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Ras 癌の治療: 5つの有望なターゲット CYTOSKELETON NEWS 2015年5月号

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CYTOSKELETON NEWS 2015年5月号 Ras 癌の治療: 5つの有望なターゲット

Ras 癌の治療: 5つの有望なターゲット

Ras GTPアーゼは、癌の形態ならびに正常な細胞増殖や分化に関わる複数のシグナル伝達経路において重要な役割を果たしています1,2。Ras の3種類のアイソフォームである H-Ras、N-Ras、K-Ras は、ヒト腫瘍において発癌作用を示す遺伝子として、30年以上前に同定されました1,2。Ras シグナル伝達の異常は、ヒト癌の 30% 以上(一般的には肺癌、大腸癌、膵臓癌)で同定されています1,3。特に K-Ras は、癌研究において最も重要な Ras タンパク質であると考えられており、21% 以上のヒト癌に関与しています4。広範な研究がなされているにも関わらず、効果的な Ras 阻害剤が同定されていないことから、K-Ras をターゲットとした新薬の開発は非常に困難であると考えられています。これまではほとんど成功例がありませんが、近年の研究の進歩により、Ras タンパク質を直接阻害する治療薬だけではなく、GEF、GAP、下流のタンパク質、翻訳後修飾などを標的とする間接的な阻害剤の開発が期待されています(図1)。本稿では、Ras 癌治療における有望な5つのターゲットに注目します。

1. 変異型 K-Ras を直接ターゲットにする

K-Ras の変異型と野生型の選択は、変異がエフェクター結合部位から離れているため、困難であることが示されています1。近年発見された K-Ras 変異体(G12C: 12番目のグリシンがシステインに変異)のアロステリック switch II ポケット(S-IIP)は、K-Ras を阻害するための新しいターゲットとなる可能性があります5。この報告から間もなく、システイン変異に結合してSOSを介したヌクレオチド交換を阻害することにより、K-Ras 変異体を阻害する低分子化合物が開発され、低分子化合物を介して K-Ras を直接ターゲットにする治療が期待されています5。SOS および Ras の阻害に関しては、CYTOSKELETON NEWS 2014年7月号「Sos/K-Ras 結合を介して Ras シグナル伝達を制御する新しい低分子阻害剤」に詳しくまとめています。

2. GEF および GAP をターゲットにする

哺乳類の発現する3種類の GEF である SOS、RasGRF、RasGRP は、一般的に Ras の活性化因子であると考えられています6。GEF は Ras の活性化を仲介するにも関わらず、癌において GEF の変異が見つかることは非常にまれです。一方、GAP(NF1、p120GAP/RASA1、SynGAP/RASA5、GAP1 ファミリー、DAB2IP、GAPVD1など)は、Ras が関連する癌の数種類に関与します6,7,8 (図1)。腫瘍形成における GEF/GAP の役割については、Anne Hennig 博士らによる総説に詳しくまとめられています6

図1 Ras 活性化に関与する GAP および GEF を示した Ras GTPase サイクルの概略図

図1 Ras 活性化に関与する GAP および GEF を示した Ras GTPase サイクルの概略図

3. 下流のタンパク質をターゲットにする

MAP キナーゼ(MAPK)キナーゼ(MEK)は、Ras 活性化の下流で起こる MAPK 経路のタンパク質です。FDA 承認薬トラメチニブ(Mekinist™)のターゲットであり、患者数人に対して臨床上有効であることが示されています9。しかし、重篤な副作用を起こさずに、有効血中薬物濃度を維持することは困難です9。Ras 活性化の下流にあるもう一つの経路は Merlin/Hippo プロテインキナーゼ経路で、増殖を促進する転写コアクチベーターである YAP の活性を調節します。この経路が活性化されると、細胞増殖を制限してアポトーシスを促進し、Ras 依存性の癌に重要な役割を果たします10-12。Merlin は Hippo 経路を調節し、Merlin の減少は Hippo 経路の不活性化につながります10。Merlin は膜および核に局在することが報告されていますが、腫瘍抑制部位については未解明なままです。しかし、近年の報告により、Merlin は細胞膜で Hippo 経路を介した腫瘍形成を抑制するのではなく、核内で E3 ユビキチンリガーゼ複合体 CRL4DCAF1 と Hippo 経路の構成因子であるセリン/スレオニンキナーゼ LATS1/2 との相互作用を阻害することによって作用することが示唆されます13。核に局在する Merlin は CRL4DCAF1 と相互作用して、LATS キナーゼによる CRL4DCAF1 のユビキチン化を阻害します。その後、 CRL4DCAF1 は、YAP をリン酸化することで不活性化し、細胞質への蓄積を引き起こします10。しかし、YAP が活性化される(非リン酸化)と、Merlin は転写因子 TEAD と共に変異型および野生型 Ras タンパク質の発現を増加させます10,13。YAP1と Hippo 経路については、CYTOSKELETON NEWS 2015年4月号に詳しくまとめています。

4. 翻訳後修飾をターゲットにする

Ras タンパク質は、RCE1によるタンパク質切断、ファルネシル化、ICMT によるカルボキシメチル化、パルミトイル化など、数種類の翻訳後修飾を受けます14。近年、さらにモノユビキチン化やアセチル化などの翻訳後修飾が、Ras 活性化の調節に重要な役割を果たすことが示されています。K-Ras の Lys147 がモノユビキチン化されると、GTP との結合を促進します15。K-Ras の Lys104 がアセチル化されると、GEF によるヌクレオチド交換活性が低下することから、 SIRT2 および HDAC6 脱アセチル化酵素は、Ras を阻害するためのターゲットとなることが示唆されます16

