に、RhoC 活性の測定にも使用できます。RhoC の恒常的な活性は、多くの癌において腫瘍の進行、浸潤、転移に相関することから、RhoC は癌細胞の運動性に関与していると考えられています11-13。RhoA 抗体を RhoC 抗体に変更した RhoA G-LISA 活性化アッセイキットを使用して、前立腺癌の骨転移における RhoC の役割が検討されました14。また、RhoC 活性の制御因子も検討され、コレステロール生合成阻害剤であるアトルバスタチンが、多くの頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)細胞株において RhoC 活性を低下させることが報告されました15。その後、同じ腫瘍細胞株における microRNA-138 の発現が検討され、microRNA-138 は RhoC 発現および活性を負に制御すると報告されました16。どちらの論文でも15,16、RhoA 抗体を RhoC 抗体に変更した RhoA G-LISA キットを使用して、RhoC 活性の測定が行われています。

表2 変更が可能な活性化アッセイ
アッセイする GTPase 検出可能なアイソフォーム 品番
RhoA RhoA, RhoB, RhoC BK036, BK036-S (プルダウン)
BK121, BK124 (G-LISA)
Rac1 Rac1, Rac2, Rac3 BK035, BK035-S, (プルダウン)
BK125, BK126, BK128 (G-LISA)
Ras K-Ras, N-Ras, H-Ras BK008, BK008-S (プルダウン)
BK131 (G-LISA)
RalA RalA または RalB BK040 (プルダウン)
BK129 (G-LISA)
Cdc42 Cdc42 または RhoJ BK034, BK034-S (プルダウン)
BK127 (G-LISA)

Ras プルダウンキットを使用した N-Ras 活性の測定

Ras は、Rho と同様に、癌や炎症性疾患などの多様な病態に関与する GTPase です。最近、Cytoskeleton 社の Ras プルダウンキットは、以前使われていた pan Ras 抗体が N-Ras 特異的抗体に変更され、N-Ras 活性を特異的に測定できるように改良されました17。このキットを使用して、原発性硬化性胆管炎(PSC)に伴う胆管細胞の老化に関与する分子経路が検討され、胆管細胞(胆管の上皮細胞)における N-Ras の発現および活性レベルの変化が焦点となりました17

Cdc42 G-LISA キット/PAK ビーズを使用した RhoJ 活性の測定

RhoJ は、まだ研究報告が少ない GTPaseですが、 Cdc42 とアミノ酸配列が 55% の相同性を示すことがわかっており、Cytoskeleton 社の Cdc42 G-LISA キット18 または Cdc42 プルダウンキットに付属する PAK (p21-activated kinase 1 protein)-GST ビーズを用いて測定することが可能です19。様々な網膜症の原因となる異常な血管形成における GTPase の役割を解明することを目的として、HEK-293T および内皮細胞において、VEGF が介する Cdc42 および外因的に発現させた RhoJ の活性が測定されています。

プルダウンキット/G-LISA キットでアイソフォームを測定するには

特定の Ras/Rho アイソフォーム活性を測定するには、表1に示した文献リストをご参照ください。目的のアイソフォームに関する参考文献がない場合は、最も近い活性化アッセイキットを使用し、活性化したライセートおよび活性化していないライセートに対して特定の一次抗体を 1:50、1:100、1:200 で希釈してテストし、適切な濃度を設定してください。活性化/非活性化ライセートは、アッセイマニュアルに従い、血清含有培地中で 50% コンフルエントにした細胞を PBS で2回洗浄し、ライセートを調製して保存することで作製できます。分注したライセートを1つ解凍し、室温で1時間インキュベートして GTPase の活性レベルを低下させ、非活性化状態にします。未処理のライセートは、血清により最も増殖が促進され、活性化した状態であると考えられます。活性化/非活性化ライセートの調製には、ライセートをそれぞれ GTPγS または GDP とインキュベートする方法もあります(プルダウンアッセイマニュアルに記載)。