5. ナノ医療と siRNA によるノックダウン

近年、膵臓癌の治療として、変異型 K-Ras をターゲットに siRNA および ヒ素を内包したベシクルを同時にデリバリーすると、アポトーシスを誘発し、変異型 K-Ras の増殖・転移能を下方制御することが報告されました17。 また、K-Ras と RAF および PI3K との結合を阻害することをターゲットとした siRNA 治療は、異種移植モデルにおいて K-Ras 変異大腸癌に有効であることが示されています18

まとめ

さらに Ras 調節メカニズムを研究するために、高感度かつ定量的に Ras の活性化レベルを測定する方法が重要になります。Cytoskeleton社では、低分子量Gタンパク質の活性化レベルの測定に広く使用できる pull-down アッセイG-LISA 活性アッセイなど、癌治療の研究に有用なツールを多数ご提供しております。Ras 活性化経路を解明するために、低分子量Gタンパク質抗体、活性化因子、阻害物質などをご利用いただけます。

参考文献
  1. Wang W. et al. 2012. Ras inhibition via direct Ras binding—is there a path forward. Bioorg. Med. Chem. Lett. 22, 5766-5776.
  2. Castellano E. and Santos E. 2011.  Functional specificity of Ras isoform: so similar but so different. Genes Cancer. 2, 216-231.
  3. Burns M.C. et al. 2014. Approach for targeting Ras with small molecules that activate SOS-mediated nucleotide exchange. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 111, 3401-3406.
  4. Baines A. et al. 2011. Inhibition of Ras for cancer treatment: the search continues.  Future Med. Chem. 3, 1787-1808.
  5. Ostrem J. et al. 2013. K-Ras (G12C) inhibitors allosterically control GTP affinity and effector interactions. Nature. 503, 548-551.
  6. Hennig A. et al. 2015. Ras activation revisited: role of GEF and GAP systems.  Biol. Chem. doi: 10.1515/hsz-2014-0257.
  7. Nissan M.H. et al. 2014. Loss of NF1 in Cutaneous Melenama Is Associated with RAS Activation and MEK Dependence. Cancer Res. 74, 2340
  8. Stephen A.G. et al. 2014. Dragging Ras Back in the Ring. Cancer Cell. 25, 272-281.
  9. Online: http://www.cancer.gov/cancertopics/research-updates/2013/MEK.外部リンク
  10. Online: http://www.cancer.gov/researchandfunding/priorities/ras/advance-research/events/ras-fagin-video.Hong X. et al. 2014.
  11. Opposing activities of the Ras and Hippo pathways converge on regulation of YAP protein turnover. EMBO J. 33, 2447-2457.
  12. Kapoor A. et al. 2014. Yap1 activation enables bypass of oncogenic Kras addiction in pancreatic cancer. Cell. 158, 185-197.
  13. Li W. et al. 2014. Merlin/NF2 loss-driven tumorigenesis linked to CRL4(DCAF1)-mediated inhibition of the hippo pathway kinases Lats1 and 2 in the nucleus. Cancer Cell. 26, 48-60.
  14. Gysin S. et al. 2011. Therapeutic strategies for targeting ras proteins. Genes Cancer. 2, 359-372.
  15. Sasaki A.T. et al. 2011. Ubiquitination of K-Ras enhances activation and facilitates binding to select downstream effectors. Sci. Signal. 4, ra13.
  16. Yang M.H. 2013. HDAC6 and SIRT2 Regulate the acetylation state and oncogenic activity of mutant K-RAS. Mol. Cancer Res. 11, 1072-1077.
  17. Zeng L. et al. 2014. Combination of siRNA-directed Kras oncogene silencing and arsenic-induced apoptosis using a nanomedicine strategy for the effective treatment of pancreatic cancer. Nanomedicine. 10, 463-472.
  18. Yuan T.L. et al. 2014. Development of siRNA Payloads to Target KRAS-Mutant Cancer. Cancer Discovery. 4, 1182.

アセチルリジン マウスモノクローナル抗体

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Anti Acetyl Lysine (Trial size),  (Mouse) , 3C6.08.20詳細データ CYT AAC01-S 25 UL
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[2 x 100 μl]
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ホスホチロシン(リン酸化チロシン) マウスモノクローナル抗体

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Anti Phosphotyrosine (Trial Size),  (Mouse) , 27B10.4詳細データ CYT APY03-S 1*25 UL
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SUMO-2/3 マウスモノクローナル抗体(クローン 12F3)

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[1 x 25 μl]
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ユビキチン マウスモノクローナル抗体

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Ras G-LISA® 活性型低分子量Gタンパク質定量キット

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Ras G-LISA(R) Activation Assay Kit詳細データ CYT BK131 1 KIT
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Ras プルダウンアッセイ Biochem Kit™

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SOS exchange ドメイン (564-1049) タンパク質

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SOS1 Ras GEF protein, Human詳細データ CYT CS-GE02 100 UG
[1 x 100 μg]
販売終了
SOS1 Ras GEF protein, Human詳細データ CYT CS-SOS1-B 1 MG
[1 x 1 mg]
販売終了

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