まとめ

アッセイ条件の変更が可能なのは、Rho および Ras 活性化アッセイだけではありません。Rac1活性化アッセイキットを使用した Rac2 / Rac3 活性の研究、RalA 活性化アッセイキットを用いた RalB の研究、Ras 活性化アッセイキットを用いた H-Ras / K-Ras / N-Ras の研究にも、同様の変更を適用できます(表2)。汎用性に優れたこれらのアッセイキットは、GTPase 活性化の研究に有用であると考えられます。

G-LISA® 活性型低分子量Gタンパク質定量キット

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¥108,000

アッセイの変更に使用できる抗体

品名 メーカー 品番 包装 希望販売価格
Anti Rho B (C-5), Human (Mouse) Unlabeled, C-5詳細データ SCB SC-8048 200 UG
[200 μg/ml]
¥58,000
Anti Rho C (37), Human (Mouse) Unlabeled, 37詳細データ SCB SC-130339 200 UG
[200 μg/ml]
¥58,000
Anti RHOJ, Human (Mouse) Unlabeled, 1E4詳細データ ABV H00057381-M01 100 UG
¥64,000

参考文献

  1. A.B. Jaffe and A. Hall. 2005. Rho GTPases: biochemistry and biology. Annu. Rev. Cell Dev. Biol. 21, 247-269.
  2. S.J. Heasman and A.J. Ridley. 2008. Mammalian Rho GTPases: new insights into their functions from in vivo studies. Nat. Rev. Mol. Cell Biol. 9, 690-701.
  3. N. Kasri Nadif and L. Van Aelst. 2008. Rho-linked genes and neurological disorders. Pflugers Arch. 455, 787-797.
  4. F.M. Vega and A.J. Ridley, 2008. Rho GTPases in cancer cell biology. FEBS Lett. 582, 2093-2101.
  5. K. Aktories. 2011. Bacterial protein toxins that modify host regulatory GTPases. Nat. Rev. Microbiol. 9, 487-498.
  6. J. Omerovic et al. 2008. Ras isoform abundance and signalling in human cancer cell lines. Oncogene. 27, 2754-2762.
  7. K.L. van Golen. personal communication.
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  9. A. Gampel et al. 1999. Regulation of epidermal growth factor receptor traffick by the small GTPase rhoB. Curr. Biol. 9, 955-958.
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  12. H. Suwa et al. 1998. Overexpression of the rhoC gene correlates with progression of ductal adenocarcinoma of the pancreas. Br. J. Cancer. 77, 147-152.
  13. K.L. van Golen et al. 2002. Reversion of RhoC GTPase-induced inflammatory breast cancer phenotype by treatment with a farnesyl transferase inhibitor. Mol. Cancer Ther. 1, 575-583.
  14. C.L. Hall et al. 2008. Type I collagen receptor (a2b1) signaling promotes prostate cancer invasion through RhoC GTPase. Neoplasia. 10, 797-803.
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  16. M. Islam et al. 2014. Down regulation of RhoC by microRNA-138 results in de-activation of FAK, Src and Erk1/2 signaling pathway in head and neck squamous cell carcinoma. Oral Oncol. 50, 448-456.
  17. J.H. Tabibian et al. 2014. Cholangiocyte senescence by way of N-Ras activation is a characteristic of primary sclerosing cholangitis. Hepatology. 59, 2263-2275.
  18. Y. Fukushima et al. 2011. Sema3E-PlexinD1 signaling selectively suppresses disoriented angiogenesis in ischemic retinopathy in mice. J. Clin. Invest. 121, 1974-1985.
  19. S. Kusuhara et al. 2012. Arhgef15 promotes retinal angiogenesis by mediating VEGF-induced Cdc42 activation and potentiating RhoJ inactivation in endothelial cells. PLoS ONE. 9:e45858.

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